2016年12月16日 10:52 弁護士ドットコム
パートやアルバイトとして働く場合、「労働時間」「有給取得」「休憩時間」「定年」「ボーナスの有無」など、正社員とはどのような違いがあるのかご存知ですか。 弁護士ドットコムには、パートとして働く方々から、さまざまな質問が寄せられています。相談事例をもとに、どんな法的な問題があるのか。友弘克幸弁護士に聞きました。
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第1回目のテーマは「パート」の法的位置付け、休憩時間や有給休暇の扱いです。
Q.「法的な位置付けはどうなってるの?」
Q)短時間労働の求人票には「パート」「アルバイト」など、様々な名称が並びます。「正社員ではない職種」の法的位置付けは、どうなっているのでしょうか?
A. 友弘弁護士「労働基準法などが適用されます」
まず強調しておきたいのは、「正社員」であれ「パート」「アルバイト」であれ、「労働者」である以上は、労働関連の法律の適用を受けるということです。
具体的には「労働基準法」「最低賃金法」「労働安全衛生法」「雇用機会均等法」「育児介護休業法」「労働契約法」「労働組合法」といった法律です。
そのうえで、「正社員」と、「アルバイト・パート」との法的な違いについてご説明します。
一般に、「正社員」といえば、会社と「期間の定めのない雇用契約」を結んで、その会社で1週間に5日前後、合計で40時間ほど就労している労働者を指します。
これに対し、同じ会社に雇用されて、同じ職場で働いていても、「パート」「アルバイト」などの名前で呼ばれている方々もいます。これらの方々は、通常、「1日5時間だけ」とか、「週3日だけ」など、正社員よりも短い勤務をしていることが多いと思います。
このように、所定労働時間が正社員より短い労働者のことを、法律上は「短時間労働者」(パート労働者)と呼びます。
短時間労働者(パート労働者)であっても、「労働者」である以上、労働関連の法律の適用を受けることは冒頭に述べたとおりです。
いっぽう、短時間労働者(パート労働者)にだけ適用される法律もあります。それが「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(通称パート労働法)です。今回は内容について深入りしませんが、短時間労働者の地位の改善を目的とした制度が設けられています。
なお、「パート」「アルバイト」と言った名前それ自体には、法律的にはそれほど意味はありません。なんとなく「パート=主婦、アルバイト=学生」というイメージがあるのですが、法律上は、どちらも「短時間労働者(パート労働者)」です。
Q.「有給休暇はもらえないのですか?」
Q)学校の給食補助として、9時から15時まで働いていますが、休憩時間をとれず、有給休暇ももらえません。最近、上司が変わり、今まで社員がこなしていた仕事をパートに割り振られ、休憩時間も勝手に変えられ、お昼の30分のみになりました。終業時間もいつの間にか30分も短縮させられました。有給休暇を取ろうとすれば、激しい口撃を受けることもしばしばです。
A. 友弘弁護士「有給休暇を取得する権利があります」
(1)パート労働者にも労働基準法が適用される
まず、さきほど述べたとおり、所定労働時間が正社員より短い労働者(パート労働者)であっても、「労働者」である以上、労働基準法による保護を受けます。
労働基準法34条は、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と定めています。したがって、パート労働者であっても、労働時間が6時間を超えるのであれば、使用者は45分の休憩を与えなければなりません。
また、パート労働者であっても、年次有給休暇を取得する権利があります(労働基準法39条。ただし、所定労働時間や所定労働日数が少ない方の場合は、それに比例して有給休暇の日数も少なくなります)
(2)一方的に休憩時間を短くすることはできない
以上を前提に、ご質問のケース(学校の調理補助の方)について考えてみます。ご質問のケースの場合、もともと所定労働時間が9時から15時までだったということですから、仮に休憩を全く与えなかったとしても1日の労働時間は6時間に収まっているので、ただちに「労働基準法違反」になるわけではありません。
しかし、労基法はあくまで労働条件の「最低条件」を定めているに過ぎませんから、労基法に違反さえしていなければそれでよい、ということではないことに注意が必要です。
労働契約も「契約」である以上、労働時間や休憩時間についていったん定めたのであれば、使用者はそれに拘束されることになります。原則として、労働者の同意を得ないで一方的に労働条件を変更することはできません。
したがって、使用者は、原則として、労働者の同意を得ずに一方的に休憩時間を短くすることはできません。
また、時給制の場合には、1日の就労時間が短くなれば労働者にとっては収入の減少に直結しますし、週の労働時間の長短は雇用保険の加入資格にも影響する場合があります。したがって、労働時間の短縮も、労働者の同意を得ないで一方的に変更することは原則として許されないと考えるべきでしょう。
【取材協力弁護士】
友弘 克幸(ともひろ・かつゆき)弁護士
京都大学法学部卒業。2004年に弁護士登録。日本労働弁護団、大阪労働者弁護団に所属。
残業代請求、解雇、労災など、労働者側に立って労働事件を多く手がける。
事務所名:西宮原法律事務所
事務所URL:http://nishimiyahara-law.com/