創設3年でツーリングカーの新たな“グローバル・スタンダード”として瞬く間に成長を遂げた「TCRシリーズ」が、今度はBTCCイギリス・ツーリングカー選手権という伝統と人気に支えられたカテゴリーの存在するイギリスで、新たな選手権を発足させるプランを持っていることが明らかになった。
TCRシリーズの代表を務め、選手権の仕掛け人としても辣腕を振るう元WTCC世界ツーリングカー選手権ディレクターのマルチェロ・ロッティは、2リッター直噴4気筒ターボを使用するTCRのコンセプトをイギリスでも展開するよう、各方面から強い要望を集めていると明かした。
「我々はいくつかの異なったグループから、UKでのTCRシリーズ設立の要望を受けている」とロッティ。
「2018年より前に具現化することはないと考えているが、それは決して2017年に実行することが不可能である……という意味ではない」
TCRは2015年にワールドワイドな国際シリーズとして『TCRインターナショナル』を最高峰に据えスタート。その半年後にはアジア・シリーズがラウンチした。2016年にはドイツ、イタリア、スペイン、ポルトガル、ロシア、タイでの国内選手権に加え、ベネルクス等のリージョン(地域)シリーズも立ち上がるなど、世界全域で普及している。
そして2017年早々には、ウインターリーグ制の中東シリーズもスタート。そして長年独自規格を保持してきたSTCCスカンジナビアン・ツーリングカー選手権も、新たにTCR規格を採用して生まれ変わることが発表されている。
ドイツとベネルクスの選手権は、TCR単独のシリーズとして運営されているが、そのほかの選手権はおおむね、すでに確立された人気選手権との併催として週末のイベントに組み込まれていることがほとんどだ。
「我々は人気シリーズと同時開催で成功を収めてきた。そうできない理由は見当たらない。彼ら(BTCC)が信任状を持っていれば、我々はいつでもその権利を行使することができるだろう」
ただし、BTCCとTCRというふたつの選手権は、非常に似通った成り立ちを持っていることも事実。プロダクションモデルの骨格を有し、GT3のようにBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)で性能調整を施すTCRに対し、BTCCは専用の共通サブフレームを有し、さらに競技に特化したダイナミクス性能を持つとはいえ、双方ともに2リッター直噴4気筒ターボを使用することに変わりはない。
「彼ら(TCR・UK設立希望団体)が我々に電話をしてきた際に、私が最初に言ったことは『よくよく考えて欲しい、イギリスには素晴らしいツーリングカー選手権(BTCC)がすでに存在している。それでも別のツーリングカー選手権のためのスペースを生み出す努力をするのかい?』だったよ」
「しかし、BTCCはチームのためにチームが主体となって運営され、ファンがそれを支えている。一方で、TCRはカスタマーのための選手権であり、参加するユーザーが最大の対象だ。おそらく(BTCCとTCRは)お互いに協力することは可能だろう」