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アルカラが“熱狂のツアー”で示したオーディエンスとの関係「お客さんはそのバンドの鏡」

2016年12月29日 19:01  リアルサウンド

リアルサウンド

写真=西槇太一

 アルカラが12月19日、東京・渋谷CLUB QUATTROにて、ライブツアー『こ・れ・で・も・か!!TOUR 2016 -東名阪-』のファイナル公演を開催した。ツアーの最終日、そして2016年最後のワンマンライブとして思い残すことがないほど、存分にアルカラの音楽のエネルギーを感じたステージだった。


 今年リリースしたシングル曲「炒飯MUSIC」で幕を開けたライブは、序盤から早々に盛り上がりを見せる。メンバーとともに登場した“くだけねこ”が踊るステージで、さらに同曲のMVに出演した“ねえちゃん役”の伊藤リリーがゲストとして登場。演者が揃ったステージの光景を前に、次々と観客の手が上がり、最高潮のスタートを切った。


 その後の「アブノーマルが足りない」「半径30cmの中を知らない」「+.-」というセットリストの流れに、観客の熱狂はヒートアップしていく。ステージでは下上貴弘(Ba.)が豪快なベースプレイを披露し、オーディエンスは歌詞を口ずさんだり、手を上げて体を揺らしたりと、会場にいるすべての人がアルカラの作る陽気な雰囲気にどっぷりと浸かっていた。


 そして稲村太佑(Vo.&Gt.)が、伊藤リリーへの即興ソングを「みんなの顔が 俺より 伊藤リリーの方ばっかり 見てた 女優に 負けた バンドマンの 歌」と口ずさみ、笑いも取る。稲村がギターをバイオリンに持ち替え、「夕暮れちゃちゃちゃ」「はとのさんぽ」を披露し、それまでの会場の熱狂は、バイオリンならではの音色によって、より愉快な雰囲気に変わっていった。


 次の曲、また次の曲へと始まるたびに歓声が沸き起こるアルカラのライブ。田原和憲(Gt.)がギターをかき鳴らし、さらなる歓声が沸き起こって始まったのは「キャッチーを科学する」。ステージ上で息のあったパフォーマンスと、オーディエンスと稲村との歌の掛け合いでさらなる盛り上がりを見せた。


 ライブの前半を終え、MCで稲村は「ロックの奇行師アルカラですよろしく。すごい良いツアーになりましたよ」と名古屋や大阪など各地を回った際のエピソードを披露し、コミカルなトークでオーディエンスの笑いを誘った。「チクショー」、ダンスナンバーの「夢見る少女でいたい。」を披露したあと疋田武史(Dr.)のドラムソロパフォーマンスが繰り広げられ、会場の興奮は高まるばかり。稲村が「暇ってポジティブに考えたらとても心の余裕があるってことでしょ。その心の余裕を情景に歌ってきた人たちがいた。いとおかし」と楽曲にまつわるエピソードを語り、そのまま「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」で本編を終えた。


 アンコールを受けて登場した稲村は、「ほんまこのツアー、人の優しさとか温かみに触れるいいツアーになりまして、こっちが全部投げかけてやろうって思ってたら、もらえるもんばっかやって、いい14年目になりました。素敵な仲間に囲まれて、めっちゃいいツアーになりました」と本公演までの思い出を振り返った。


 また稲村が「お客さんはそのバンドの鏡やって。僕の鏡がこれなら、顔はまあまあやけど(笑)、みんなの心がすごく綺麗でとても温かくてどこにいっても恥ずかしくない」と会場に集まったファンに対して思いを届ける場面も。来年の15周年イヤーにはさらに積極的に活動していくことをアナウンスしたあと、田原加入後一番最初にライブで披露したという「自然」を披露。普段あまり演奏されない懐かしの楽曲を聴いた観客に来年への期待を膨らませる形で、同ツアーの幕を閉じた。



 今回のライブでは、稲村のユーモア溢れる人柄が、ライブを盛り上げるエンターテイナーとしての役割をとても果たしていた。アルカラの楽曲には、 面白楽しいイメージを共有できる魅力があり、印象的だったのは、バンドとオーディエンスの間で、とても息の合った呼吸が生まれていたことだ。来年アルカラは結成15周年を迎える。またアルカラと温かいオーディエンスが作る会場にぜひ足を運びたい。(文=大和田茉椰)