2016年12月09日 11:02 弁護士ドットコム
90歳の父が、どうやらヘルパーに貢いで、貯金が底をついてしまったようだーー。そんな相談が、読売新聞の人気コーナー「発言小町」に寄せられました。ひとり娘のトピ主(投稿者)は遠方に嫁いでおり、母を亡くした後、ひとりで暮らしている父は現在、入院中です。
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トピ主によれば、「母が亡くなり、弱った父を元気にしてくれたのがヘルパーさんだった」そうです。「ヘルパーさんを気に入っていて、一緒に出かけたりしていました。服装も派手になり、母が嫌っていたので生やさなかった髭まではやしていました」。さらに、「ヘルパーさんは自分の娘や孫まで父の家に連れてきていました」といいます。
父の孤独を埋めてくれたヘルパーさん、とも考えられるはず。しかしトピ主が「恨み言の一つも言ってやりたいのです」と言うのには理由があります。「もう90歳になる父が、金はもうない」と言ったからです。詳しくきくと、父に預けていたトピ主の「数百万円の貯金」も使い込んでしまっており、入院費用をトピ主が渡さなければいけないほど、お金がなくなっていたのです。
トピ主は、「証拠もは何もない」と言いつつも「ヘルパーに貢いでいたとしか思えないのです」といいます。このような場合、お金を取り戻すことはできるのでしょうか。北島 健太郎弁護士に聞きました。
(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「父がヘルパーに貢いで破産しました」はこちら(http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/1116/785001.htm?g=15)
● 「どのように使用しようとも、それは親の自由」
親御さんに、意思能力があることを前提にすれば、原則的に、子どもに親御さんのお金の使い方に対して口を出す権利はありません。いずれ相続して貰うつもりであったとしても、現在は親の金であり、親がどのように使用しようとも、それは親の自由です。
それこそ、どこかに全額寄付してもよいし、誰かに全部あげても、本人が良ければそれに口を出すことは誰にもできません。
● 騙されていたのだとしたら?
もちろん、親御さんが騙されていて、お金を巻き上げられているのであれば、詐欺だとして取り消すことができます。また、(金額など)程度がひどければ、刑事事件として立件されることになるかもしれません。
とはいえ、詐欺によってお金を取られたという証拠を集めるのはとても大変だと思います。また、前述のとおり、意思能力があることを前提にすれば、詐欺によってその行為を取り消すことができるのは本人だけで、子供にその権利があるわけではありません。
大金だからと言って、その点は変わりません。本人がその気にならなければお金は戻ってこないということになるでしょう。普段から、親とは連絡を取り合い、仲良くしていることがこういったトラブルをなくすためには必要なことだと思います。
【取材協力弁護士】
北島 健太郎(きたじま・けんたろう)弁護士
平成4年日本大学法学部法律学科卒業 平成14年度司法試験合格 平成16年弁護士登録 現在は兵庫県弁護士会所属 人権委員会、消費者保護委員会、民暴委員会、両性の平等委員会所属 執筆:旅行のトラブル相談Q&Aの一部
事務所名:北島健太郎法律事務所
事務所URL:http://kkitajima.com/