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ファッション界を「ストリート」が席巻、カルチャーを背景にファンを掴むブランド増

2016年12月30日 12:22  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com

新世代ブランド「コムジュスイ(comme je suis)」
1990年代はスケーターからヒップホップ、裏原宿系まで、ストリートから生まれたスタイルが若者に浸透した。それから20年以上が経った今また、「ストリート」のキーワードがファッション界を席巻。様々なカルチャーを背景に、従来とは異なるアプローチでファンを掴むストリートブランドが増えている。

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 ビッグシルエットをはじめ、ヒップホップ系のロゴアイテム、ゴシック調のプリントなど、アラサーやアラフォーなら思わず「懐かしい」と感じてしまうだろう。90年代のリバイバルブームのみならず、ファッションにリアリティが求められていることから、どちらかというと軽視されていたストリートの要素を多くのモード系ブランドも取り入れるようになり、また人種や体型など多様性のあるモデルの起用が珍しくなくなった。高品質のスウェットが人気を集めるなど「手に入れやすい身近なラグジュアリー」の需要も高まっている。
 ストリートから発祥したカルチャーは、昔も今もファッションに影響を与え続けている。裏原宿ブランドの代表格だった「アンダーカバー(UNDERCOVER)」は1990年頃の立ち上げ当初、プリントTシャツを手刷りして売り、後にプレミアがつくほど絶大な人気を集めた。これに追随するストリートブランドが急増し、また表参道で週末に開かれていたホコ天では、インディーズデザイナー達が作品をこぞって販売。個性的なスタイルを好む若者達が集うなど、1990年代はまさにストリートから新しいブランドやスタイルが次々に生まれた時代だった。それから20年以上が経った今、かつての勢いは失っているものの、代わりに新しいアプローチで注目を浴びるストリートブランドが増えている。
 今年「コムジュスイ(comme je suis)」を本格的に始動したデザイナーRIKU IKEYA(池谷陸)は、2000年生まれの16歳。クリエーティブな世界に興味を持ったことから服作りを始め、グラフィックやビジュアル、映像まで独学で手掛けている。文化服装学院の在学中に1型のスウェットからスタートしたのはデザイナーのTAMASHABU(玉田翔太)による「ティー(TTT_MSW)」。ジェンダーレス、ボーダーレス、ジャンルレスの3つをコンセプトに活動を広げている。「ジョンズバイジョニー(JOHN'S BY JOHNNY)」を手掛ける平本ジョニーは、ラップユニット「LITTLE TOKYO」のフロントマンを務めるなど音楽とファッションの二足のわらじでストリートの今を表現。音楽ユニットから派生した「クリエイティブドラッグストア(Creative Drug Store)」や、クリエーターが集うコミュニティースペースから誕生した「サノバチーズ(SON OF THE CHEESE)」など、いずれも従来のブランド運営とは異なるスタイルで、ファッションをコミュニケーションの一つと捉えているのが特徴だ。
 若手デザイナーが多く出展する合同展示会「PR01. TRADE SHOW」でディレクターを務める尾崎功樹は、近年のストリートブランドの特徴として「売れ筋のものを作るブランドより、音楽やサブカルチャーを感じさせるブランドが目立っている」と話す。その理由として「デザインだけではなく他のアプローチ方法を持っている」というデザイナーが多く、ジャンルレスな活動を通じてクリエーター同士がつながり、コミュニティーやカルチャーが形成されることでファンを増やしているという。その背景の一つはSNSの普及で、ダイレクトにつながるようになったことが大きい。かつての裏原宿のように集う場所はなくなったが、今はネット上がその代わりになっているとも言える。アンダーグラウンドからメインストリームに躍り出た「ストリート」の潮流は、しばらく続きそうだ。