2016年12月10日 09:42 弁護士ドットコム
これまで非合法だったカジノを解禁する「統合型リゾート(IR)推進法案」(カジノ法案)が衆議院で可決され、国会での成立が目前となっている。そんな中、ギャンブル依存症対策を考える緊急シンポジウムが12月9日、東京・永田町の参議院議員会館で開かれた。
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参加した各政党の国会議員からは、カジノだけでなく、既存のギャンブルへの対策も必要だという意見が多く出た。特に、ギャンブル依存症の8割を占めると言われる「パチンコ依存症」対策の重要性が語られた。
厚生労働省の研究班の調査によれば、ギャンブル依存症にかかっていると思われる人は、536万人にのぼると推計されている。国内の成人の約5%にあたる数字だ。
シンポジウムを主催した「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表は「世界最悪の罹患率だが、公営競技だけだったら、こんなに突出した数字にはならなかったはずだ。このギャンブル依存症は、8割がパチンコ・パチスロ依存症。パチンコというグレーゾーンのギャンブル、そのダブルスタンダードが認められてきたことが最大の問題ではないか」と指摘した。
民進党の初鹿明博・衆議院議員も「いままでこの国は、カジノがあるかないかにかかわらず、ギャンブル大国だった。世界の国の水準からすると、この国ほど『ギャンブルと言っていいもの』が蔓延している国はない」と述べ、次のように続けた。
「ギャンブルの問題はパチンコの問題と表裏一体で、避けて通れない。これをごまかし続けてきたことが、さまざまな対策の遅れとなっている。IRを進めていくなら、まず、この問題にケリをつけるのが重要ではないか。いま現実にいる依存症の方をどうするかを真剣に考えないといけない」
だが、パチンコ・パチスロは法律で「賭博」として認められているわけではない。「実態はギャンブルだ」と考える人も多いが、法律上は「遊技」(風営法)とされている。その点について、共産党の清水忠史・衆議院議員は「パチンコが『賭博』かどうかという議論があるが、定義づけにこだわる必要はない」と話す。
「公営ギャンブルの売上が年間6兆円くらいであるのに対して、パチンコ・パチスロの売上は23兆円で、規模が本当に大きい。パチンコの定義いかんにかかわらず、実際にパチンコ・パチスロの依存症になり、さまざまな問題が起きている。定義にこだわらず、パチンコ依存、ギャンブル依存の対策をしっかりやっていくのが大事だと思う」
それに対して、カジノ法案を推進してきたIR議連の副会長を務める小沢鋭仁・衆議院議員(日本維新の会)は、衆議院で可決された法案の「附帯決議」の意義を強調した。そこには、ギャンブル等の依存症対策を強化することが盛り込まれている。
小沢議員は「パチンコ・パチスロは一応、法的に『遊技』ということになっている。そこは、『ギャンブル等』とあえて『等』をつけた。パチンコ・パチスロも含めて考えますよということを書かせてもらった」と話し、パチンコ・パチスロの依存症対策も合わせて進める趣旨であると説明した。
ただ、附帯決議は法律そのものではなく、強制力があるわけでないので、その実効性を疑問視する声もある。カジノ法案に反対する民進党の初鹿議員は「附帯決議がその通り実施されるかどうかは、ほかの法律を見ていても、そんなにないと思う」と指摘していた。
一方、自民党の秋元司・衆議院議員は「IRを推進していくのであれば、そこで得た収益を依存症対策のためのお金として手当して、依存症にならないような対策の受け皿機関をしっかり作る必要性を強く感じる。それが、いまいる500万を超える依存症の人に手を差し伸べることにもつながっていく」と述べ、カジノ解禁と絡めたギャンブル依存症対策を提案していた。
(弁護士ドットコムニュース)