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テレ朝アナ「職場不倫」発覚…同僚の「秘め事」を知ったらどうしたらいい?

2016年12月13日 11:02  弁護士ドットコム

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またも文春砲が炸裂した。12月7日発売の「週刊文春」は、テレビ朝日の人気女性アナウンサーと、同僚の男性アナが不倫関係にあると証拠写真とともに掲載した。記事によれば、女性アナは独身だが、男性アナは既婚。職場で、2人がオンエア中にもいちゃいちゃしていて、「アイコンタクトを送りあっている」など、その関係は噂になっていたようだ。


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この記事が掲載され、「うちの会社のあの2人はどうなのか」と気になった人もいるのではないだろうか。その1人、東京都内のIT系企業に勤める女性会社員(36)は、かつての職場で見た光景を思い出したという。「40代の既婚男性と、20代の女性社員が、濃厚なアイコンタクトをしたり、忘年会の二次会を終えた後、2人で夜の街へ消えていく現場を目撃したんです」と話す。



他の同僚らと「あの2人、絶対に不倫だよね」と言い合っていたそうだ。「既婚男性は、人事権がある人なので、浮気相手を評価しているのではないかなど、不満もありました。でも逆恨みされたくないので、黙っていました」と話す。2人の前では、気づいていないふりをするのも面倒で、同僚たちは皆、その不倫カップルに対して、ストレスを感じていたという。



職場での不倫。当事者は良くても、同僚には迷惑に感じられるはずだ。法的にはどのような問題があるのか。このような2人がいる場合、同僚はどんな対応をするべきなのか。また、証拠集めをしたら問題になるのだろうか。須山幸一郎弁護士に聞いた。



●「社内不倫」の法的な問題は?


「いわゆる『社内不倫』の問題ですね。まず、『不倫』は多義的な用語ですが、一般的には、配偶者のある男女が、配偶者以外の異性と恋愛関係・肉体関係を持つことを言います。



社内不倫の法的問題は、『(1)当事者間の問題』のほか、『(2)会社と当事者の問題』が生じることに特色があります。



まず、『(1)当事者間の問題』については、不倫をされた配偶者は、不倫相手及び不倫をした配偶者に対し、不法行為に基づく慰謝料請求ができます。不倫相手と不倫をした配偶者は、『共同不法行為者』として、不倫をされた配偶者に対し連帯債務を負います」



掲載されたテレビ朝日アナウンサーの事例でいえば、報道が仮に真実であるとすれば、既婚の男性アナウンサーの妻は、夫と不倫相手の女性アナウンサーの双方に対して、慰謝料請求ができる。慰謝料を支払う義務は、女性アナウンサーだけでなく、夫にもあるのだ。



「ただし、慰謝料が認められる『不倫』とは、一般的には肉体関係を持った場合に限られています。肉体関係のない、恋愛関係に留まっている段階では、慰謝料は認められないか、認められても低額となります」



●不倫は「従業員の私生活」の問題?


「(2)会社と当事者の問題」については、どのように考えられるだろうか。



「不倫であれ、恋愛であれ、従業員の単なる私生活上の行為であり、会社の業務と直接の関係はありません。職場の同僚が、不倫を迷惑に感じているとしても、会社は、それだけで懲戒処分を下すことは一般的には出来ません。


会社の風紀・秩序を乱し、その企業運営に具体的な影響を与えた場合に限って、不倫は懲戒の理由になるという判例もあります(「繁機工設備事件」旭川地判、平成元年)」



会社との関係でいえば、不倫関係が職場に与えた影響を総合的に考慮して、ケースバイケースで判断されることになるのだろう。



●会社に報告してもいい?


では、同僚の不倫を知ってしまった場合、人事部やコンプライアンス委員会に報告するなど、何らかの対応が必要なのだろうか。



「先ほど、お話したように、基本的には不倫も当事者の単なる私生活上の行為に過ぎず、報告する義務はありません。まずは、当事者双方に対し、関係を断つよう忠告する程度しかできないでしょう。



ただし、業務に支障が出たり、関係が職場の風紀・秩序を乱すような状態となっているような場合には、上司や人事部等のしかるべき部署に相談してみましょう。会社としては、当事者の上司から口頭注意を行ったり、配置転換により、片方又は双方を異動させるといった対応が考えられます」



●同僚は「不倫の証拠」を集めてもいい?


同僚の不倫を勘づいた人が、わざわざその不倫について、積極的に証拠を集めることに、法的な問題はあるのだろうか。



「不倫をされた配偶者は、自己のために証拠の収集が必要です。しかし、同僚にとっては、当事者同士の単なる私生活上の行為に過ぎず、何の目的で証拠を集めるのか、というそもそもの問題もあります。その証拠集めの手法によっては、当人らからプライバシー侵害として訴えられたリ、関係のない第三者に公開すると名誉棄損と主張されたりするおそれもあります。



あまり他人の私生活には立ち入らないことをお勧めします。職場は、会社のために仕事をする場所ですので、同僚の不倫の証拠集めをする時間があるなら、ご自分の本来の職務に専念しましょう」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
須山 幸一郎(すやま・こういちろう)弁護士
2002年弁護士登録。兵庫県弁護士会。元神戸家裁非常勤裁判官(家事調停官)。三宮の旧居留地に事務所を構え、主に一般市民の方を対象に、法律相談(離婚・男女問題、相続・遺言・遺産分割、借金問題・債務整理等)を行っている。
事務所名:かがやき法律事務所
事務所URL:http://www.kagayaki-law.jp/