英AUTOSPORTが、2016年F1のトップ10ドライバーを選出した。21戦の全セッションの結果と、ドライバー、チームの主要メンバー、専門家への取材を通してジャーナリストたちが得た情報をもとに、綿密に観察、分析した結果、選ばれた10人は……? 今回はパート1として10位から7位を紹介する。
■10位 セルジオ・ペレス
予選で向上、優秀なオールラウンドプレイヤーに成長
(フォース・インディア 最高位3位 ランキング7位)
2016年もペレスは見事な仕事をした。初めて1シーズンのうちに100ポイント以上を獲得、キャリアベストのランキング7位を達成した。
2015年シーズン中盤から一貫して優れたパフォーマンスを発揮しており、その好調さを2016年も維持した。
全体的に見ればチームメイトのニコ・ヒュルケンベルグの方が少しパフォーマンスがよかったが、ペレスは善戦した。予選のチームメイトバトルでは12対9でヒュルケンベルグに敗れたものの、21戦中14戦でふたりの差は0.2秒以下だった。ペレスがザウバー時代からどれだけ予選で進歩したかが分かる。
バクーで予選2位を獲得、決勝で3位表彰台に上ったのは見事だった。FP3をクラッシュで終え、ギヤボックス交換でグリッド降格ペナルティを受けたが、素晴らしい挽回を果たした。
ペレスは優秀なオールラウンドプレイヤーに成長した。あまり派手ではないが、予選では間違いなく向上している。タイヤマネジメントのスキルに関し、系統的で自己分析的なアプローチをとったことで、決勝ではまるで機械のように正確な走りができるようになった。
チャンスが訪れたときにはほぼ必ずそれをものにしている。2016年にフォース・インディアはF1キャリアのなかでベストの成績を収めたが、ペレスの貢献が大きかったのは間違いないだろう。
■9位 ニコ・ヒュルケンベルグ
表彰台に立てなかったのは不運というほかない
(フォース・インディア 最高位4位 ランキング9位)
かつてフェラーリの目を引き付けた輝きを時折見せたものの、今年の序盤5戦はあまりぱっとしなかった。しかしスペインGP後にVJM09の最後の大型アップグレードが入ってから勢いを取り戻し、見事なパフォーマンスを何度か見せた。特に予選では全体的にペレスよりいい走りをしている。
モナコGPでは予選でフェラーリのキミ・ライコネンに勝って5位を獲得。チームがもっといい戦略を選んでいれば、ペレスの代わりに表彰台に乗っていただろう。
オーストリアで不安定なコンディションとなった際に3位を獲得、オースティンとメキシコでのQ3のラップもすばらしかった。2017年にルノーへの移籍が決まった後、新しいギヤを見つけたようだと言われたが、それについて本人は否定している。
今年のヒュルケンベルグはパフォーマンスにふさわしい結果を手に入れられなかったケースが何度かあった。自分に過失がないにもかかわらず戦いから脱落しなければならなかったレースは5戦、表彰台に立てなかったのも不運というほかない。
ランキング表を見る限りでは、ヒュルケンベルグはペレスに大差で負けているように見えるが、そういう評価はフェアではない。ヒュルケンベルグは非常にいい走りをしたし、2016年にフォース・インディアのドライバーのどちらが優れていたかといえば、わずかの差ではあるが、それはヒュルケンベルグの方なのだ。
■8位 バルテリ・ボッタス
派手さはないが、常に最大限の結果を出す、信頼できるドライバー
(ウイリアムズ 最高位3位 ランキング8位)
過去2年間、ランキング3位に位置していたウイリアムズが2016年は5位に終わった。従ってボッタスも、今年は2014年と2015年ほどの成績を残すのは難しかった。
FW38のポテンシャルには限界があり、チームは空力開発に苦労した。だがボッタスはマシンの力を最大限に引き出した。
目立った結果を出せることはまれだったが、それでもボッタスはやれることをやり、コンスタントにポイントを獲得した。カナダでは戦略が奏功し、レッドブル2台、メルセデス1台、フェラーリ1台を破って表彰台に立った。
しかしボッタスの真の強みは今年も予選にあった。チームメイト対決ではフェリペ・マッサを17対4と、2016年全チーム中、最大の差で勝利を収めている。
ボッタスは21戦中、予選Q3に14回進出、シーズンを通しての予選平均順位は8.3位だった。ウイリアムズのマシンにトップ4の力があったとはいえないことを考えれば、素晴らしい結果である。
いつもながらボッタスは、派手ではないものの、F1中団で最も才能があり信頼できるドライバーであることを証明した。
7位 セバスチャン・ベッテル
誇りに思えるようなシーズンではなかった
(フェラーリ 最高位2位 ランキング4位)
フェラーリとベッテルの蜜月は終わった。最初の年の2015年は非常にうまくいき、両者は3勝を挙げたが、今年は未勝利。ランキングもベッテルはトップ3から大きく離れた4位に終わった。
フェラーリがSF16-Hに期待していたのは、たまに勝てるような状況から本格的にタイトルを争える状況へと向上することであったが、2016年のマシンは一貫したパフォーマンスを発揮できなかった。ベッテルは序盤は困難な状況によく対応し、最初の8戦で5回表彰台に上ってみせた。しかしフェラーリがメルセデスに挑戦するというよりもレッドブルと戦わざるを得なくなると、行き過ぎる走りが目立ってきた。
復調したチームメイトのキミ・ライコネンと後半12戦の予選成績を比べると、9対3でベッテルは負けている。特に終盤は5戦連続で敗れており、チーム代表マウリツィオ・アリバベーネとの不仲のうわさまでささやかれるようになった。アリバベーネは、ベッテルはマシンを走らせることに集中せずに、チームの舞台裏のことにかかわろうとしすぎると、指摘している。
だが少なくともベッテルは後半12戦の獲得ポイント数ではライコネンに勝っており(ベッテル116点、ライコネン90点)、表彰台にも2回上った。それでも彼が言うとおり、フェラーリにとって2016年シーズンは誇りに思えるようなシーズンでなかったのは確かだ。そしてそれはベッテル自身にも当てはまる。
※ランキングの続きは後日紹介いたします