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「軽油引取税」の免除制度悪用で初の書類送検…どんな仕組みなのか?

2016年12月31日 10:42  弁護士ドットコム

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軽油引取税が免除される制度を悪用して、虚偽の免税手続きーー。あまり耳にしたことのない容疑で、東京の石油販売会社「イソベ石油」と従業員が地方税法違反の疑いで書類送検されたことが11月末に報じられた。


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報道によると、イソベ石油の容疑は、2014年2月から2015年1月までの間に、県内の土木建設会社などに販売した軽油の免税適用分を、約420万リットル分(約1350万円)水増しして千葉県の税事務所に虚偽の報告書を提出した疑い。


軽油引取税に関する同容疑での立件は全国初とみられている。非常に珍しいケースのようだが、軽油引取税の免除制度とはどのような制度なのか。イソベ石油の行為はどういった点が問題視されたのか。小林拓未税理士に聞いた。


●どんな制度なのか?

「軽油は、いわゆるディーゼルエンジンに使用される燃料ですが、軽油引取税は、軽油の購入に対して課税される地方税です。


軽油引取税は、消費者等が、軽油購入の際の価格に上乗せされており、元売業者等が、軽油引取税を預り、翌月末日までに納税するという仕組みになっています。税率は、1キロリットル当たり3万2100円と定められており、1リットル当たりだと32円10銭となります」


免税を受けられるのはどのような場合なのか。


「軽油が、自動車以外に使われる場合には、免税措置が設けられています。例えば、船舶や機械に使用される場合は、軽油引取税が免税とされており、税が課されない価格で軽油を購入することができます。


免税で軽油を購入するためには、免税軽油使用者証の取得が必要となります。これを取得できる業種や機械、用途は限定されており、免税軽油を使用する機械等は、使用者証に記載されます。


この免税軽油使用者証を添付して、都税事務所、県税事務所等から免税証を交付してもらい、その免税証を軽油販売業者に提出して、免税軽油を購入します」


●どんな不正が疑われているのか?

免税を受けるためには、さまざまな手続きが必要なわけだ。今回行われたと疑われているのは、どのような不正なのか。


「軽油引取税の不正は、軽油に、軽油引取税のかからない灯油を混ぜて使用する方法が一般的です。ですが、軽油引取税が免除される軽油の使用量を偽り、不正な報告を行ったのは、全国で初のケースでした。


報道によると、不正を行った軽油販売業者は、土木工事会社に対し、使用目的を偽り、免税対象の軽油量を水増ししたとのことです。実際はトラックなどに使用した軽油を、土木工事の機械等に使う軽油と偽り、免税軽油を使用させていたといった手口が考えられます。


本来なら、免税軽油を用途外使用した場合や道路走行を行った場合には、軽油引取税の申告・納付をする必要があります」




【取材協力税理士】


小林 拓未(こばやし・たくみ)税理士


東京都中央区にて平成19年から開業。「専門家として、長期的な視点で顧問先の発展に尽力する」ことを経営理念に掲げる。平成29年1月から税理士法人石川小林として新たなスタートを切る。


事務所名   : 小林税理士事務所


事務所URL:http://www.ktaxac.com


(弁護士ドットコムニュース)