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3年前の大ヒット作『永遠の0』から約半減 『海賊と呼ばれた男』初登場4位の鈍いスタート

2016年12月15日 17:51  リアルサウンド

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リアルサウンド映画部

 『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が動員38万人、興収5億6600万円と、前週の約84%(興収比)という相変わらずの高推移で3週連続興収トップであった先週末。


参考:『この世界の片隅に』の奇跡は続く 3週連続で前週超え、年明けには上映館が3倍に!


 しかし、動員ランキングで1位を奪取したのはゲームアプリの劇場版アニメーション『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』だった。土日2日間の動員は39万人、興収4億4000万円。その原動力となったのは、映画館に行くと無料で限定ガチャが引けるという特典だ。これまでも特に子供向けのアニメや戦隊もので威力を発揮してきた入場者特典だが、「スマホゲームのガチャ」という作品の特性を最大限に活かしたこの新たな手法は、30代以下のスマホゲームのユーザーのニーズにピッタリとはまるもので、特に地方の劇場で圧倒的な強さを発揮した。映画興行の手法が新たな局面に入った一つの成功例として、今後も追従する作品が出てきそうだ。


 公開から15週間、常に1位か2位をキープしていた『君の名は。』だったが、16週目となる先週末は一気に5位まで下降。さすがにここにきて息切れも見られるが、動員減少のダイレクトな要因となったのは、上映館の減少にある。その『君の名は。』の一部のスクリーンを奪って、先週末360スクリーンで拡大公開されたのが、百田尚樹の原作小説を山崎貴監督、岡田准一主演で映画化した『海賊と呼ばれた男』だ。結果は、動員ランキングで初登場4位だった。


 百田尚樹原作、山崎貴監督、岡田准一主演といえば、ちょうど3年前に公開された『永遠の0』の大ヒットがまだ記憶に新しい。最終興収87.6億、実写日本映画としては近年最大のヒット作となった同作は、2013年12月21日に430スクリーンで公開、オープニングの週末2日間に動員約43万人、興収約5億4230万7円でダントツの1位を記録。今回の『海賊と呼ばれた男』の動員22万4000人、興収2億8600万円という数字は、いずれも『永遠の0』の約52%。百田×山崎×岡田という組み合わせによる相乗効果は、この3年間でかなり目減りしてしまったようだ。


 公開直後のスポーツ紙などの報道では「興収50億を狙えるスタート」などと喧伝されていたが、さすがにこれは大本営発表に過ぎると指摘せずにはいられない。同じ12月の公開作とはいえ、強力なライバル作品不在で年間最も動員の見込める正月期に圧勝した3年前の『永遠の0』と違って、今年の正月期は現時点でもダブルスコアで差をつけられている『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』に加えて、今週末には『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、そして同じ東宝配給作品の『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』という超強力作の公開が控えているのだから。


「『海賊と呼ばれた男』と『妖怪ウォッチ』では観客層がまったく違うから関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれないが、先週末に『君の名は。』からスクリーンを奪った『海賊と呼ばれた男』は、今後、初週の鈍いスタートによってスクリーン数(さらに言うなら、各シネコンにおける上映館のキャパシティ)を奪われる側になる。高齢層の観客の比率の高さから今のところウィークデイには一定の強さは発揮しているが、「50億を狙える」どころか、その半分の25億が当面の目標になると本稿では分析しておこう。(宇野維正)