『YOSHIKI CLASSICAL SPECIAL WORLD TOUR 第二弾』よりピアノを弾くYOSHIKI X JAPANのYOSHIKIが8日、『YOSHIKI CLASSICAL SPECIAL WORLD TOUR 第二弾』の日本公演を終えた。YOSHIKIは、年明けに開催される2017年1月の米・カーネギーホール公演を控えているが、同ホールでの公演はYOSHIKIの「夢」である。その夢が叶う前哨戦とも言える今回の日本公演には多くのファンが来場し、YOSHIKIの奏でる壮大で美しく繊細な音楽に酔いしれた。
さらには、YOSHIKI自身の口から語られたそれぞれの楽曲への思い、これまでの壮絶な道のりに、客席を埋め尽くした数千のファンが共鳴、涙し、会場はさながらYOSHIKIという信仰の対が治めるカテドラルのようになった。
【この記事の他の写真を見る】 コンサート冒頭、YOSHIKI本人の登場を前に、ステージ後方の巨大スクリーンにはYOSHIKIのインタビュー映像が流された。
「10歳の時に父を亡くし、そこから僕の人生は変わってしまったのです」
流暢な英語でどこか一点を見つめるように語るYOSHIKI。
その後もスクリーンには、YOSHIKIが歩んできたこれまでの道のりが赤裸々に映し出された。会場は水を打ったように静まり返り、客席を埋め尽くす誰もが、呼吸をするのも憚られるような気持ちで、ただその壮絶なYOSHIKIの人生を見つめていた。
やがて静かにYOSHIKIがステージに現れた。
控えるオーケストラをバックに、ステージ中央に置かれたグランドピアノに向かいYOSHIKIの指先が奏で始めた。
演奏された曲目は、オーケストラバージョンにアレンジされた『KURENAI』『Forever Love』『Tear』」などのX JAPANの代表曲たち。そしてドキュメンタリー映画『We Are X』のために書かれた新曲『La Venus』も披露された。
『La Venus』の演奏前、YOSHIKIがドキュメンタリー映画『We Are X』を制作するまでの過程について語った。
『We Are X』制作のオファーを受けたのは、実はずいぶん前のことだという。だが当時のYOSHIKIにとってX JAPANのこれまでを映像化することは
「自分たちが歩んできた道のりがあまりにも壮絶すぎて(映像化は)到底受け入れられるものではありませんでした。」
という。
その後、何年にも渡って『We Are X』の制作について説得を受け続けたというYOSHIKI。
あるとき
「自分たちのこれまでを知ってもらうことで、誰かを勇気づけられるかもしれない。誰かの人生を救うことが出来るかもしれない。」
と思い至ったと明かした。
その後、時に静かに時に激しくYOSHIKIによって奏でられた『La Venus』は、冒頭スクリーンで流されたYOSHIKIの過去の映像を鮮明に聴く者の脳裏に再現させた。
YOSHIKI自身が「今日はテーマ曲ばっかりになってしまって」と言うように、1999年天皇陛下御即位10年奉祝曲『Anniversary』や、2005年日本国際博覧会「愛・地球博」公式イメージソング『I’ll Be Your Love』、2012年および2013年ゴールデングローブ賞テーマ曲『Golden Globe Theme』など、これまで彼が発表してきた壮大なスケールの楽曲たちが奏でられた。さらには「僕の書いた楽曲ではないですが」として、YOSHIKI自身が幼いころから強く影響を受けたというチャイコフスキーの『白鳥の湖』も演奏された。
しかし、この日のコンサートで最も印象深かったのは、今は亡きHIDEに贈った『Without you』であった。『Without you』の演奏に入る前、当時の思いをYOSHIKIが静かに語りだした。
YOSHIKIが楽曲を制作するとき、一切の楽器を使わずにドラムを含めた全てのパートを直接譜面に書き込むというのは有名な話である。
「『Without you』を書き上げてしばらくして、いざ実際にピアノに向かって演奏をしようとすると、溢れ出る涙で指が鍵盤の上を滑ってしまい演奏することが出来なかったのです。」
そう明かした後、『Without you』を奏で始めたYOSHIKI。その横顔がステージ後方の巨大スクリーンに映し出された。涙は見えない。が、その表情からYOSHIKIの心のなかの慟哭は、その場にいたすべての人の耳に届いていた。
そしてクライマックスとなった『Endless Rain』。
「歌っていいよ! ただし最後の部分だけだよ!」
そう笑顔で客席に声をかけ、観客が一体となった名曲『Endless Rain』の大合唱。通常このようなシーンはクラシックコンサートでは到底見ることができない。ファンが合わせ歌う声は一部のずれもなく美しく共鳴した。YOSHIKIと彼を心から愛するファンだからこそ実現した美しいシーンであった。
カーテンコールになると客席からファンが一気にステージに駆け寄った。
「いつもはドラムだから、僕はステージの後ろの方にいて、みんなとこんなに近くで接することは珍しいから本当に嬉しい」
そう語ったYOSHIKIに向かって伸ばされる数千ものファンの手。そのひとつひとつとYOSHIKIが差し伸べた手がしっかりと繋がれているのが感じられた。
演奏の合間にYOSHIKIの口からは何度も
「ファンのみんながいてくれたから」
「ファンのみんなが支えてくれる」
「これからもファンのみんなのために」
という言葉が聞かれた。
YOSHIKIのインスタグラムには、実際に会場に足を運んだ人々からの感想が多数届いている。「とにかく、素晴らしかったです。一音一音が切なくなるほど繊細で、涙と感動の渦に包まれました」「壮大な音楽と楽しいトークで楽しませて頂き癒されて幸せな時間でした」「YOSHIKIさんの演奏が美しすぎて、切なくて、でも優しくてあったかくて…心に響きました。とても素敵な時間をありがとうございます」など誰もがYOSHIKIの思いをしっかりと受け止めているのが分かる。
2014年、X JAPANとしてロックの殿堂「マディソン・スクエア・ガーデン」公演を成功させ、次に待つのは2017年1月12日、13日に開催されるクラシックの殿堂「カーネギーホール」での公演だ。
「僕の人生には悲しみが多すぎた」
「与えられた第二の人生でさらに素晴らしい音楽を作り続けていきたい」
そう語ったYOSHIKIの足はしっかりとステージを踏みしめ、視線はまっすぐ世界、そしてファンに向けられていた。
(TechinsightJapan編集部 村上あい)