トップへ

『おそ松さん』なぜJRAと組んだ? 増加するアニメ×企業コラボの背景を、アニメ評論家に聞く

2016年12月15日 11:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 おそ松さん×JRAのコラボアニメーション『走れ!おう松さん』や、アニメ『刀剣乱舞‐花丸‐』と讃岐うどんチェーン店「はなまるうどん」のコラボメニューなど、アニメが企業とコラボレーションするケースが目立っている。


参考:「おそ松」声優・櫻井孝宏、デビュー20年にして人気衰えぬワケ 陰のある声の魅力に迫る


 以前から『ポケットモンスター』や『ドラえもん』といった国民的アニメ作品が、飲食店やコンビニ、アミューズメント施設とコラボすることは珍しいことではない。しかし最近では、より幅広い作品が対象となり、アニメファン以外にはあまり知名度が高くない作品までコラボしている印象だ。


 昨今のアニメコラボ増加の背景について、アニメ評論家の藤津亮太氏に聞いた。


「歴史を辿れば決して珍しいことではないですが、体感的には2012年頃から増加傾向にあると感じています。最近は、アニメの社会的認知度も徐々に上がってきているため、アニメコラボが持つ意外性や注目度の高さに着目した企業が実践しているのでしょう。コラボの目的は、売り上げなどの実益以上に、まずは注目されることを念頭に置いているのでは。その点で、コアなファンのいる作品は深く刺さるので、効果も大きいと思います。総務省などの行政機関とアニメのコラボが注目を集めたのも、 接点がなさそうなもの同士が繋がった“驚き”があったからです。そこは、タレントを起用した従来のPR方法とはまた別の影響力があるといえます。また、アニメーション側からしても、アニメファン以外にリーチする機会があることは嬉しいことなので、好意的な関係を築けているのでは」


 熱心な作品ファンによる拡散効果やネットニュースでの注目度の高さから、一部でブームになりつつあるアニメコラボだが、ケースによっては大きな批判を呼ぶ可能性もある。


「アニメコラボに反応するのは、そのアニメ作品が好きだったり、アニメというジャンルに思い入れのある方々なので、比較的コアな作品とのコラボのほうが注目を集めて、バズりやすいと思います。意識的に目を向けてもらえる効果があるため、コンテンツ自体を見逃されることも少ないでしょう。しかし、当然のことですがコラボによってキャラクターのイメージが崩れてしまってはいけません。企画のメッセージ性とキャラクターの相性は最適なのか、そのためにこの絵柄でいいのか。キャラクターに詳しい人間がちゃんとディレクションすることで、アニメファンとコラボ相手、そして世間の三者の間に齟齬が生まれる可能性が減少するのでは」


 また、今後の展開について、中高年向けのコラボが増えるのではないかと予想する。


「アニメファン=若い世代という印象があると思いますが、’80年前後のアニメブームを支えた中学生から大学生も、現在は40代から50代くらい。今は若い世代にPRするためにアニメを選択するケースが多いです。しかし、今後は中高年の方へPRする際にも、アニメを活用するケースが増えてくる可能性も十分あり得ると思います」


 今年3月には、総務省とアニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』がコラボした「18歳選挙」PRや、アニメ『攻殻機動隊』と内閣サイバーセキュリティセンターのタイアップなど、国の行政機関×コアアニメを組み合わせた驚きのコラボレーションも実現している。これから先、さらに意外なアニメコラボが生まれる可能性は高そうだ。(泉夏音)