2016年12月13日 11:02 弁護士ドットコム
仮面ライダーシリーズに出演していた俳優・松田悟志さんが、妻のスカート内をスマートフォンで盗撮した容疑者を捕まえて、警察に引き渡すという事件があった。松田さんはツイッターで、ライダーキックを含めて「一切の打撃」を加えず、取り押さえたことを報告している。
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松田悟志さんは2002~2003年に放送された『仮面ライダー龍騎』(テレビ朝日系)に仮面ライダーナイト・秋山蓮役として出演した。今年12月7日、京都府の商業施設内で、松田さんの妻のスカート内をスマホで盗撮した男性を約100メートル追いかけて、駐車場で取り押さえた。
取り押さえられた男性は京都府警に引き渡され、府迷惑行為防止条例違反(盗撮)の疑いで逮捕された。報道によると、警察に調べに、男性は「衝動にかられてやった」と容疑を認めたという。
松田さんはツイッターで次のように報告している。「僕は一切の打撃を加えることなく取り押さえましたので、容疑者も僕も多少の擦り傷はありますがほぼ無傷です。走りながら背後から組みついたので転ばせる形にはなりましたが、かなりいたわりました」
今回のように、一般人でも容疑者を捕まえることができるのはどんな場合なのか。捕まえる際に注意すべき点はあるのか。伊藤諭弁護士に聞いた。
「現行犯は、今まさに罪をおこなう人、または今まさに罪をおこない終わった人をいいます。何人も、逮捕状がなくても逮捕することができます(刑事訴訟法213条)。法律上、『何人も』とあるとおり、一般人でも現行犯逮捕できます。これを私人逮捕といいます」
注意すべき点はあるのだろうか。
「一般人が現行犯を逮捕したときは、すみやかに司法警察職員などに引き渡さなければなりません(同214条)。
また、逮捕するにあたって、現行犯にまったく手を触れてはいけないというのは、現実的でありません。そもそも逮捕というのは実力による身体の拘束ですので、当然にある程度の『有形力』の行使が予定されています。
東京高裁は『現行犯人(現行犯)から抵抗を受けたときは、逮捕しようとする者は、警察官であると私人であるとを問わず、その際の状況からみて社会通念上逮捕のために必要かつ相当であると認められる限度内の実力を行使することが許され、たとえその実力の行使が外形上は刑罰法令に触れていても、刑法35条により罰せられないものと解するのが相当である』(平成10年3月11日判決)と判断しています。
したがって、逮捕のために許される限度を超えた実力を行使した場合、暴行罪や傷害罪などの罪に問われる可能性はあります」
今回の松田さんのケースはどうだろうか。
「正確な状況は不明ですが、逃げる男性の身柄を確保するために『走りながら背後から組みついたので転ばせる形に』なった程度であれば、十分許される程度の実力行使だと考えます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
伊藤 諭(いとう・さとし)弁護士
1976年生。2002年、弁護士登録。横浜弁護士会所属(川崎支部)。中小企業に関する法律相談、交通事故、倒産事件、離婚・相続等の家事事件、高齢者の財産管理(成年後見など)、刑事事件などを手がける。趣味はマラソン。
事務所名:市役所通り法律事務所
事務所URL:http://www.s-dori-law.com/