2016年12月15日 10:12 弁護士ドットコム
式場選びなど、結婚にまつわるさまざまな情報を発信している結婚情報誌「ゼクシィ」。その厚さと重量から、ネットでは、「凶器になるのではないか」と思いもよらぬ注目を集めている。
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12月中旬には、東京女子プロレスに所属する滝川あずささんが、試合中にゼクシィで相手選手を攻撃している様子がツイートされ、「ゼクシィは凶器になる」「死人が出ないことを祈ります」などと危惧する声が寄せられた。
ゼクシィの実物はどのくらい重いのか。2017年1月号の首都圏版を購入し、重さを量ってみると、重量は約2.5キロ。ふろくを含めると3.5キロほどになる。手に取るとずっしりとした重みを感じる。硬い背表紙を振り下ろされたら相当な衝撃があるだろう。
もし、カップル同士のケンカなどで、近くにあったゼクシィでとっさに彼氏を殴り倒してしまったら、相手が死亡しなくても「殺人未遂」に問われる可能性はあるのか。西口竜司弁護士に聞いた。
一般的に、殺意の認定で考慮すべき事情として、凶器の種類、凶器の用法、創傷(ケガ)の部位、創傷の程度、動機の有無などが挙げられます。
したがって、本人が殺意を否定していたとしても、これらの事情から考えてもどう考えても殺す意思があるとしかいいようがない場合、殺意が認められます。常識的な判断がなされることになります。
一般的に書籍といえば文庫本等を想定されるかもしれません。こういうものを凶器にしても、通常人は死亡しないでしょう。
ただし、ゼクシィは本体が2.5キログラムということは、ちょっとした石くらいの重さがあります。凶器として殺意を全く否定するものにはならないでしょう。
ただし、あくまで書籍にすぎないので、物凄い力のある人間が繰り返し殴らないとならないでしょう。基本的には、用法として殺意を認定することは難しいかと思います。
また、創傷の部位についても、鈍器によって死亡する可能性のあるのは後頭部だと考えられます。こうした部位以外であれば、殺意を認定することは難しいと思います。
以上のようなことからすると、「もの凄い怨恨で『ゼクシィ』の角を被害者の後頭部に何度も打ち付けた」という事情のない限り、殺意を認定するのは難しいかと思います。
もし被害者が死亡するような事態になったとしても、通常は傷害致死罪にとどまると考えられます。
それにしても、「ゼクシィ」いう幸せな本を使って殴るというのは、あまり聞きたくないですね。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
西口 竜司(にしぐち・りゅうじ)弁護士
法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。
事務所名:神戸マリン綜合法律事務所
事務所URL:http://www.kobemarin.com/