2016年MotoGPチャンピオンのマルク・マルケスは、以前はすべてのレースに「最終戦のように」と考えて臨んでいたが、2016年は考え方をより保守的なアプローチに変えたという。
マルケスは、最高峰のMotoGPクラスに参戦した13年と14年の最初の2年間に、続けてタイトルを獲得したが、15年には苦しい戦いを強いられた。
2015年にマルケスは5勝をあげ、年間タイトルを獲得したホルヘ・ロレンソには2勝及ばなかったものの、年間2位のバレンティーノ・ロッシより1勝多かった。ただ、6度のリタイアが響き、マルケスはタイトル争いに絡むことができなかった。
2016年、マルケスはアプローチを変えることを決意し、毎レースをなにがなんでも勝つのではなく、「内心で葛藤はあるが」ポイントを積み重ねることの必要性を認めた。
それは結果となって表れ、2016年シーズンは3戦を残した時点で3度目のタイトル獲得を決めた。またMotoGP、Moto2、Moto3の3クラスそれぞれで、最初の15戦すべてでポイントをあげた唯一のライダーにもなった。
「僕はレースに対しては情熱をすべて注ぎ、持てる力を出し切るんだ」とマルケス。
「以前の僕には、週末のレースはどれもが最終戦だったんだ。そのレースを勝たなければいけないとだけ考え、チャンピオンシップのことは頭になかったんだ」
「でも今は、毎回のレースは、最後つまりチャンピオンシップに勝ち残るための、一部分だと考え始めるようになった」
2016年には、ロレンソとロッシが所属するヤマハのオールラウンド・パッケージが性能を発揮した。一方マルケスは、ホンダの強力なエンジンを共通ECUが制御しきれず、加速力に難を残すマシンへの対応を余儀なくされたのだ。
2016年のチャンピオンシップを獲った後、マルケスは初めて大きなプレッシャーを感じながら獲得したこのタイトルは、自分のキャリアでも一番大きな意味を持つと語った。
「プレッシャーが大きかった分、これは自分にとって何よりも特別なタイトルだ。なにしろ多くの人がずっと僕の働きを見ていたわけだから」
「それに、2016年のマシンは最悪ではなかったものの、いくつかのサーキットでは準備不足だったわけだからね」
「オフシーズン(のテスト)は本当につらかった。僕はやる気十分で臨んだが、マシンが性能を発揮しなかったんだ」
「他のマシンよりも圧倒的に劣っていたから、そのころ僕はこう言っていた。“これじゃ無理だ”とね。特にマレーシアGPの時がひどかった」
「とにかく走り切ることだけしか考えられなかった。他のライダーたちが自分を追い抜いて、上位でフィニッシュするのを見るのは耐え難かった」
「でも徐々に、チャンピオンシップを獲るためにはそれもありだ、ということがわかってきたんだ」
「自分の中ではわりと葛藤があったけどね」