2016年12月09日 11:02 弁護士ドットコム
アイドルグループ「モーニング娘。」の元メンバーだった藤本美貴さん(31)が、11月下旬に放送されたトークバラエティ番組「バイキング」(フジテレビ系)で、アイドル当時に男性と交際していた過去に触れ、出演者から「詐欺では?」などと言及される一幕があった。
【関連記事:メンズエステで客が「性行為」持ちかけて迷惑…会話を無断録音して証拠として出せる?】
藤本さんは、「モー娘。」のリーダーに就任した2007年、現在の夫でお笑いコンビ「品川庄司」の庄司智春さんとの交際を週刊誌に報じられ、その後モーニング娘。を脱退した。「ガチガチのアイドルで、恋愛禁止。『モーニング娘。』のリーダーになった時だったので、本当にダメだった」と当時を振り返った。
恋愛禁止のアイドルの立場で交際していたことに、共演者からは「ファンを裏切ってる気持ちにはならなかったのか」「大きく分けたら詐欺ですよね、彼氏いないと思って応援してるのに」といった声があがった。
藤本さんは「詐欺じゃない!」と反論していたが、「恋愛禁止」をうたうアイドルグループのメンバーが、ファンに隠れて交際していた場合、ファンとの関係で「詐欺」と評価されることはありうるのか。中村憲昭弁護士に聞いた。
「結論から言えば、詐欺は成立しないでしょう(笑)」
中村弁護士はきっぱりと述べる。なぜだろうか。
「詐欺が成立するためには、人を欺(あざむ)く行為より被害者が錯誤に陥り、その結果、財物を交付したことが必要です。
今回のケースでは、果たして欺く行為があったのかという点が問題となります。
たしかに、アイドルが所属事務所との間で交際禁止の契約条項を交わしていることもあるでしょう。
ただ、それはあくまでもイメージ維持のための事務所とアイドルとの間の約束事です。ファンとアイドルとの間の関係まで縛るものではありません。
アイドルはファン個人の所有物でもありませんし、結婚できる相手でもありません。
人によっては『交際相手がいないからこそグッズを買ったのだから、騙されたのは事実だ』という人もいるかもしれません。
しかし、欺く行為といえるかどうかは、やはり一般人の社会通念により危険かどうかで判断されるべきでしょう。
そして、アイドルがファンに隠れて交際をすることは暗黙の了解であり、社会通念上、詐欺における欺く行為とまでは評価できないと思います」
交際を知ったファンが傷ついたとしても、法的な手段に訴えることは難しいようだ。
「ただ、よく考えてみて下さい。あなたが好きなアイドルは、結婚してしまうと魅力がまったくなくなってしまうのでしょうか。
『結婚をしていない』という属性は、いろんな魅力があるうちの一つの属性に過ぎないのではないでしょうか。
かくいう私も、『水曜日のカンパネラ』のボーカルのコムアイさんの熱愛騒動には、一瞬気を失いかけました。
が、その後コムアイさんが、突撃取材を逆手にとってネタ※にしたのを聞いて、もっとコムアイさんが好きになりました。
結婚したことを恨むのではなく、今まで夢を与えてくれたことを感謝しましょう。心の傷はいずれ癒えます。暖かく見守りましょう」
※編集部注※ コムアイさんは週刊誌に取材された際、記者を外食に誘い、中華料理をごちそうになったエピソードをツイッターで紹介。その対応が反響を呼んだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
中村 憲昭(なかむら・のりあき)弁護士
離婚・相続、交通事故など個人事件と、組織が万全でない中小企業を対象に活動する弁護士。裁判員裁判をはじめ刑事事件も多数。その他医療訴訟や建築紛争など専門的知識を要する分野も積極的に扱う。
事務所名:中村憲昭法律事務所
事務所URL:http://www.nakanorilawoffice.com/