英AUTOSPORTが、2016年F1のトップ10ドライバーを選出した。21戦の全セッションの結果と、ドライバー、チームの主要メンバー、専門家への取材を通してジャーナリストたちが得た情報をもとに、綿密に観察、分析した結果、選ばれた10人は……? 今回はパート3として3位から1位を発表、トップ10の結果もまとめて紹介する。
■3位 マックス・フェルスタッペン
奇跡を起こせる、次なるビッグスター
(トロロッソ/レッドブル 優勝1回 ランキング5位)
フェルスタッペンは今のところまだF1で最も優れたドライバーではない。だが近いうちにそうなるのほぼ間違いないだろう。
根気強いレース運びで、不利な環境から好結果を引き出す能力があるのは確かだ。ナイジェル・マンセルやアイルトン・セナのように、彼は奇跡を起こせるドライバーなのだ。だからこそ彼の走りを見ているとわくわくするし、それはF1にとっていいニュースといえるだろう。
もちろん歴史に残るのはレッドブルに移籍して初めてのレースでF1最年少ウイナーとなったスペインGPであろうが、2016年に彼が最も素晴らしい走りを見せたのはウエットコンディションのイギリスGPとブラジルGPだった。
インテルラゴルスでは最後の16周で14位から3位まで追い上げた。この時の走りはセナやミハエル・シューマッハーと比較されて賞賛されたのも当然といえる。
ドライでもタイヤマネジメントのスキルが素晴らしく、それによって他と違った戦略を成功させることができる。優勝したスペイン、2位を獲得したオーストリア、最後尾から4位を獲得したアブダビでの成功の大部分は、彼のそのスキルがもたらしたものだ。
まだ粗さはあり、防御の際のアグレッシブさが他のドライバーたちから批判されたのももっともな話だ(その後、FIAはこれに関して規則を明確化した)。また、不利な状況からリカバーしようとするとき、しばしば衝動的になってしまう。
さらに、予選のパフォーマンスをもっと改善する必要がある。しかしマレーシアGP以降、セットアップに自分のやり方を取り入れてからは、しばしばダニエル・リカルドを破ってはいるが。
彼の衝撃はあまりに大きく、レースを始めてわずか3シーズンであることを忘れてしまいそうになる。もちろん、もっと進歩するために努力する必要はある。だがいずれ真のビッグスターになるであろう兆候はすでに現れている。
■2位 ルイス・ハミルトン
トラブルは不運だったが、自分自身のミスもあった
(メルセデス 優勝10回 ランキング2位)
ハミルトンは2016年、3年連続でタイトル獲得を成し遂げていてもおかしくはなかった。今年も全チーム中、最も速いマシンに乗っており、シーズン通しての純粋なパフォーマンスで見ると、メルセデスドライバーふたりのうち、優れていたのはハミルトンの方だった。
ハミルトンは間違いなく、ロズベルグよりも速かった。ポールポジション獲得回数はロズベルグの8回に対してハミルトンは12回だった。エンジントラブルのため、きちんと戦えなかった予選が3回あったにもかかわらず、予選対決で勝っているのだ。優勝回数においてはロズベルグの9回に対してハミルトンは10回、表彰台の回数はロズベルグが16回、ハミルトンは17回だった。
だがそれでも目的は達成できなかった。ハミルトンはロズベルグに5点差で敗れた。ハミルトンがマシンの信頼性のなさに阻まれたと主張するのももっともだ。だが一方で多くのミスを犯したことが敗北につながったのも確かだ。
マレーシアGPで首位を走っている際にエンジントラブルが発生し、ポイントを失った。しかし何度もスタートを失敗したことでもさらに取れるはずのポイントを逃している。スタート手順の変更に、ハミルトンはロズベルグほどうまく対応することができなかった。その代償を支払ったわけだ。バクーの予選ではらしくないクラッシュをし、シンガポールではロズベルグのレベルには全く届かなかった。
ロズベルグは日本GPでタイトルレースの主導権を完全にハミルトンの手から奪い取った。それによってある意味ハミルトンのプレッシャーは軽くなり、本来の姿を取り戻し、終盤4連勝を挙げた。だが残念ながらそのころにはもう遅すぎたのだ。
■1位 ダニエル・リカルド
逸材フェルスタッペンをしのぐ速さと安定感
(レッドブル 優勝1回 ランキング3位)
ロズベルグとハミルトンのメルセデス勢が今年もランキングトップ2を独占、フェルスタッペンがメディアの見出しを独占したものの、2016年のF1ベストドライバーはリカルドだった。
2014年に3勝した後、レッドブル・ルノーが低迷した2015年には苦戦したリカルドだが、今年はまたドライバーとしてベストの状態に戻った。
リカルドは今年、改めて集中し直した結果、きわめて素晴らしいパフォーマンスレベルをシーズン通して一貫して発揮してみせた。
確かに彼は1度しか勝っていない。しかもそれはハミルトンのエンジンがブローしたことで首位を引き継いで手にした勝利だ。だがリカルドは、レッドブルがもう少しピットストップをうまく実行してさえいれば、スペインとモナコも勝っていたはずだった。
フェルスタッペンがスペインからレッドブルに加入、リカルドは彼を相手に自分のレベルを上げなければならなかった。しかしそれを見事にやってのけ、予選対決では11対6でリカルドが勝っている。また、ふたりがチームメイトとして戦った17戦に限定しても、リカルドは220点、フェルスタッペンは191点で、リカルドの方が多くポイントを稼いでいるのだ。
ふたりの力関係は変化し続けた。確かにフェルスタッペンは本能という面でF1史上最も素晴らしいレーサーのひとりかもしれない。しかしリカルドの、より計算されたアプローチは少なくともフェルスタッペンよりいい結果を引き出した。
リカルドが特に優れているのは予選の能力だ。Q3の重要なタイミングで何度となく強烈なラップを走ってみせた。ルノーがシーズン中の大規模アップグレードを入れる以前からリカルドは見事な結果を出している。バーレーンでは5位、中国では2位を獲得。フェルスタッペンが移籍してきたスペインでも最後のランで素晴らしい走りをして3位、モナコではポールポジションを獲得、バクーとシンガポールではフロントロウにつけた。
2度タイトルを獲得した経験を持つフェルナンド・アロンソは、リカルドを非常に高く評価し、BBCのインタビューに対して、現在のF1ドライバーのなかで最も優れているのはリカルドだとコメントした。今年の彼の走りを見れば同感と言うほかないだろう。
■2016年F1トップ10ドライバー(英AUTOSPORT選出)
1位 ダニエル・リカルド
(レッドブル 優勝1回 ランキング3位)
2位 ルイス・ハミルトン
(メルセデス 優勝10回 ランキング2位)
3位 マックス・フェルスタッペン
(トロロッソ/レッドブル 優勝1回 ランキング5位)
4位 ニコ・ロズベルグ
(メルセデス 優勝9回 ランキング1位)
5位 フェルナンド・アロンソ
(マクラーレン・ホンダ 最高位5位 ランキング10位)
6位 カルロス・サインツJr.
(トロロッソ 最高位6位 ランキング12位)
7位 セバスチャン・ベッテル
(フェラーリ 最高位2位 ランキング4位)
8位 バルテリ・ボッタス
(ウイリアムズ 最高位3位 ランキング8位)
9位 ニコ・ヒュルケンベルグ
(フォース・インディア 最高位4位 ランキング9位)
10位 セルジオ・ペレス
(フォース・インディア 最高位3位 ランキング7位)