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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ヒッチコック/トリュフォー』

2016年12月09日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週金曜日にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週の担当者は、横浜DeNAベイスターズファン歴21年・石井達也。


参考:『この世界の片隅に』の奇跡は続く 3週連続で前週超え、年明けには上映館が3倍に!


■『ヒッチコック/トリュフォー』(監督:ケント・ジョーンズ)
 2016年も残り僅か、映画ファンにとっては、自身の年間ベストテンを選定し始める時期でしょうか。そんな今年の年間ベストテンに最終コーナーでランクインしてきそうなのが『ヒッチコック/トリュフォー』。映画好きなら誰もが知る名著『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』を“映像化”したドキュメンタリーである本作は、ヒッチコック作品への最良の入門編となると同時に、年齢も国籍も超えた二人の映画監督の友情の記録でもあります。「映画術」取材時の写真と音声(よく残っていた!)、トリュフォーがヒッチコックへ送った手紙の内容が出ただけで、筆者は涙が......。


 ヒッチコックの名前は聞いたことがあるけどよく知らない、監督作も観たことがない、そんな人にこそ是非観て欲しい作品です。デヴィッド・フィンチャー、マーティン・スコセッシ、黒沢清ら、第一線で活躍する世界の監督たちの解説もあいまって、ヒッチコック映画の映像がインサートされるたびに息を呑み、その計算され尽くした映像に驚くはず。まさに観る「映画術」。映画好きはもちろん、ヒッチコック初心者にこそ観て欲しい傑作ドキュメンタリーです。


■『アズミ・ハルコは行方不明』(監督:松居大悟)
 岩井俊二監督作品『リリィ・シュシュのすべて』に出演していた蒼井優に心を奪われて以来、その出演作をすべて追ってきましたが、本作の蒼井優はこれ以上ないほどの儚さと哀しさ、そして強さをもった“生々しさ”を魅せてくれています。高畑充希、太賀、葉山奨之、そして加瀬亮と、日本映画界きっての役者が揃っているのも本作の見どころ。


 本作のストーリーは、時系列順に進行せず、さっき観たシーンの登場人物はどこに? 今のシーンはどこに繋がった? など、観客に“分かりやすさ”を与えてはくれません。それでも、見終わったとき、各シーンにあったほとばしるエネルギーに魅了されているから不思議なところ。松居大悟監督を中心とした、若いパワーが詰まった本作を是非劇場で体験してほしいです。


■「HAPPY HAMAGUCHI HOUR! これまでとこれからの濱口竜介」


 『ハッピーアワー』公開一周年を記念して開催される濱口竜介監督の特集上映。筆者の昨年のベストワン(いや、ここ数年トータルでも…!)の『ハッピーアワー』を中心に、『親密さ』、『PASSION』など、“伝説”となった映画たちを一挙に堪能することができます。限りなくフィクションな映画を観ているはずなのに、いつの間にか映画の住人が現実世界に足を踏み込んでくる陶酔感覚。


 濱口映画は、観たものにしか体験できない驚きと喜びを与えてくれます。これまで上映される機会がほとんどなかった学生時代の短編や、『ハッピーアワー』共同脚本・野原位の監督作『talk to remember』など、この特集上映で抑えておきたい作品がズラリ。ポレポレ東中野に連日通い詰めることになりそうです!(石井達也)