2016年のMoto3クラスはブラッド・ビンダー(KTM)が第2戦アルゼンチンGPでランキングトップに立つと、チャンピオンシップをリード。第4戦スペインGPでは予選後のテクニカルチェックでマシンにECUソフトウエア違反が判明したため、決勝は最後尾グリッドからスタートとなるペナルティを受けたにも関わらず、決勝では先行する全車を交わしてグランプリ初優勝を達成した。
その後、ビンダーは第5戦フランスGP、第6戦イタリアGPと3連勝を飾り、チャンピオンシップを有利に進める。シーズン中盤は勝ち星から遠ざかったものの、第12戦イギリスGP、第13戦サンマリノGPと連勝してタイトル争いに王手をかけると、第14戦アラゴンGPでタイトルを確定。4戦を残してのタイトル確定は、1993年に世界グランプリが現行のポイント制度になってから最短でのタイトル確定となり、最終的にランキング2位に142ポイントの大差をつけた。
ランキング2位にはエネア・バスティアニーニ(ホンダ)が続いた。バスティアニーニは日本GPの1勝に止まり、負傷欠場を含めて3レースでノーポイントに終わったが、2位表彰台1回、3位表彰台4回を獲得。
ホルヘ・ナバーロ(ホンダ)はカタルニアGP、アラゴンGPと2勝を記録したものの、1回の欠場を含む8回のノーポイントが響き、ランキング3位に終わった。フランチェスコ・バニャーヤ(マヒンドラ)もオランダGP、マレーシアGPと2勝をマークしたが、ノーポイントレースも多く、ナバーロに5ポイント差のランキング4位となった。
ルーキーのホアン・ミル(KTM)はオーストリアGPで初優勝を達成。最終戦バレンシアGPを2位表彰台で締めくくり、ランキング5位でルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得。同じくルーキーのファビオ・ディ・ジャンアントニオ(ホンダ)はイタリアGPとオランダGPで2位、チェコGPで3位表彰台を獲得、ミルに10ポイント差のランキング6位となった。
同じくルーキーのニッコロ・ブレーガ(KTM)は第4戦スペインGPではグランプリ初ポールポジションを獲得し、2位入賞を果たした。終盤の日本GPではシーズン2度目の表彰台となる3位に入賞したが、ディ・ジャンアントニオに5ポイント差のランキング7位に終わった。
ランキング8位に ヤコブ・コンフェイル(KTM)、ランキング9位にアンドレア・ロカテッリ(KTM)が続き、ロマーノ・フェナティ(KTM)はアルゼンチンGPで1勝を記録していたが、シーズン中盤のオーストリアGPでチームとの間にトラブルを起こし、シートを喪失、オーストリアGP以降のレースに出場できず、ランキング10位となった。
開幕戦カタールGPで勝利を飾ったニッコロ・アントネッリ(ホンダ)は、それ以降振るわず、ランキング11位でシーズンを終えた。雨となった第2戦アルゼンチンGPでグランプリ初優勝を飾ったルーキーのカイルール・イダム・パウィ(ホンダ)は、同じくウエットの第9戦ドイツGPで2勝目をマークしたが、浮き沈みも激しく、ランキング19位でシーズンを終えた。
また、ウエットとなったチェコGPで優勝したジョン・マクフィー(プジョー)も、オーストラリアGPでの転倒負傷により、シーズン終盤の2戦を欠場、ランキング22位に終わった。
日本勢では尾野弘樹(ホンダ)がランキング23位。尾野は日本GPでポールポジションを獲得、決勝でも3位でチェッカーを受けたが、決勝後の再車検で最低重量違反により失格となり、グランプリ初表彰台は幻に終わってしまった。
シーズン前半は転倒が多かった尾野だが、シーズン後半は決勝中の転倒はなく、上位争いに加わり、最終戦バレンシアGPの予選ではフロントロウ3番グリッドを獲得した。鈴木竜生(マヒンドラ)は18戦中7戦でポイントを獲得し、ランキング27位でシーズンを終えた。
今シーズンのMoto3クラスは、ビンダー、バスティアニーニ、ナバーロ、バニャーヤ、ミル、フェナティ、アントネッリ、パウィ、マクフィーと9名のウイナーが誕生したが、その中でもビンダーが安定して速く、ランキング2位以下のライダーの取りこぼしが多かったこともあり、ビンダーが独走し、チャンピオン争いは早めの決着となった。いっぽうでトップ10のなかにミル、ジャンアントニオ、ブレーガと3名のルーキーが入っており、いずれもグランプリ初年度から表彰台に立つ活躍を見せた。
2017年に向けては、ビンダー、ナバーロ、バニャーヤらがMoto2クラスにステップアップ。バスティアニーニはエストレア・ガリシア0.0に、アントネッリはレッドブルKTMアジョに移籍。フェナティもオンゲッタ・リバコールドからMoto3クラスに復帰する。来季はベテラン勢と2年目のルーキーの戦いに注目が集まる。
また、鈴木はSIC58スクアドラ・コルセに移籍、ホンダNSF250RWを駆ることになった。SIC58スクアドラ・コルセは故マルコ・シモンチェリの意志を継いで結成されたチームで、世界グランプリには2017年からフル参戦する新規チームだ。
さらにアジアタレントカップ初代(2014年)チャンピオンの鳥羽海渡がホンダ・チーム・アジアから、同2015年チャンピオンで、2016年のレッドブル・MotoGPルーキーズカップでもタイトルを獲得した佐々木歩夢がSICレーシングチームからフル参戦することが決定。鳥羽、佐々木共に今年はMoto3ジュニア世界選手権で活躍を収めてきたライダー。佐々木は今年のマレーシアGPで負傷欠場のバスティアニーニの代役としてMoto3クラスデビューを飾っている。
ダニ・ペドロサらを育てたアルベルト・プーチによるアジア人若手ライダー育成プロジェクトのアジアタレントカップ出身者がいよいよグランプリデビューを果たす。