2016年12月13日 18:42 弁護士ドットコム
お笑いコンビ「NON STYLE」の井上裕介さん(36)が12月11日午後11時45分ごろ、東京・世田谷区内で乗用車を運転中にタクシーと衝突し、運転手に全治2週間のケガを負わせたまま逃走したことが報じられた。
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報道によると、井上さんは午後11時45分ごろ、東京・世田谷区の路上で、左隣を走っていたタクシーを追い越して車線を変更しようとした際、タクシーの右前部と井上さんの車の左後部が接触し、タクシー運転手が全治2週間のけがを負った。井上さんはそのまま走り去ったという。
井上さんは警察の調べに対し、「前に入ろうとしてぶつかった。事故を起こしたことが世間に知られたら大変なことになると思った」と事故後に逃走したことを認めているという。所属事務所を通じて「その場でよく確認すべきところを怠ってしまい、被害者の方には大変申し訳ありません。誠意をもって対応してまいりたい」と謝罪した。
報道では「当て逃げ事故」などの見出しで報じられているが、実際はどのような罪にあたる可能性があるのか。佐藤大和弁護士に聞いた。
自動車を運転し、不注意で人に怪我をさせてしまった場合、過失運転傷害罪(自動車運転処罰法5条)が成立します。
また、事故を起こした後に、救護せずに、その場から立ち去った場合には、道路交通法上の救護義務違反が成立し、警察に連絡をしなかった場合には、報告義務違反が成立します。
今回、井上さんは、ニュースを見る限りですが、過失運転傷害罪(自動車運転処罰法5条)や道路交通法上の救護義務違反などの疑いで捜査がされているようですね。
もっとも、報道では、メディアの取材に対して警察は「井上さんは、当てたのを知っていて逃げた」と回答し、井上さんの所属事務所は「井上さんは、接触したかもしれないと認識していたが、事実確認をせずに帰宅」とし、警察からの連絡で初めて事故が分かったとしています。
実は、これは大きな違いがあります。もし警察の回答のとおり、当てたことを知っていて逃げたのであれば、救護義務違反や報告義務違反が成立する可能性があり、怪我の重さや示談の経緯にもよりますが、執行猶予付きの懲役刑の可能性もゼロではありません。
他方、所属事務所の回答のとおり、もし警察からの連絡で初めて事故が分かったということであれば、これからの取り調べの内容次第ではありますが、過失運転傷害罪だけが成立し、被害者との示談経過によっては不起訴もありえます。
これは、井上さんの芸能活動にも大きな違いがあります。芸能人はイメージ商売であり、前者であれば「逃げた」イメージが強くなり、さらに前科もつく可能性もあります。そうなると、メディアもスポンサーとの関係もあり、今後、井上さんを番組に起用しづらくなります。
ところで、これから年末特番の時期となります。井上さんは、撮影済みの番組や映像は差し替えになり、今後の出演番組は、冠番組であっても出演自粛となるでしょう。
こうなってくると違約金という話もあります。CM出演は契約書があるため、違約金の話になる場合があります。
しかし、テレビ出演する際には、契約書がない場合が多く、違約金ではなく損害賠償うんぬんという話になりやすいといえます。もっとも、井上さんの所属事務所の影響力の強さから、所属事務所が各方面に謝罪することで、穏便に済ますと思います。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
佐藤 大和(さとう・やまと)弁護士
代表弁護士。『グッドパートナー』『緊急取調室』など多くのドラマの法務指導・監修。毎週月曜「バイキング」(フジテレビ)にレギュラー出演。エンタテインメント分野に強く、多くの芸能事務所・タレントの顧問弁護士をしている。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/