6名ものウイナーが生まれ、例年以上に見どころが多かった2016年の世界ラリー選手権(WRC)をAutosport誌のラリー編集者であるデイビッド・エバンス(@davidevansrally)が統括。今年のドライバーをランキング形式で紹介する。
今回は第10位~第6位までをご紹介。
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■第10位:エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタR5)
所属チーム:Mスポーツ(WRC2)
2016年出場回数:7戦
優勝回数:3勝(WRC2にて)
シリーズランキング:WRC2クラス3位
シーズン序盤に発生したフューエルプレッシャーセンサーのトラブルがなければ、エバンスの2016年シーズンは完璧なものとなり、並行して参戦していたイギリス国内選手権とともにWRC2でもチャンピオンに輝いていただろう。
しかし、エバンスはイギリス国内選手権では圧倒的な速さをみせつけたものの、オーストリア・ウィーンで行われた年間表彰式、FIAガーラへ出席することは叶わなかった。
2016年、エバンスはMスポーツから最上位クラスに参戦していた時には発揮できなかったファイティングスピリットと粘り強さを発揮し、自身のポテンシャルを存分にみせつけた。エバンスは第1戦モンテカルロと第2戦スウェーデンで優勝しているが、もっとも印象的だったのは第10戦ツール・ド・コルスでの優勝だ。
エバンスの成長はMスポーツを率いるマルコム・ウィルソンの目論見通りだったと言える。ウィルソンはエバンスをあえて厳しい環境に送り込んだ。
その結果、エバンスはより強く、速く、たくましいドライバーに成長したのだ。
■第9位:ヤリ-マティ・ラトバラ(フォルクスワーゲン・ポロR WRC)
所属チーム:フォルクスワーゲン
2016年出場回数:13戦
優勝回数:1勝
シリーズランキング:6位
11月に所属するフォルクスワーゲンがWRC撤退を発表したことで、ラトバラは悪夢のなかへ放り出されたような気分を味わっただろう。
しかし、仮にフォルクスワーゲンが参戦を継続していても、あの時点でチームとの契約を更新できていたかは疑わしい。ラトバラにとって、2016年シーズンは史上最悪の1年だったからだ。
ただし、成績不振の理由はラトバラだけにあるわけではない。第2戦スウェーデンと第12戦GBではドライブシャフトが壊れ、第5戦ポルトガルではパワーステアリングにトラブルが起きた。
第9戦ドイツではギヤボックスに問題を抱えた上、第4戦アルゼンチンではサスペンションの破損から、マシンが3回転以上する大クラッシュを演じた。(この1件については、サスペンションが“壊れた”のか、“壊した”のか、いまだ定かではない)。
それでもラトバラが、もっとも勝利に近く史上最高のマシンを手にしていた第6戦イタリアや第8戦フィンランドで、大きなミスを犯したことも事実だ。
これまでWRCに169戦出場していながら、ラトバラはいまだ自信と思い切りの良さを身につけていない。私には、この点がもっとも気がかりなのだ。
■第8位:エサペッカ・ラッピ(シュコダ・ファビアR5)
所属チーム:シュコダ(WRC2)
2016年出場回数:7戦
優勝回数:4勝
シリーズランキング:WRC2クラスチャンピオン
2016年にラッピがWRC2チャンピオンになるとは、誰も思いもしなかっただろう。第2戦スウェーデンではエルフィン・エバンスに遅れをとっていたし、第6戦イタリアでは大クラッシュを演じたため、シーズン序盤はタイトル争いとは程遠いポジションに甘んじていたのだから。
しかし、シーズン中盤からは流れを取り戻してみせた。第8戦フィンランドと第9戦ドイツ、第11戦GBで勝利を収め、最終戦オーストラリアではチームメイトのテーム・スニネンとのチャンピオン争いを制して、チャンピオンに輝いた。
2016年シーズンを戦い抜いたことで、ラッピは自信を手に入れ、安定した走りができるようになったはずだ。
■第7位:クレイグ・ブリーン(シトロエンDS3 WRC)
所属チーム:PHスポール/シトロエン
2016年出場回数:6戦
ベストリザルト:総合3位
シリーズランキング:10位
2年前、ブリーンがラリードライバーとしてのキャリアをスタートさせた時、正直に言えば彼の振る舞いには疑問を感じた。
ステアリングよりもマイクを握っている時間のほうが長かったし、コドライバーがペースノートを読み上げるのを聞くよりも、おしゃべりしているほうが多かったからだ。
しかし、彼は激戦のヨーロッパ・ラリー選手権(ERC)を決してポテンシャルが高いとは言えないプジョー208 T16で戦い抜き、大きな成長をみせてきた。
最初にPHスポールでDS3 WRCを操ると聞いたときは驚きを隠せなかったが、ブリーンは繊細なドライブを求められる第2戦スウェーデンや高速ラリーの第7戦ポーランドで光る走りを見せた上、第8戦フィンランドでは殊勲の3位表彰台を奪ってみせた。
しかも、これらの成績を人生初ドライブのWRカーで達成したのだ。
■第6位:ヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20 WRC)
所属チーム:ヒュンダイ
2016年出場回数:13戦
優勝回数:1勝
シリーズランキング:4位
彼自身も認めているように、パッドンはほかのドライバーのように類まれな才能に恵まれたドライバーではない。しかし、速さへの欲求は誰よりも強い人間だ。
パッドンのドライビングスタイルは、厳格な自己分析と数字が特徴となっている。2016年はその持ち味を存分に発揮して度々、前走車とのギャップを縮めてみせた。
その一方でミスも多かったと言わざるをえない。その最たるものはポルトガルで起こした大火災だろう。
パッドンがドライブするi20 WRCがコースアウトし、道路脇にスタックした際、高温のエキゾーストによって枯れ草に引火。マシンはわずか5分で炎に包まれた。
そんなパッドンにとって、2016年のハイライトは勝利を収めたアルゼンチンだろう。彼とコドライバーのジョン・カナードは、王者のセバスチャン・オジエ/ジュリアン・アングラシアを打ち負かしてみせたのだから。
2017年、パッドンはターマック(舗装路)でのパフォーマンスを向上させる必要があるが、そのためのプランを立てていることは間違いない。