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SMAPは“才能のプラットフォーム”だった 『SMAP 25 YEARS』首位でチャート締めくくる

2016年12月31日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

SMAP

【参考:2016年12月19日~2016年12月25日週間 CDアルバムランキング(2017年01月02日付・ORICON STYLE)】(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2017-01-02/)


 「2017年1月02日付」と銘打ってありますが、これが2016年の最終週チャートです。1位はSMAP『SMAP 25 YEARS』。初週の売り上げは667,802枚。


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 SMAPの解散について、ここで今さら語る言葉はありません。今回はアルバム『SMAP 25 YEARS』収録曲、ファン投票で選ばれた50曲にのみ注目していきたいと思います。


 やはり凄まじいのは作家陣の豪華さ。一流アイドルは一流クリエイターのプラットホームであるという常套句を思い知りますが、SMAPが面白いのは、ただ安定した一流大御所に仕事を任せたのではなく、時代ごとのアンテナから時代ごとの王道とオルタナをバランスよく選び取っていたこと。ときに遊び心たっぷりの人選があり、「いいの?」と心配してしまうような冒険的チョイスもありました。あの宮藤官九郎が「BANG! BANG! バカンス!」(2005年/37thシングル)の作詞を担当していることや、ヒャダインこと前山田健一が「手を繋ごう」(2012年/48thシングル)の作詞作曲を手がけていること、もしかすると、あまり広く知られていないのでは?


 あるいはSMAPの場合、新曲をリリースするたびに「今回の曲は、今をときめく◯◯氏が手がけました!」とニュースになることが少なすぎたのかもしれません。SMAPが歌うというだけで、その曲はある種の公共物となり、国民に広く知られるものとなる。たとえばの話ですが、「世界に一つだけの花」がSMAPの曲なのか、厳密にいえば槇原敬之の曲なのか。互いのファンの間で論争があっても不思議はないわけですが、SMAPの場合はそれが起こらなかった。作家の個性と歌い手のパワーが見事に相殺しあうことで、バランスのよい「公共物」になりえた、ということでしょう。


 『SMAP 25 YEARS』に撮り下ろしの写真集などはありません。過去の全ディスコグラフィと時代ごとのアーティスト写真が収められた大判の紙が一枚。そして全50曲の歌詞が掲載されたシンプルな冊子がひとつ。だけども、このクレジット集がじつに面白い。ぱらぱらとめくっているだけで、椎名林檎(「華麗なる逆襲」)、中田ヤスタカ(「Amazing Discovery」)、赤い公園の津野米咲(「joy!!」)、さらにJeff Miyahara(「Battery」)や☆Taku Takahashi(「ビートフルデイ」)などの名前が。かと思えば筒美京平(「BEST FRIEND」)などのビッグネームが見つかり、野島伸司(「らいおんハート」)や鈴木おさむ(「FIVE RESPECT」)など音楽畑以外のクリエイターも名を連ねている。個性もスタンスもまるで異なる、あらゆる世代の才能たちが、まさにプラットホームとしてSMAPに集まっていたのです。こういう場所がひとつ消えてしまうことを、今はただ残念に思います。


 なお、今回のファン投票で一位に選ばれたのは、2006年のアルバム収録曲である「STAY」。熱心なファンにとって特別な一曲と呼ばれていましたが、一般的には認知度の低い曲でしょう。私自身も今回初めて聴いたのですが、これがほんとうに泣かせる曲で。歌い出しは以下です。


〈この先どうしようもなくすれ違ったり/言い争いがあったりしても/どうか道の途中で/手を離そうとしないでよ/ちゃんと繋いでてよ〉
 
 活動継続を求めるファンの声は届かなかったのか。結果論でいえば、届きませんでした。そもそも今回のSMAP騒動には、「アーティストとは、ファンの応援によって支えられているものだ」という前提がまったく無視されているような不気味さ、不安感、不快感が強かったのですが、この曲がちゃんと一位になったことは、せめてもの救いであるような気がします。(石井恵梨子)