2016年12月29日 11:32 弁護士ドットコム
政府が12月22日に閣議決定した2017年度税制改正大綱の目玉は、配偶者控除の年収要件の引き上げだけではない。その1つ、少額投資非課税制度(NISA)の新制度の創設も決まった。これは、20年もの期間、年間の投資上限を40万円として、非課税となる制度だ。新制度のポイントはどこにあるのか。
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森山貴弘税理士によれば、現行の「NISA」と、新設される「積立型NISA」の主な違いは次のとおりだ。
■(1)年間の投資上限額
【NISA】120万円
【積立型NISA】40万円
■(2)非課税期間
【NISA】投資した年から最長5年間
【積立型NISA】投資した年から20年間
■(3)投資期間
【NISA】2023年まで
【積立型NISA】2037年まで
■(4)非課税の対象商品
【NISA】上場株式・投資信託等
【積立型NISA】長期投資に適した商品に限定
■(5)非課税金額合計
【NISA】600万円
【積立型NISA】800万円
■(6)制度の併用
いずれかを選択(併用不可)
●積立型NISAのポイント
現行のNISAがあるのに、なぜ新たに積立型が創設されたのか。森山税理士は、「現行NISAは積立型投資に利用しにくいというデメリットがあります」と説明する。
「その改善を踏まえ、この度の積立型NISAが創設されました。したがって積立型NISAには、家計の安定的な資産形成を支援し少額からの積立・分散投資を促進するという趣旨があります。
積立型NISAの創設で複数のNISAが並立する状態となりましたが、制度の簡素化等の観点から将来的に少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化が検討されております」(森山税理士)
新しい積立型と現行の制度とは、併用ができない。積立型は、どのような人に向いているのだろうか。
「積立型NISAは、現行NISAに比べ投資金額が3分の1、投資期間が4倍の制度です。したがって長期的に運用して資産形成されたい方、手元にまとまった資金のない方、投資に対して馴染みの薄い方等に適している制度です」
その根拠として、森山税理士は「平成27事務年度金融レポート」(金融庁:平成28年9月)を紹介する。
「このレポートでは、投資によるリターンを安定させるためには、長期間にわたり継続的に株式や投資信託等を保有することが有効であると指摘されております。
また、投資資金を一度に投入する手法は、いわゆる高値掴みになりかねない不確実性を有しているが、積立投資は資金投入の時期を分散させるため、そのような不確実性を軽減する効果があるとされております。
積立型NISAは、まさにこの『長期間』にわたって『少額積立投資』を実現する制度であり、家計の貯蓄から資産形成へという流れに則した安定的な資産形成を実現する観点から望ましいものであると言えます」
【取材協力税理士】
森山 貴弘(もりやま たかひろ)税理士
個人事業主から上場企業までの税務顧問、事業承継支援、相続税申告、税務調査立会等の税実務経験に基づいて、金融機関やFMラジオ等において税に関するセミナー等を多数実施し幅広く活動している。
事務所名 : 森山税務会計事務所
事務所URL: http://mtax-ac.com/
(弁護士ドットコムニュース)