トップへ

欧州で「ルービックキューブの形状」商標の無効判断ーー日本ではどうなっている?

2016年12月12日 10:52  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

欧州司法裁判所(European Court of Justice・ECJ)が11月10日、立体型パズル「ルービックキューブ」の製造メーカーが保有するルービックキューブの形状に関する商標を無効とする判断を示したことを海外メディアなどが報じた。


【関連記事:18歳男子と16歳女子 「高校生カップル」の性交渉は「条例違反」になる?】


報道によれば、ECJは、回転する機能をもたせる技術的な工夫が取り入れられた内部の仕組みについて、特許権は付与されうるが、商標として保護されるものではないとして、形状に関する商標を無効とした。


ルービックキューブの製造メーカーである英国の「ルービックス・ブランド」社が1999年に、形状を立体商標として登録したことに対し、ドイツ「シンバ・トイズ」社が2006年に訴えを起こした。


ルービックキューブは、ハンガリー人建築家のルビク・エルノー氏が1974年に考案。1977年にハンガリーの「ポリテクニカ」社から発売となった。その後、米国の「アイデアル・トイ」社が販売権を獲得し、世界中での爆発的なヒットとなった。


今回の判断でどのような影響があるのか。日本においてルービックキューブをめぐる権利関係はどうなっているのか。知的財産の問題に詳しい大熊裕司弁護士に話を聞いた。


●日本が直接的な影響を受ける可能性は?

「今回の判決は、欧州司法裁判所によるものであり、無効となった立体商標の登録も欧州におけるものです。


この判決が、直ちに日本が直接的な影響を受けるということはありません。『属地主義の原則』(その国の領域内のみ法律の適用を受ける原則)があるからです。


欧州連合共同体商標に関する理事会規則7条(1)(e)(ⅱ)では、『技術的成果を得るために必要な商品の形状のみからなる標識』については登録できないとされています。


ECJは、商標法によって、製品の技術的解決法、または機能的特性が独占されることを避けるためであると指摘し、登録を無効としました」


●そもそも、「特許」と「商標」はどう違う?

今回の判決では、特許としては保護されうるが、商標としては保護されないという判断を示している。両者はどう違うのか。


「簡単に言えば、特許権が保護するのは『アイデア』で、商標が保護するのは商品名やロゴ、記号です。立体的な形状も保護されます。日本では、ペコちゃん人形やホンダの『カブ』などが立体商標として登録されています。


一般的に、特許権は取得してから一定期間がすぎると消滅します。一方で、商標はいったん登録されると、更新を繰り返すことによって永続的に保持することができます。


日本では、特許権は出願から20年が経過すると原則として消滅します。一方で、商標は設定登録日から10年ですが、更新により継続することができます」


日本での「ルービックキューブ」はどうなっているのか。


「日本国内における『ルービックキューブ』の商標権(第1635953号、第4880431号他)は、株式会社メガハウスが有しています。立体商標について、3×3面の立体パズルおもちゃとして、海外のセブンタウンリミテッド社が2016年の6月3日に登録しています(第5855350号)。


『ルービックキューブ』の名称を使用して廉価版を販売すれば、商標権侵害に問われることになります。また、ルービックキューブとは別名であっても、同様の形状のおもちゃを販売すれば、セブンタウンリミテッド社の立体商標を侵害することになりますので、注意が必要です」


【12月13日時訂正】当初日本国内においては、ルービックキューブは立体商標として登録されていないと記述していましたが、セブンタウンリミテッド社が登録されていましたので(第5855350号)、「日本での『ルービックキューブ』はどうなっているのか。」以降の内容を大幅に修正いたしました。読者の皆様に心よりお詫び申し上げます。


修正前の記事は以下の通りです。


>>>>>>>>>>>>


日本での「ルービックキューブ」はどうなっているのか。


「日本国内における『ルービックキューブ』の商標権(第1635953号、第4880431号他)は、株式会社メガハウスが有していますが、立体商標に関しては、今のところ登録されていません。


日本では、商標法の4条1項18号において、『商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるものである』商標は登録できないとの規定があります。


ですから、『ルービックキューブ』の形状が本号に該当すると判断されれば、今後も立体商標として登録されることはないということになります。


『ルービックキューブ』の形状についても、日本国内では、特許権・意匠権ともに残っていないようです。


著作権法における保護も考えられますが、『ルービックキューブ』は立方体の各面に色をつけただけの単純なものです。創作性が高いとは言いいがたいので、厳しいのではないかと思います」


では、日本で「ルービックキューブ」の名称で商品を販売しても問題ないのか。


「そうとはいえません。従来型の『3×3のルービックキューブと同様の形状をした商品』を販売することはただちに商標権侵害などの権利侵害にあたりませんが、『ルービックキューブ』の文字商標は、株式会社メガハウスが有しています。


『ルービックキューブ』の名称を使用して廉価版を販売すれば、商標権侵害に問われることになりますので、その点には注意が必要です」


(了)


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
大熊 裕司(おおくま・ゆうじ)弁護士
第一東京弁護士会所属弁護士。家事事件、消費者問題、知的財産関係、インターネット問題(ネット上の名誉毀損、誹謗中傷対策など)を中心に扱っている。
事務所名:虎ノ門法律特許事務所
事務所URL:http://www.toranomon-law.jp/