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FlowBackが3周年イベントで体現した、ポップミュージックの刺激と冒険

2016年12月11日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『FlowBack 3rd Anniversary Live』の様子。

  「3周年ということで、僕たちのやりたいことを詰め込んだライブにしたい」。MC中にTATSUKIがそう語った通り、「作家性の高いダンスボーカルグループ」という、この5人の魅力が様々な角度から詰め込まれたライブだった。


 2013年の結成以降、作詞作曲、振り付け/構成、スタイリング、グッズ制作に至るまでを各メンバーがプロデュースする活動で人気を集め、2016年5月にインディーズ1stシングル『AfterRain』をオリコンウィークリー16位(デイリー4位)に送り込むと、同年9月にはクリエイティブ集団・Digz Inc. Group のHIROをサウンドプロデューサーに迎え、『Come A Long Way』でメジャー・デビューを果たした5人組ダンスボーカルグループ、FlowBack。12月7日に発売されたばかりの最新シングル『Heartbreaker』のリリースを前にした11月26日、彼らの結成3周年を祝う『FlowBack 3rd Anniversary Live』が開催された。


 まずは5人が登場してブルーノ・マーズの最新作『24K Magic』のタイトル曲「24K Magic」をBGMにオープニング・ダンスを披露すると、ここからはFlowBackと所縁のあるシークレット・ゲスト3組が3周年を祝福。ユーモア満載のパフォーマンスで盛り上げた天才凡人、六本木Morph-Tokyoでの初共演を振り返ったPrizmaX、セクシーな女性ボーカル/ラップとEDMやトラップで会場をブチ上げたlolは、FlowBackとのエピソードを披露しながら熱演を繰り広げ、会場はすべての出演者にとってもホームのような雰囲気だった。


 FlowBackのステージは、その熱気を引き継ぐ形で、これまでの道のりに思いを馳せる「Come A Long Way」でスタート。2ステップ/UKガラージ譲りのビートにダブステップ特有のワブルベースを加えた楽曲で早速会場を沸点に持っていくと、以降も80年代風シンセとJUDAIのラップが印象的な初披露の新曲「Young Love」やトロピカル・ハウス調の「AfterRain」など、粒揃いの楽曲で彼らの世界観に引き込んでいく。


 メンバーが作曲を担当し、セレーナ・ゴメスやマイリー・サイラス、嵐、東方神起などに楽曲提供をするアフターロミオのようなボーイズグループが海外にも存在するが、FlowBackの音楽はそれ以上にストリートに根差した感覚があり、ヒップホップやR&B、トラップ、EDM/クラブ・ミュージックなどが境目なく溶け合う現在のポップ・シーンの魅力が詰まっている。ジャスティン・ビーバーが作家性を追究した15年作『パーパス』や、カシミアキャットらを迎えたアリアナ・グランデの諸作、もしくはトラップなども取り入れるケラーニや三浦大知のようなアーティストと同じように、その楽曲にはポップ・ミュージックとしての刺激的な冒険がある。


 リーダーのTATSUKIが担当するキレのある振り付けやライブの構成の妙も、楽曲の魅力をより広げる役割を果たしている。5人揃ったダンスを披露しながら、ラップを繰り出すJUDAIまでもが安定したピッチでボーカルを担当し、80年代風のシンセが失恋の痛手をきらびやかなポップ・ソングに変える彼らの新たなキラー・チューン「Heartbreaker」では、FlowBackの文字をあしらった台を使い、5人のフォーメーションを立体的に見せる演出で会場が沸騰。一転、結成当初から大切にしてきた「落ち葉」では椅子に腰を下ろし、生のアコースティック・ギターと共にそれぞれの歌声に焦点を当てていく。ヒップホップR&B由来のビートに甘いメロディが合わさった「Be Mine」では、ファンと一緒に振り付けで盛り上がるなど、ダンスや構成、観客とのコール&レスポンスまで様々な要素が「楽曲を生かすため」に考え抜かれ、3年間で手にした5人の多彩な表情を伝えるようだった。


 実際、MCではメジャー・デビュー以降初めてのアニバーサリーイベントとなったこの日を機に、メンバーが3年間の思い出を振り返る。


 「ただ歌って踊るだけじゃなくて、今まで生きてきた中で感じたことを曲に込めて伝えるのがFlowBackの在り方だと思っていて。今まで色んな人たちに笑われてきて、『ふざけんな』という思いで書いたのが『SHAKE THE WORLD』だし、失恋して夜中にノートに殴り書きするように書いた曲もあるし、もちろん、ファンのみんなに向けて作った歌もあるし。この先も、自分たちの思いをひとつひとつの作品に込めて、伝え続けていきたいと思います」(MASAHARU)。


 「僕達結成当初は、本当にお客さんがゼロだったんですよ。本当にこの5人しかいなくて、不安しかなかったし、この先何をすればいいのかも分からなかったし。でも、だからこそ俺たちは、自分たちで曲を作って、振りが出来る俺は振りを付けて、今では『セルフプロデュース』って言ってもらえるような、誇れるものを見つけることが出来ました。その過程で出会ってきたみんなが自分たちが頑張ってきたことの証だと思うし、(中略)みんなと一緒に歩んでいると思ってます」(TATSUKI)。


 本編終演後には3rdシングル、ファースト・アルバム、ワンマンライブの予定もアナウンスされ、会場を温かい拍手が包む。大歓声に応えて登場したアンコールは「Wake Me Up」で盛り上げた後、自らの名前を冠した「FlowBack」でステージを終えた。


 近年はここ日本でも、それぞれの方法でポップ・ミュージックを表現するダンスボーカルグループが増えているが、音楽表現にまつわる360°すべてに自分たちのこだわりを反映させ、ここまで高いパフォーマンスを見せてくれるグループはそうはいない。そして、それでいてシリアスなだけではないメンバーのMCやエンターテインメントを様々な角度から提示する開かれた雰囲気が、FlowBackを何より特別なものにしているように思える。これまでの歩みを支えてくれたファンとの絆を確かめると同時に、メジャー・デビューを経てさらにシーンの中心へと歩みを進める5人の充実した今が伝わってくるようなライブだった。(杉山 仁)