2016年12月15日 17:32 弁護士ドットコム
うつ病を患ったあと職場復帰に向けて訓練していた東京・東久留米市の男性職員(40代)が自殺したのは、市が適切な対応をとっていなかったからだとして、男性の妻が慰謝料を求めていた訴訟は12月15日、東京地裁立川支部で遺族と市の和解が成立した。
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和解内容は、市が(1)男性の自殺について遺憾の意を表明すること、(2)遺族に対して解決金1500万円を支払うこと、(3)精神疾患で休職した職員に対する職場復帰プログラムと個別プランをつくって対応すること、など。
和解後、男性の妻は東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「なんとか市が責任を理解してくれたことに少しほっとしています。できれば、うちの主人が復帰訓練しているうちに、きちんとしたプログラムがなされていたら良かったなと思います。二度とこのようなことが起きないことを心から願っています」と述べた。
訴状などによると、東久留米市の学校給食職員をつとめていた男性は2011年3月以降、うつ病を患って病休をとっていた。2013年5月から職場復帰に向けて訓練をおこなっていたところ、同年7月に上司(学務課長)から「もう出勤しないように」などと、職場復帰の可能性を否定する発言を受けて、症状が悪化。職務課長にそのことを訴えたが、適切な対処がされないまま同年8月に自殺した。
原告は2015年3月、上司の発言と市のメンタルヘルス対策に問題があったとして、安全配慮義務違反による損害賠償を求めて提訴した。原告代理人の質問状に対して、男性の主治医は、上司の発言と自殺について「大いに関連がある」「少なくとも自死に向けてのアクセルの様なものだった」「100%の自死を食い止めるのは困難だが、本人の意向・希望を受け入れられるような職場での配慮があれば防げた」と回答していた。
東久留米市の並木克巳市長は「このようなことを招いたことにつきまして、亡くなられたご本人はもとより、ご遺族及び関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。今後このようなことが起こらないよう、職場復帰支援体制をさらに整備し、フォローアップの充実を図るとともに、管理職へのメンタルヘルス研修を定期的に実施するよう努めてまいりたいと存じます。大変申し訳ございませんでした」とコメントした。
(弁護士ドットコムニュース)