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The xx、The Japanese House、The fin......ロンドンと日本をつなぐ“夢想”の音楽

2016年12月18日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

The Japanese House「Swim Against the Tide」

 今月は「ドリームポップ新時代」というテーマで6曲を紹介します。


(参考:6作品のMVはこちら


 と言っても、本当はこういう言葉でくくってしまっていいのかどうか、実はよくわからないのだけれど。ともかく、シンセやエレクトロニックな音色を効果的に、浮遊感とメランコリックなテイストを描いているアーティスト、寒くなってきた今の季節にすごく心に染みるようなサウンドを鳴らしている人たちの曲を集めました。


 つまりは、今、一番新しい形で「夢想」を鳴らしている人たち。その点と点をつないでいったら、日本とロンドンを結ぶ線が見えてきたーーそんな記事です。


・The xx「On Hold」(ロンドン)


 まずは新作『I See You』を1月13日にリリースするジ・エックス・エックス。4年半前にリリースされた前作『コエグジスト』が全英1位、全米5位を獲得し、今のシーンをリードする存在になったグループだ。


 新作からのリード曲がこの「On Hold」。新境地だと思う。これまでの楽曲に比べても格段に解放感と広がりを感じる。先日の来日公演に行けなかったのはめちゃ残念だったのだけれど、ライブの評判もすごくよかったみたい。新作、とても楽しみです。


・雨のパレード「stage」(東京)


 そして、2016年3月にアルバム『New generation』でメジャーデビューを果たした雨のパレード。アルバムもすごくよかったのだけど、その後にリリースした「You」という曲には感銘を受けた。きっと、今、バンドとしてどんどん覚醒を果たしているタイミングなのだと思う。さらにそれを実感したのが12月21日にリリースされる新曲「stage」。サウンドの進化と共に、歌うべきこと、伝えたいものに対しての“覚悟”のようなものが生まれているように思う。『NIGHT FISHING』の頃のサカナクションに近い感じもする。


・The Japanese House「Swim Against the Tide」(ロンドン)


 ザ・ジャパニーズ・ハウスとは、ロンドン在住の21歳の女性アーティスト、アンバー・ベインによるソロプロジェクト。まだデビューアルバムも届いてないくらいのニューカマーだけど、かなりのセンスと才能の持ち主だと思う。とにかくこの「Swim Against the Tide」がいい。繊細に切り刻まれた電子音と幾重にも積み重なるコーラスが、どことなく荘厳な感覚を呼び覚ます。


 デビューEPのプロデュースをThe 1975のメンバーが行ったことでも知られる彼女。来年にはThe 1975のツアーに同行するらしい。「BBC Sound Of 2017」の候補にも選ばれている。さらに言えばモデル並みの美女でもある。


 来年、人気をどんどん拡大していくような気がする。


・FOLKS「クロマキードーナッツ」(北海道)


 地元である北海道・恵庭に拠点を置いて活動を続ける4人組バンド、FOLKS。今年6月に自主レーベル<FOLKS RECORD>を設立した彼らが、レーベル初のシングルとして12月23日にリリースするのがこの『クロマキードーナッツ / FIN.』。透明感のあるサウンドメイキングのセンスは変わらずに肝となっているが、ドラマティックな力強さのある「クロマキードーナッツ」に、軽やかなビートの「FIN.」と好対照になっている。冬になると雪に閉ざされてしまう地方ならではの想像力が音に息づいている。


・Catching Flies「Komorebi」(ロンドン)


 ロンドンに拠点を置いて活動するDJ/プロデューサーのキャッチング・フライズ。彼も、とてもドリーミーなサウンドを届けてくれるミュージシャンの一人だ。2013年にEPをリリースしてから鳴りを潜めていたが、久々に届いた新曲「komorebi」がいい。おそらくこれは「木漏れ日」のことなのだろう。まさに、秋から冬の寒い時期に澄んだ空気と枯れ木を通してキラキラと光るような、そんなイメージの音を鳴らしている。


 ちなみに。「komorebi」は曲名だけど、最近のロンドンには、デビューアルバム『ウォーム・オン・ア・コールド・ナイト』をリリースし先日来日も果たしたエレクトロ・デュオの「HONNE」(本音)とか、エイサップ・ロッキーをフィーチャリングした「Love$ick」が話題を呼んでいるMURA MASAとか、日本語の名前をつけるグループが増えている。


 これ、一体どういうことなのだろう? ザ・ジャパニーズ・ハウスもそうだし、今、ロンドンでは「日本」がクールということになっているのだろうか。


・The fin.「Heat(Ten Fé Remix)」(神戸~ロンドン)


 というわけで、エレクトロニック・ミュージックとかインディ・ポップの一番新しくて面白いところを探っていったら、なんだか日本とロンドンが微妙につながってるかもよ? みたいな感じのことを思い始めている昨今。


 その辺の空気感をきっと掴んでそうなのがThe fin.。神戸出身の3ピースバンドとしてデビューした彼らは、今年になって拠点をロンドンに移している。11月25日には、彼らが3月にリリースしたEP『Through The Deep』のリミックス作品『Through The Deep Remix EP』を配信リリース。もともと輪郭のぼやけた気持ちよさを持つサウンドを鳴らしていたバンドだけれど、エレクトロニック・ミュージックの先鋭たちが手掛けたリミックスによって、さらに浮遊感が増している。


 特に「Heat」のTen Féによるリミックスがいい。Ten Féもロンドンを拠点にするエレクトロ・デュオだ。何かありそうな気がする。


(柴 那典)