人手不足が依然として深刻だ。求人サイトdodaによると、11月の転職求人倍率は全業種で高く、24ケ月連続で最高値を更新。特にIT・通信の技術系は8.20と特に高い。(文:okei)
そんな中、あるツイッターユーザーのこんな辛辣な批判ツイートが話題になった。
「最近は中途採用向けの合同企業説明会を回ってるんだけど、募集内容が『技術を持っていて客先での要件定義もできる即戦力』という『氷河期世代を冷遇したら定年間際の高齢者と新卒社員だけになった会社』だらけで笑うしかない。虫が良すぎませんかね?」
その上で「ハードウェアでもソフトウェアでも日本の凋落が顕著ですなあ。主力になるはずの世代を見捨てたもんなあ!」と冷笑している。
「自分のところでの人材育成は放棄したくせに」
これに対し、「うちの会社のことか」と身につまされる人、就活時代の怒りを再燃させる人など多くの反響があり、一連のツイートはトゥギャッターにもまとめられた。
「これ本当にそうで、中間層がゴッソリ抜けているので会社に大量のおじいちゃんと新卒しかいない。おじいちゃんは新卒君に仕事を教えることができないので仕事は30歳くらいの派遣社員に教えてもらうしかない」
「工業系の人から『氷河期世代切り捨てて技術継承出来なくなって、今死にかかっている会社だらけ。お前の業界もきっとこうなるぞ』と言われたのを思い出した…」
などと、危うさを語る声が少なくない。もちろんこんな恨み節も多い。
「自分のところでの人材育成は放棄したくせに、よそが手放したのを、安く手に入れようとし、しかもフルスペックを要求する……おめでたいようなぁ」
中には、IT業界は技術の更新が早すぎて古い知識や経験値は役に立たず、「技術継承されなくても問題ないのでは」という意見も見られた。しかし、「小手先の問題じゃなく、足りないのはエンジニア」「これ何もSI屋(システムインテグレーション企業)だけじゃない。もぅ全体的にだよ」という、日本企業全体の課題だという指摘はもっともだ。
手に職をつけた人たちにとっては「35歳の壁」がなくなりつつある
問題の「就職氷河期」は、バブル崩壊後の1993年から2005年までと、リーマンショックが引き金となった2010年から2013年といわれる。景気の低迷で企業は新卒採用を控え、この時期に就職活動をした学生は泣く泣く非正規雇用に甘んじた人も多い。現在の、25歳から29歳、34歳から46歳がその「世代」にあたり、ロストジェネレーション(失われた世代)とも呼ばれている。この世代を「冷遇」したことによって、企業にとって中核を担うべき人材が、今になって決定的に不足するという事態に陥っているのだ。
新人が入る会社はまだいい。ツイートには、自分の後に採用がなく後継者が育たず、職場は高齢化したまま定年前後の人が辞めていく悪循環を語り、「このままじゃ10年先につぶれる」と危機感を募らせる人も。これは多くの日本企業、ひいては日本の姿そのものを映しているようで不安になる。
一方で、「そのかわり手に職をつけた人たちにとっては『35歳の壁』がなくなりつつある」という指摘もあった。しっかり技術を持っていれば、転職で年齢が障害にはならないということだ。上の世代がずるいと言ったところで過去は変わらない。企業が人手を求めている今をチャンスに変えるどうかは自分次第ではあるが、どこか納得いかないものは残るのだった。