若者の「恋愛離れ」や「新聞離れ」が騒がれるようになって久しい。ほかにも「車離れ」や「外食離れ」といったものから、「犯罪離れ」「交通事故離れ」まで、何かと「〇〇離れ」がメディアを賑わせている。
キャリコネニュースでも2016年は、若者の「酒離れ」や「外出離れ」、「フルーツ離れ」などを取り上げてきた。そんな若者の「○○離れ」の背景には、ライフスタイルの変化を引き起こす、深刻な「金の若者離れ」があるようだ。
働いていない若者が増加し、「引きこもり」が進む
日本自動車工業会が4月に発表した調査では、車を持っていない20代以下の社会人のうち約6割が車を購入する予定がないと回答。10月には、車を買わなくなった若者に対して、「若いころは目立つ派手な車に彼女を乗せて走りたいんじゃないの?」と疑問を投げかける日経新聞のコラムが「老害」呼ばわりされるということがあった。
若者が離れていっているのは車だけではない。同月、20代の約45%がお酒をほとんど飲まないという調査結果が発表された。男女ともに「モテない」人ほどお酒を飲まない傾向がある、ということも明らかになっている。若者の「酒離れ」と「恋愛離れ」が併せて進行しているようだ。
また国交省が今月発表した調査結果では、20代が外出をしなくなり、休日の外出回数が70代を下回るというデータも。外出回数の少ない非就業者が増加したことが一因らしいのだが、働きもせず外出もしない「ひきこもり」が増えたのかと話題になった。
ほかにも「カラオケ離れ」や「旅行離れ」など若者の「○○離れ」は枚挙にいとまがない。過去には、ネットで「メンズブラ離れ」という謎の現象が囁かれたことがあった。そもそもメンズブラを付けている人自体がかなりの少数派なのでは……(メンズブラユーザーの方、ごめんなさい……)。
車で出かけることもなく、酒も飲まず、恋愛もせず、休日も家に閉じこもっているという若者たち。なぜこうしたことが起こっているのだろうか。いずれの「〇〇離れ」に対しても、「お金がないからではないか」と指摘する声が相次いでいる。
車を「買わなくなっている」のではなく、「買えなくなっている」のだし、値段が張るくせに一週間もすれば食べられなくなる果物にかけるお金などないということだ。
若者が飲酒から遠ざかっていることについても、生活には不必要なお酒にお金を掛ける余裕がないのではないかという指摘があった。
いまでは3人に1人が非正規労働者 20代の収入も90年代から大幅ダウン
My News Japanの編集長でジャーナリストの渡邉正裕氏も、若者の「外出離れ」について、「外に出れば必ずカネが出ていくから。家でTVかネットみてるのが一番経済的。国が20代の非正規化を進めた結果、貧乏になって外出できなくなっただけでしょ」とツイートしていた。
実際、若年層の収入は、約20年前と比べると確実に減少している。国税庁の調査では、1996年には305万円だった20代前半男性の平均年収は、2015年には271万円に低下。20代後半男性の平均年収も410万円から383万円まで低下している。
こうした収入減少の背景にあるのが、非正規雇用労働者の増加だ。全労働者に占める非正規の割合は年々大きくなり、2016年には37.5%が非正規労働者という結果に。3人に1人以上が、非正規雇用で働いていることになる。
もちろん、年収の減少傾向を直ちに「車離れ」や「酒離れ」、「外出離れ」に結び付けられるわけではない。しかし車や飲酒、フルーツなどがなくても困らない「嗜好品」と考える若者も少なくない。年収の低下が出費の抑制を招き、結果として「○○離れ」が起きている可能性は高い。
車を持たないのも、お酒を飲まないのも、出かけないのも個人のライフスタイルの問題であり、外野がとやかく言うことではない。しかしその背景に「金の若者離れ」があるのならば、社会全体で向き合うべき課題となるのではないだろうか。