2016年12月10日 09:12 弁護士ドットコム
大学生が「飲み会」で酔わせた女性に性的暴行を加える事件が相次いでいる。11~12月には、千葉大医学部の男子学生らが集団強姦致傷などの容疑で逮捕された。泥酔した女性を介抱するふりをして、店内の目立たない場所で性的暴行に及んだ疑いなどがあるという。
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今年5月には、東大生らが女性を全裸にして、身体を触ったり、暴力をふるったりする事件が発生。慶応大でも、広告学研究会の男子学生から乱暴されたとして、女子学生から被害届が出されている。
暴行が許されないのは当然だが、暴行に関与していない、ただの出席者の責任はどうだろうか。目の前で性犯罪が起きたとき、止めなかったら罪に問われる可能性はあるのだろうか。中西祐一弁護士に聞いた。
ーー飲み会に参加していただけで、罪に問われることはある?
刑法では、次のような場合には、共犯者として罪に問われるとされています。
(1)「共同正犯」…他人と一緒に犯罪行為の一部でも実行した場合
(2)「共謀共同正犯」…何もしていなくても実行犯と犯罪の共謀をした場合
(3)「教唆犯」…実行犯に犯罪をそそのかした場合
(4)「幇助犯」…実行犯を助けた場合
これらに該当するかどうかがポイントです。飲み会に出席していただけで、性的暴行についての共謀に加わっていなかったり、犯人の手伝いなどをしていない場合は、罪に問われることはありません。
ーー性的暴行を見てしまったが、見て見ぬ振りをした場合は?
「何もしていない」場合であっても、犯罪を防止する法律上の義務を負っていた場合は、「不作為犯」として罪に問われるおそれがあります。
しかし、偶然、犯罪の現場に居合わせたというだけでは、道徳的には犯罪をやめさせる義務はあっても、法律上は、そのような義務は発生しないと考えられます。飲み会に出席していただけでは、やはり、罪に問われることはないと考えられます。
ーー被害者に酒を飲ませたが、性的暴行はしていない場合は?
被害者を酔わせ、抵抗できなくした上で性的暴行をすることは、準強姦罪という犯罪になります。
したがって、自身や友人が性的暴行をする目的でお酒を飲ませた場合は、準強姦行為の一部を行ったことになり、共同正犯として罪に問われることになります。これは本人が暴行に加わっていなくても成立します。
一方、そのような目的がなく、単にお酒を勧めただけの場合は、罪に問われることはありません。このように、偶然、性的暴行の現場にいたというだけでは、強姦罪などの罪に問われることはありません。
とはいえ、このような犯罪が発生すると、当然、被害者の方は心身ともに深い傷を負うことになります。また、加害者になる友人の人生も大きく変わってしまいます。このような犯罪をやめさせたり、警察に通報したりすることは、法律以前に一人の人間として当然の行為であると思います。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中西 祐一(なかにし・ゆういち)弁護士
金沢弁護士会所属。地元の方々の身近なトラブルの解決を目指し、民事・刑事を問わず幅広い分野の案件を取り扱っているが、その中でも、刑事事件には特に力を入れており、裁判員裁判や冤罪事件の国家賠償請求事件などにも積極的に関わっている。
事務所名:中西祐一法律事務所
事務所URL:http://www.nakanishi-law.net