ヨーロッパを中心にキャリアを積み、2016年シーズンはフォーミュラV8 3.5に参戦した金丸悠がオートスポーツweb編集部を訪れ、フル参戦初年度となった16年を振り返るとともに、17年以降のレース活動について展望を語った。
レーシングカートの最高峰クラス、KF1の世界選手権で日本人初優勝を飾るなど輝かしい実績を残してきた金丸。12年にフォーミュラ・レースへデビューすると、15年にフォーミュラV8 3.5にスポット参戦。そして16年は新チームであるテオ・マーティン・モータースポーツから同シリーズにフル参戦デビューを果たした。
新チームからのエントリー、そしてデビューイヤーながらランキング8位を獲得した金丸は「開幕前のテストでトップタイムを記録するなど、期待を高く持てる冬を過ごし、優勝争いも可能だと考えながら開幕を迎えました」と振り返る。
「ところがシーズン前半はチームや自分のミスもあり、速いペースで走ることができるのに安定した成績を残せないという状況が続きました」
また、「中盤以降は経験豊富なトップチームが良いセットアップを見つけペースを上げていくなか、僕たちは前半戦から開発が進まず、それが後半戦に大きな差となって現れてしまいましたね」と、新チームから参戦することの厳しさを明かした。
リザルトに関してはチームメイトのベイスク・フィッセールを圧倒し、厳しい環境のなかでも速さをみせた金丸だったが「チームメイトとの実力差が開きすぎていて、セットアップを共有することができず、それも成績が伸び悩んだ一因となってしまいました。速いドライバーがふたり揃っていないとトップには追いつけない」と、思うような結果を残せなかった要因を分析する。
「自分自身に関しては、ほかのドライバーと比べてミスが少なく安定していたと思います。レース中のクラッシュもなく、要所要所でオーバーテイクを決めることができた。17年も同じような走りを続け、チャンピオンを争うことが目標です」
■フォーミュラV8 3.5は見ごたえのあるシリーズ
17年に向け、チャンピオン争いのできるチームへの移籍を検討しているという金丸は12月初旬にヘレスで行われたテストに、16年のチームタイトルを獲得したアーデン・モータースポーツから参加した。
「第7戦のモンツァの時期にはすでにアーデンからアプローチが来ていて、今回のテストで乗ることになりました。コースインして、すぐにテオ・マーティンとのクルマ作りのコンセプトの違いに驚きましたね」と金丸。
「アーデンはフロントのグリップ力が高く、予選で戦えるクルマだと感じました。当然、成績も上向くはずで、自分にとっても新たなステップになる。17年はアーデンから参戦できたら最高ですし、楽しみですね」
フォーミュラV8 3.5の17年シーズンはFIA世界耐久選手権(WEC)との併催が決定しているほか、メキシコ、オースティン、バーレーンといった新たな開催地も追加される。日本での注目度も高まりそうな同シリーズの魅力について、金丸は「オーガナイザーのアルグエルスアリ氏が“ピュア・レーシング”をシリーズのコンセプトに掲げていて、良いサウンドのするV8・NAエンジンを使用することにこだわっています」と語った。
「ミシュランのタイヤもハイグリップで、なおかつ摩耗もそれほど大きくないために、つねにプッシュして戦う必要があり、体力的にもタフです。また、このサイズのフォーミュラのなかでは、レース中のオーバーテイクも多いので、見ごたえのあるシリーズだと思います」
■スーパーフォーミュラも毎戦チェック。金丸の描くキャリアパスとは
最後に目標としているF1へ向けてのプランについて語った金丸は「例えば、アーデンはF1チームへのパイプも持っていますし、17年から併催されるWECのチームともコネクションがあります。F1昇格のチャンスだけでなく、WECに参戦してみないか? という話もあったり、さまざまなオプションがあります」と明かした。
「スーパーフォーミュラへの参戦も将来的には“あり”だと思っています。毎戦チェックしていますが、クルマやタイヤも素晴らしいし、(ストフェル)バンドーンでも簡単には勝てないほどレベルも高いですよね」
「もっと獲得できるスーパーライセンスポイントが増えて、F1につながるカテゴリーになっていけば面白いと思います。個人的には日本のサーキットを走ったことがないので、そこも魅力です」
F1昇格を賭け、ヨーロッパで戦う金丸悠。参戦2年目となる17年シーズンの活躍に要注目だ。世界を転戦するフォーミュラV8 3.5は2017年4月15日、シルバーストーンで開幕戦を迎える。