シーズンオフには“FIA表彰式”を筆頭に、内外で年間ベスト賞(アワード)などが選ばれている。ここではスピンオフ企画(?)として、期待していた結果や状況に対してもの足りなかった――イマイチだった各部門賞をノミネート。題して、『今宮純のF1ゴールデンラズベリー賞2016』を発表しよう。
☆マシン:フェラーリSF16-H
フェラーリが獲得した398ポイントは、王者ニコ・ロズベルグの385ポイントよりわずかに13ポイント多いだけ。セバスチャン・ベッテルとキミ・ライコネンのふたり合わせて、ロズベルグひとり分だ。今年も14年と同じ未勝利、ランク3位はイマイチどころかイマサンだった。敗因はまずPUにある。
開幕前に許される32トークンのうち、7割の23トークンを使ったが、トラブルが相次ぎ第2戦バーレーンGPではベッテルがフォーメーションラップでストップし、スタートすらできず。ターボ系対策など信頼性の確立に追われた中盤以降は、シャシーのアップデートもおろそかに。決戦イタリアGPに残りトークンすべて使用、それでも3位がやっと、このPU開発顛末が最大敗因だろう。
パワー&トルク増強をめざした反面、ドライバビリティにしわよせが……。ふたりがハーフスピンする場面も目立った。コーナー出口でのホイールスピンも見てとれ、暴れ馬さながらのマシンを操るベッテルは苛立ち、ライコネンはそれなりに調教して終盤は予選で先行。
セットアップは難しく、タイヤ・マッチングのスイートスポットも狭まり、レッドブル勢に対抗できなくなっていった。調教役のジェームズ・アリソンの離脱も響き、名門内部にはお家騒動がくすぶり、「王者に挑む」と宣言したスクーデリアは裏切りのランク3位に終わった。
☆ドライバー:マーカス・エリクソン
見るからに好青年ぽい印象でTVカメラにはいつもニコニコ、でもコース上での印象は薄い。昨年イタリアGP9位入賞後28戦ノーポイント、今季フル参戦レギュラー最下位の0点。不振を極めるザウバーのマシンに苦しむのは分かるが、イギリスGP・FP3での不用意なクラッシュなど、コーナー出口でやってしまうケースが多い。それでも17年残留決定、彼には水面下での強いマネージメントパワーがある。
☆チーム:ルノー
メーカー・チーム復活の看板を掲げながらランク9位、わずか8ポイントはかつてのチャンピオンだけにどん底の結果だ。再建の年であっても新興ハース以下のこの結果を本社カルロス・ゴーン氏はどう見たか。ルノーPUそのものは進化、レッドブルが証明しただけにチーム組織内部の問題になる。17年に向けてスタッフ増員、バジェット増額、ニコ・ヒュルケンベルグ獲得。
ルノー・ワークスは再起への階段を“地下1階”あたりから上がっていかねばならない。
☆ストラテジー:ウイリアムズ
ピットストップ最速賞14回獲得、ヨーロッパGPでのフェリペ・マッサ【1、92秒】はレコードだ。メカニックたちは日ごろから訓練に励み、そのポジションやリアクションなどを研究、筋トレまでやっている(白幡メカ談)。
その努力を生かすも殺すも戦略にかかっているわけだが、ピット戦略やレース戦術がちぐはぐ……。タイヤ・チョイスやピットイン・タイミングも……。時としてなぜかマッサ優遇⇔バルテリ・ボッタス冷遇が気になった(マッサ贔屓のロブ・スメドレーの影響?)。古豪チーム5位転落の深層原因はストラテジーに潜む。
☆カラーリング:ハース
F1マシンはスピードが命。でも、カラーリング(見た目)も大事。個人的に全く新しいアメリカンチーム、ハースには斬新でユニークな色調とデザインを期待していた。灰色&黒色&赤色はかなり地味、70年代のアメリカン・ペンスキーのようなインパクトが感じられず残念。
メインスポンサーがいない初年度だからこそ、自己主張するハース・カラーを期待したのだが……。オーナーのジーン・ハース氏はあまり目立ちたがり屋ではないのかも。昔のベネトンのような極彩色で現れていたら……いきなり開幕2戦連続入賞は、もっと刺激的だっただろう。