ロガーデータを見ながら話し込む坪井、山下と宮田莉朋、小高一斗、ふたりのコーチ役の片岡龍也 12月26~27日、鈴鹿サーキットで全日本F3選手権の合同テストが行われたが、この2日間のテストでFIA-F4に参戦してきたドライバーたちが非凡な速さをみせてくれた。
■宮田、小高は走り出しからスムーズ
今回のF3テストには11台、17名のドライバーが参加したが、TEAM TOM'Sの2台はレギュラー参戦した山下健太、坪井翔とともに16年のFIA-F4王者の宮田莉朋、5位の小高一斗のふたりが参加した。宮田は初日は36号車を、小高はマカオから戻ったばかりの15号車をドライブ。27日の走行2回目では、途中マシンをスイッチした。
宮田は初日、「F3はダウンフォースも大きく、FIA-F4と比べても安定感がすごかった。ただ、それでどこまでいけるのかが掴めていなかった」ころに、逆バンクでクラッシュしてしまう。ただ、ダメージはそこまで大きくなく、そのセッション中にふたたびコースインすることができた。
小高も宮田も、コースサイドで見ていると非常にスムーズでとてもF3に初めて乗ったとは思えないほど。現代の若手ドライバーたちの順応力に改めて驚かされた。FIA-F4でずっとコーチングをしてきた片岡龍也も、スタンドからふたりの走りを観察していたが、「普通に走れていますね」と目を細めていた。
初日の走行後、ふたりに話を聞くと宮田は「僕は鈴鹿自体がまだ走るのが6回目くらいなので、F3と鈴鹿の両方を学ばなければいけなかったんです」というからさらに驚きだ。「セクター3~4ではそこまでタイム差がなかったですが、セクター1をもっと学ばないといけないです。オフにスポーツ走行で練習したいですね」という。
一方の小高は、「今まで自分が乗ったなかで、F3はダウンフォースが異次元で、安定感もすごかったです。もっと走りたかったです(笑)」という。ただ、小高自身も認識していたが、F3からはよりダウンフォースを使った走りが求められる。「先輩たちに負けていたし、ブレーキももっと強く踏まなければいけない」と課題もみつけていた様子だ。
ふたりの初日ドライでのタイムは、宮田が1分52秒461、小高が1分52秒463。ただ、この日トップタイムをマークした初代FIA-F4チャンピオンの坪井のベストとは1秒以上差があった。坪井はこのセッションで、1分51秒台を連発している。
後輩たちについて坪井に聞くと「速いですね。うかうかしているとシートがなくなっちゃいます(苦笑)」という。1年で多くの経験を積んできただけに、「そこから1秒、0.5秒を詰めようとすると難しい」という言葉には重みがあった。非凡な才能をみせてくれた宮田、小高だが、『その先』が高いハードルになるだろう。
■ポテンシャルを示した山田真之亮と澤田真治
一方、B-MAX RACING TEAMからはF3-N車両ながら、澤田真治、山田真之亮というふたりがF3をドライブした。今季GT300にデビューした山田は、昨年に続いてのテスト参加だが、「少々無理にお願いして」とテストに参加。初日は「5周だけ乗らせてほしい」という形で、アウト~インをのぞく5周だけの走行となった。
ただ、そのなかできっちりと1分57秒139というタイムをマーク。初日F3-Nの最速タイムとなったが、それも100周以上走っているようなユーズドタイヤでのタイムだったという。山田は2015年にFIA-F4で坪井、牧野任祐に唯一“土をつけた”ドライバー。来季に向けてはまだ白紙のようだが、ぜひF3でその走りを見たいドライバーと言える。
また、2012年のレッドブル・カートファイトワールドチャンピオンに輝いた澤田は、今回がF3初ドライブ。16年はFIA-F4に参戦していたが、「スピード域が違いすぎました」とF3初ドライブを堪能した様子だ。
「終盤は慣れることができましたが、攻め切れてはいないです。ただ、その分伸びしろはあると思います。もし出られるのなら、F3に出てみたいですね」と澤田。山田とともに、非常にスムーズにF3をドライブしていたのがこちらも印象的だった。
今回のテストには参加していないが、ホンダ系のドライバーたちはすでに事前にF3で鈴鹿を走っているとのことで、こちらも好タイムが出ていた様子。来季全日本F3に誰が参戦できるかはまだ分からないが、伸び盛りの若手たちの将来が大いに楽しみになるテストと言えた。