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全席プレミアシート、しかも追加料金なし! アメリカ映画館の最新事情レポート

2016年12月18日 17:41  リアルサウンド

リアルサウンド

Century Theatres 劇場内の様子

 基本料金、一般1800円。映画の鑑賞料金が高いと言われがちな日本だが、最近はアメリカも日本と同じような料金体系だと耳にすることが多い。筆者が海外に留学していた10年前は、当時まだ学生だったこと、留学先がニューヨークやロサンゼルスなどの大都市ではないミネソタ州セントポールだったということもあり、旧作だと$5、新作でも$10払えばお釣りがもらえるほどで、アメリカの映画鑑賞料金は安いというイメージがずっとついていたのである。


 そこで今回、取材で米カリフォルニア州サンフランシスコに行く機会があったので、取材の合間を縫って、現地の映画館を訪れてみることにした。


参考:『この世界の片隅に』ヒットを目指し、映画館はこう仕掛けたーー立川シネマシティ・遠山武志が解説


■ポップコーンとドリンクのセットが映画鑑賞料金よりも高い!


 まず筆者が訪れたのは、米国第2位の映画興行チェーン「AMCシアターズ」が運営する「AMC Van Ness 14」。サンフランシスコのダウンタウンから少し離れた場所に位置する映画館だ。外観はさながら銀行のよう。もともとはキャデラックのディーラーだったそうだ。


 チケットは有人のチケットカウンターで購入する方式。ネット購入は可能だが、日本のシネコンではすでに当たり前となりつつあるデジタル券売機の設置はない。せっかくなので、日本では公開されないであろう作品をチェックしようと思い、ヘイリー・スタインフェルド主演の『The Edge of Seventeen』を鑑賞することに。料金は$13.99。日本円に換算すると、約1600円なので、日本よりは若干安い程度だ。


 チケットをもぎられ中に入って行くと、数フロアに渡って全14スクリーンが配置されていることが確認できた。しかし、オープンしていないスクリーンがあったり、各フロアにコンセッションがあるにもかかわらず1店舗しか営業していなかったりと、平日の午後ということもあってか客足がまばらで閑散とした印象だ。『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』をはじめとするダイナミックなスタンディも少し寂しそう。


 普段、ドリンクを買うことはあってもポップコーンをはじめとするフードを映画館で買うことはほぼない筆者だが、せっかくなので本場アメリカのポップコーンを食べようとコンセッションへ。ここで驚いたのが、その値段だ。ポップコーン(最大サイズ)とドリンクのセットで$15.59。日本円にすると、約1800円。映画鑑賞料金以上の高さに思わず「高ぇ……」と口に出してしまった。結局、$5.19(約600円)のドリンクのSサイズ(と言っても日本のXLサイズレベル)だけを購入し、上映スクリーンへ。


 場内は本編上映前の予告編が流れる段階で客電が落ちていた。席は自由席で、車椅子用の座席が場内ど真ん中のベストポジションに3席設置されているのが印象的だ。スクリーンは全77席に対して十分すぎる大きさ。観客は筆者と2組のカップルの計5名という寂しいものだったが、数々の賞を受賞した『トゥルー・グリット』でのキャリアスタートから、最近は『ピッチ・パーフェクト2』の好演やシンガーとしても目覚ましい活躍を見せているスタインフェルドのコメディエンヌとしての魅力がとても詰まった作品に満足しつつ、劇場を後に。


■通常料金で豪華シートが楽しめる!


 次に向かったのは、サンフランシスコのダウンタウンに位置するショッピングモール「Westfield San Francisco Centre」内にある映画館「Century San Francisco Centre 9 and XD(Century Theatres)」。「Westfield San Francisco Centre」は、bloomingdale’sやNordstromといったアメリカで有名なデパートや、たくさんのブティックが入った大型モールだ。


 この映画館は、料金が時間帯によって変わるシステム。平日は午後6時まで、土日祝は午後2時までの上映回が、一般$11.75(約1350円)。午後6時以降の上映回は、平日$13.50(約1550円)、土日祝$14.00(約1600円)といった料金体系だ。これは日本にはあまりないシステムで、なかなか興味深い。


 そして何よりも驚いたのが、その座席だ。この「Century Theatres」は、「リーガル・エンターテインメント・グループ」、「AMCシアターズ」に続く、米国3番手の興行チェーン「シネマーク・シアターズ」の系列。「シネマーク・シアターズ」では、Luxury Loungersというリクライニング式のシートを導入しており、この「Century Theatres」では全スクリーン、全座席がLuxury Loungersになっていた。TOHOシネマズ六本木ヒルズなどに導入されているプレミア ラグジュアリー シートに近い、フットレストの付いた革製の電動リクライニングシートだ。TOHO シネマズでは、このプレミア ラグジュアリー シートに座るには、鑑賞料金に3000円の追加料金を支払わなければいけないが、「Century Theatres」においては追加料金一切なし。前後の座席とも十分すぎるほどの間隔があり、日本ではなかなか味わえない座り心地の良さを感じることができた。ロサンゼルスやニューヨークなどの大都市でも、このようなプレミアシートの導入が増えているようだ。


 ちなみに筆者が「Century Theatres」で鑑賞したのは、ゴールデングローブ賞をはじめとする賞レースで話題沸騰の『Manchester by the Sea』。主演ケイシー・アフレックのキャリア史上最も迫真に迫る演技と、どこまでもオリジナルな話運びに驚嘆。日本では2017年に公開される模様なので、激しくオススメしておくことにする。


 日本でも、先日12月16日にリニューアルオープンした新所沢レッツシネパークが話題だ。3種類のプレミアシートが通常料金で楽しめるという。IMAXや4DX、MX4Dなどの上映システムはもちろん、今後はプレミアシートなどの鑑賞環境の向上が、映画興行におけるひとつのトピックになるかもしれない。(宮川翔)