2016年12月16日 21:32 弁護士ドットコム
東京都小金井市で今年5月、音楽活動をしていた冨田真由さん(21)が刃物で刺された事件に関する警察の対応をめぐり、警視庁は12月16日、「人身の安全を早急に確保する必要があると判断すべき事案であった」などとする検証結果を公表した。
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冨田さんは、小金井市のライブハウスの入るビル近くで、岩埼友宏被告人(殺人未遂で起訴)から刃物で首や胸などを刺されて、一時重体となった。冨田さんが事件前、警視庁に相談していたにもかかわらず事件が発生したことから、警察の対応に問題があったのではないかと指摘されていた。
警視庁は検証結果として、「直ちに被害者の生命、身体に危害を加える危険性があるとの認識には至らなかった」が、「当時の資料を再検討すれば、その内容から本事案は人身の安全を早急に確保する必要があると判断すべき事案であった」と不備を認めた。さらに、冨田さんから110番通報された際、「受理担当者が携帯電話の位置情報の確認を失念した」などとミスがあったこともを報告している。
一方で、冨田さんは12月16日、代理人を通じて手記を発表し、「殺されるかもしれないと何度も伝えたにもかかわらず、危険性がないと判断されたのは今でも理解できません」と、警察の対応やその後の取り組みについて納得がいっていないことを明かしている。
警視庁が今回公表した検証結果と事件を受けての取り組みは以下の通り。
1 本事案を踏まえ確認された事項
1 事案の危険性、切迫性の判断
被害者から、5月9日の相談時に被疑者に殺されるかもしれないとの恐怖心から、持参した資料などを提示して説明した旨を聴取しているが、武蔵野署では、その思いを汲み取るに至らず、また、当該資料には一方的な好意や嫌悪の感情が含まれる書き込みが多数あったが、具体的に被害者に危害を加える旨の文言はないこと、被疑者は1月17日のライブ後は相談時に至るまでライブに来ていないことから、直ちに被害者の生命、身体に危害を加える危険性があるとの認識には至らなかった。しかしながら、当時の資料を再検討すれば、その内容から本事案は人身の安全を早急に確保する必要があると判断すべき事案であった。
2 相談者の安全確保に向けた保護対策
武蔵野署では、被害者の人定事項及び相談事案の概要を即応システムに登録し、小金井署に対し110番通報があった際の対応を依頼するにとどまるとともに、被害者に対する防犯指導は、有事の際の110番通報にとどまっていた。また、小金井署では、交通勤務員などに連絡するにとどまり、いずれの署でも、ライブハウス周辺のパトロールなどは行っていなかった。
3 相談内容の記録
3年前の万世橋署の相談では、当初相手方が不明であり相談受理票の相手方欄を空欄としていた。その後、被疑者が相手方として浮上したものの、嫌がらせ事案が収まり事件化をしなかったことから、相手方欄を空欄のままとし、事後に被疑者の人定を検索できる状況になかった。
4 多摩センターにおける110番通報の対応
受理担当者が110番発信されている携帯電話の位置情報の確認を失念し、即応システムに登録された被害者の住居地が通報場所であると判断した。
2 本事案発生後の取り組み
1 事態対処チームへの情報の集約
一方的な好意の感情又は嫌悪の感情を含む相談(同一文言や同一内容の繰り返しがあるものを含む)は、事態対処チームに速報し、事態対処チームは危険性などの判断に関する指導・助言を行うこととした。
2 事案の危険性、切迫性の適格な判断と組織的対応の強化
関係者からの幅広い事情聴取、過去の警察での取り扱い状況、サイバー空間の状況などを把握して危険性などを見極め、早期の事件化、迅速な口頭警告、保護対策(定期的な聴取やパトロール、具体的な防犯指導)を行うこととした。即応システムには相談者の住居地以外でも、相手方と接触する可能性がある場所を登録することとした。
3 相談内容の確実な登録
同種の相談内容への活用のため受理時の内容、人定、経過などに加え、処理過程で判明した事項についても、相談システムに確実に登録することとした。
4 110番通報に対する迅速、適格な対応
登録された電話からの110番は、自動的に位置情報を画面表示するようシステムを改修した。
5 全職員に対する意識の徹底
迅速、適格な相談者などの安全確保については全職員に意識付けを行った。
(弁護士ドットコムニュース)