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バンドじゃないもん!が体験させてくれた“幸せな空間” 『バンもん!Fes.winter 2016』東京編

2016年12月20日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

バンドじゃないもん!

 2016年12月17日、渋谷のWWWとWWW Xの2会場を使って、バンドじゃないもん!主催のフェス『バンもん!Fes.winter 2016~雪降る夜にフェスして~ Supported by WEGO』が開催された。12月11日の名古屋ElectricLadyLandに続いての東京開催だった。


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 この日はバンドじゃないもん!がWWWとWWW Xで2回ライブをするというので、まず15時からバンドじゃないもん!がライブをするWWWに向かった。すると、すでにフロアから人が溢れてドアが閉まらない状態。こんなWWWは初めて見た。


 フロアに入ると、ぱいぱいでか美がフロア後方のサブステージでDJ中。スマイレージの「夢見る15歳」を流しているところだった。そして、シャ乱Qの「ズルい女」を流し、「Bye-Bye」という歌詞に合わせて、「売買」について、つまり物販についてちゃっかり話しはじめたのがさすがだった。


 超満員で異常な密度のフロアを前にして、バンドじゃないもん!のライブはスタート。「OVERTURE」が流れると一斉にメンバー・カラーのサイリウムが焚かれた。私はフロア最後方で壁を背にして見ていたのだが、バンドじゃないもん!のファンである“もんスター”のMIXの声で、背後の壁が揺れたかのような感覚にすら陥った。


 まず「雪降る夜にキスして」。この日のイベント名『バンもん!Fes.winter 2016~雪降る夜にフェスして~』にかけて1曲目にしたのだろう。この日は、鈴姫みさこのドラム・ソロに続けてクリスマスの鈴の音が挿入される趣向もあった。


 2曲目は「夏のOh!バイブス」。ORANGE RANGEのNAOTOがプロデュースし、楽曲の全編にフックを利かせた、キャッチーさの塊のような楽曲だ。


 MCでは、2017年1月11日にシングルが2枚同時発売されることについて語られた。サード・シングルは、在日ファンクの浜野謙太作が作詞作曲を担当。フォース・シングルはまだ曲名が発表されていないが、カヴァー曲であることが明かされている。バンドじゃないもん!は、2枚ともベスト10に入れることを改めて宣言した。


 3曲目はフォース・シングルのカップリング曲。鈴姫みさこが作詞し、メンバーの好きな食べ物を織りこんだというロック・ナンバー「すきっぱらだいす♡」だ。七星ぐみによるセリフのパートもユニークで、落ちサビも彼女が担当している。


 4曲目の「君の笑顔で世界がやばい」の落ちサビではリフトが多発し、「君のリフトで世界がやばい」と表現したくなるような光景に。壮観だった。


 5曲目の「NaMiDa」に続いて6曲目に披露されたのが、サード・シングルである新曲「YAKIMOCHI」だ。浜野謙太が作詞作曲したこの楽曲は、JBマナーを踏襲している。つまりジェームス・ブラウンを彷彿とさせるファンクなのだ。生録音したというブラスが鳴り響き、サックス・ソロまである。こうしたサウンドの中でも、鈴姫みさこのドラムは冴え渡っていた。バンドじゃないもん!史上、もっともブラック・ミュージックに接近した楽曲だけに、大きな衝撃を受けるとともに、快哉を叫びたくなった。


 最後の「パヒパヒ」では、鈴姫みさこのドラムに加えて、望月みゆのベース、甘夏ゆずのキーボードの生演奏も力強く響いた。


 続いては、みきちゅがサブステージに登場。10月にディアステージへの移籍を発表し、約1年封印していた“みきちゅ”名義での活動も再開してファンを歓喜させたばかりだ。


 みきちゅのライブは、彼女の最高の名曲「アイドルの秘密」でスタートした。アイドルであり、シンガーソングライターでもあるみきちゅ自身によって、アイドルとしての苦悩が赤裸々に描かれた楽曲だ。


 既存曲はもちろんのこと、新曲までみきちゅ名義で歌われるようになったことは嬉しい。最後は、みきちゅの名を繰り返す「みきちゅMIX」が熱く響いた。


 メイン・ステージでセッティングをしながらみきちゅのステージを見守り、ケチャもしていたのがONIGAWARA。竹内サティフォが布袋寅泰モデルのギターを弾いているものの、ふたりが歌っているのは1990年代的なエッセンスを感じさせる洗練されたポップスだというギャップも面白い。ステージ上のONIGAWARAは、まるで時代性を超越した男性アイドルのようだった。曲中にさまざまなポーズをとる撮影タイムまで用意していたのだから。


 ONIGAWARAのライブが終わった瞬間、インダストリアルな轟音が響きだした。サブステージでテンテンコのDJが始まったのだ。容赦のないノイズから重く太いビートへと展開していき、ものの数分でフロアをテンテンコの世界にしてしまった。


 テンテンコは、初のメジャーでのソロ・アルバム『工業製品』をリリースしたばかり。しかし、この日の前半は、彼女が自主制作で毎月リリースしているCD-Rのようなサウンドだった。次々と変化していくサウンドの中には、デトロイト・テクノかと思うようなパートもあった。


 DJスタートから約20分を経て、テンテンコは初めてMCを挟み、『工業製品』のリード・ナンバー「次郎」を歌いはじめた。この楽曲は、デジタル・クンビアのようなビート。しかも間奏のギター・ソロは、古いタイ歌謡のようだ。「放課後シンパシー」では、機材を手にして電子音を発しながら歌った。振り幅の大きさこそがテンテンコの魅力だ。


 BILLIE IDLE(R)は、「anarchy in the music scene」からスタート。自分がボーカルをとらないパートで、直立して腕組みをしながらフロアを見渡すファーストサマーウイカの存在感は、まるで歌舞伎役者のように強烈だ。


 当初はキャリアのあるヒラノノゾミとファーストサマーウイカを追う立場だったモモセモモが、すっかり堂々とフロントを張れるようになったのも心強い。8月に加入したばかりの新メンバーであるアキラ(モモセモモの妹だ)の動きも思いきりが良い。


 そして、今やBILLIE IDLE(R)現場のアンセムとなりつつある「be-bop tu-tu」では、BILLIE IDLE(R)ならではのネオ80年代感を体現してみせた。


 MCではファーストサマーウイカが、バンドじゃないもん!の恋汐りんごの声マネをしながら「はわー!」とフロアとコール&レスポンス。


 後半で歌われた「どうせ消えてしまう命なら...」は、もともとは「ヒラノノゾミ from BILLIE IDLE(R)」名義で「"どうせ消えてしまう命なら..." feat. ファーストサマーウイカ、カミヤサキ、テンテンコ、ミチバヤシリオ」としてリリースされた楽曲だ。元BiSのメンバーを招いた楽曲であるため、元研究員のノスタルジーを否応なしに刺激した楽曲でもある。その「どうせ消えてしまう命なら...」が、BILLIE IDLE(R)によって現在進行形のものとして歌われたことには、ちょっとした感動を覚えた。「どうせ消えてしまう命なら...」は、2016年に発表された松隈ケンタ作曲作品として、もっとも優れた1曲でもある。


 サブステージには、陽気なゴッドサマーズが登場。バンドじゃないもん!の天照大桃子と甘夏ゆずによるDJユニットだ。ふたりはDJをしつつマイクで煽り、歌い、そして柵にも登った。


 DJ 汐りんごは、サンタ姿でサブステージに登場。かと思うと、クリスマスプレゼントとしてお年玉をフロアに投げはじめた。マイクを手にして歌い、最後は恋汐りんごのオリジナル曲「りんごいろの約束」も歌うなど、さながら彼女のソロ・ライブのようだった。


 この日、2回目のバンドじゃないもん!のライブは、WWW Xで20時過ぎからスタート。コールもリフトも沸き起こる白熱の公開リハーサルを経て本番を迎えた。


 1回目と同じく「OVERTURE」が流されたが、今度は「YAKIMOCHI」からスタート。9月にオープンしたばかりで音響の良いWWW Xは、みさこの生ドラムを満喫できる会場でもある。ファンクな楽曲に合わせて、天照大桃子をはじめとするメンバーのボーカルがソウルフルに迫力を増しているとも感じた。


 2曲目の「RAVE RAVE RAVE」ではメンバーが扇を振りながら歌い踊り、一気に1990年代の六本木ヴェルファーレの世界へ。


 3曲目は「すきっぱらだいす♡」。WWW Xの音響だと、この楽曲で裏打ちを刻むエレキ・ギターもよく聴きとれる。


 4曲目の「タカトコタン-Forever-」は、バンドじゃないもん!の楽曲の中でも最強の「暴れ曲」だ。メンバーがサビでヘドバンをするなど、展開もめまぐるしい。


 そのテンションを落とさないまま5曲目の「キメマスター!」へ。バンドじゃないもん!が2016年に2度目のメジャー・デビューを果たしたときの記念すべきシングルだ。


 すっかりフロアの気温も上昇した中、MCでは鈴姫みさこがサード・シングルとフォース・シングルを必ずベスト10に入れたいと再度宣言。レベルアップしたいという想いを込めて「UP↑ぷらいむ」が歌われた。この楽曲には「レベル Up↑」という歌詞が出てくるのだ。


 本編最後は、バンドじゃないもん!の最初期から歌われ続けている名曲「ショコラ・ラブ」。現在のメンバーの体制になってから約2年半になるバンドじゃないもん!の歴史を振り返り、思わず胸が熱くなった。現在の6人になってから、よくぞここまで誰も抜けずにきてくれた、と。


 アンコールは「プリズム☆リズム」。最後の最後まで、ステージもフロアも熱気が冷める瞬間はなった。


 『バンもん!Fes.winter 2016~雪降る夜にフェスして~』は、12月24日、25日に大阪の梅田CLUB QUATTROでスピンオフ対バンイベントとして開催される。現在のバンドじゃないもん!のライブの熱気をぜひ体験してみてほしい。バンドじゃないもん!ほど幸せな空間を体験させてくれるアイドルは、そうはいないのだから。(宗像明将)