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HOWL BE QUIET、リアルを歌うことで引き出された意識「僕らの武器は“歌”だと改めて気付けた」

2016年12月08日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

HOWL BE QUIET

 HOWL BE QUIETがメジャー3rdシングル『サネカズラ』をリリースする。表題曲「サネカズラ」は竹縄航太(Vo/Gt/Pf)の失恋の体験が色濃く反映されたバラードナンバー。メジャーデビュー以降は1stシングル『MONSTER WORLD』、2ndシングル『Wake We Up』とエレクトロテイストのダンスチューンをリリースしてきた彼らだが、竹縄のエモーショナルな歌を軸にした「サネカズラ」によって、その音楽的な自由度の高さを改めて示すことになるだろう。さらにC/WにはTVアニメ『DAYS』(TOKYO MXほか)10月クールのオープニング主題歌「Higher Climber」を収録。「Wake We Up」に続く『DAYS』とのコラボレーションが実現し、ロックファン以外のリスナーにさらに強く訴求することになりそうだ。(森朋之)


(関連:HOWL BE QUIET、“歌”の持つパワー伝えたLIQUIDROOMワンマンレポート


■「あなたがフッた人はすげえヤツだったんだ」って思わせたい(竹縄)


ーー1stシングル曲「MONSTER WORLD」、2ndシングル曲「Wake We Up」に続く3rdシングル曲「サネカズラ」は、切ない失恋を男性の目線から描いたバラードナンバー。バラードシングルは今回が初めてですよね?


竹縄航太(以下、竹縄):インディーズのときに『DECEMBER』というアルバムを出したときに、タワレコ限定で『GOOD BYE』をシングルとしてリリースしたことがあって。そのときは枚数も限定だったから、バラードを正式なシングルとして出すのは、今回が初めてですね。カップリング曲の「Higher Climber」(TVアニメ『DAYS」オープニング主題歌)のほうが先に出来ていたから、順当にいけばそっちがシングルになっていたと思うんですが、メンバー、スタッフの共通認識として「もっと他にあるんじゃないか?」という直感みたいなものがあって。「じゃあ、どういう曲がいいだろう?」というところで出て来たのが「サネカズラ」だったんです。


ーーメジャーデビュー以降はポップなダンスチューンを続けてリリースしてきたので、このタイミングで『サネカズラ』を出すことは、バンドの音楽性の広さを示すことにつながると思います。


竹縄:そう捉えてもらえたら嬉しいですね。この曲自体は、2年くらい前に個人的に作ったんです。温めて続けていたというか、そもそもバンドでやろうとも思ってなくて。


ーー失恋の曲ですが、竹縄さん自身の体験がもとになってるんですか?


竹縄:そうですね。妬み、嫉妬、束縛したいという気持ちも強かったというか……。この曲を書くことで、自分の気持ちを清算したかったんです。当時付き合っていた人と一緒に住んでいて、自分からその家を出たんですけど、そのときに自分のモノだけをなくそうと思ったんですよ。相手が帰ってきたときに「ひとり暮らしだったかな?」と錯覚するくらいに自分の荷物を持ち出したんです。クローゼットの上3段を僕が使っていて、相手が下3段を使っていたんですけど、上3段だけを空っぽにして。バンドが原因で別れたたところもあったからーーバンドをやっている人と一生は付き合えないっていうーーやり返したいという気持ちもあったんですよね。向こうは“フる”、こっちは“フラれる”ということですけど、それは恋愛における裏切りに感じたんです。言葉にしなくても“これからも一緒にいたい”と思うから付き合うわけじゃないですか。なのに相手をフるっていうのは裏切り行為じゃないかなって。だから、相手をギャフンと言わせたいというのもすごくあったんですよね。自分の存在を深く残すことだったり、「あなたがフッた人はすげえヤツだったんだ」って思わせたいし、とにかく何らかの傷を残したいっていう。そのやり口自体すごく女々しいんですけど、そういう経緯で書いた曲なんですよ、「サネカズラ」は。


ーーめちゃくちゃリアルな体験がもとになっているんですね。生々しいバンドサウンドも、楽曲の背景にすごく合っていると思います。歌詞がしっかり伝わってくるというか。


竹縄:この曲の言葉を届けたいと思っていたわけではないですけど、歌詞の内容が自己中だったり、自分のことを吐露している部分はありますからね。自分の思いを歌に乗せている感じの曲なので、それを音として具現化していくうちにこういうアレンジになったということですね。


黒木健志(以下、黒木):デモ作りは竹縄が一人で住んでる家でやったんですけど、まず、竹縄がこの曲を書いたときの感情を僕らはリアルに知ってるんですよね。裸の部分というか、いちばんパーソナルなところをここまで歌ったことはほどんどなかったし。ふだんはフィクションと現実を混ぜて書くことが多いんだけど、「サネカズラ」で歌われてることは疑いようもなく、完全な真実なので。アレンジするときも、そのときの感情をどれだけ込められるかを意識してました。きれいな曲だけど、そこに込められているものはきれいなだけではないというか……。「自分たちの泥臭さをどこまで入れられるか?」という話もしてましたね。


岩野亨(以下、岩野):そうだね。


黒木:アレンジの過程ではシンセや打ち込みのドラムを試してみたんですけど、「これじゃ泥臭さが伝わらない」と思って。最終的には生楽器だったり、自分たちのプレイヤビリティを重視したアレンジになりました。


橋本佳紀(以下、橋本):うん。竹縄航太の人間性がすごく出ているから、楽器陣もそこはすごく意識して。さっき竹縄が「自分の気持ちを清算するつもりで書いた」と言っていたけど、その思いを4人で背負いながら楽曲にしていくのは不思議な感覚でしたね。


岩野:「サネカズラ」は制作のやり方もいままでとは違っていたんですよ。「こんなアレンジにしたらおもしろいよね」とか「こんな世界観を作りたいね」というところからサウンドを作ることが多かったんだけど、今回は竹縄の歌詞がアレンジを引き出してくれたというか。“歌詞を大事にする”ということが軸になって、それに付随する形でアレンジが作られていく感じだったんですよね。レコーディングの時も普段とは心持ちが違っていたというか、すごく気合いが入りました。聴いてくれる人にとっても、グッとくる曲になったらいいなって思います。


ーー「サネカズラ」はライブでも披露されていますが、ここまでリアルな思いが込められた曲をステージで歌うのはどんな気分ですか?


竹縄:うーん、まだよくわかってないんですけどね。このシングルの発売を告知したリキッドルームのワンマンライブ(参考:HOWL BE QUIET、“歌”の持つパワー伝えたLIQUIDROOMワンマンレポート)のときに一人で歌ったんですけど、自分としては当時の気持ちも清算されているし、深い思いも何もない状態で歌えている……と思いたい感じがあって(笑)。強がりではないけど、「ふつうに歌えてるでしょ」という感じでやりたいんですよね。引きずってる男って、カッコ悪いじゃないですか。


ーーそれでも引きずりますけどね、男は。


竹縄:(笑)。それを見せたくない、隠したいって思うのも男じゃないですか。まだ4人で演奏したことがないので未知数なんですけど、サラッと歌えたらカッコいいだろうなとは思いますね。


ーーいずれにしても竹縄さん自身の人となりが強く伝わる曲だと思います。みなさん、普段から恋愛のことも話したりするんですか?


黒木:まあ、しますよね。仲のいい友達として。


橋本:相談したりとか。


岩野:付き合いが長いから、ちょっと違和感があるとわかるんですよね。そういうときは「最近どう?」みたいな話もするので。


■「楽曲として『これがいい』と感じたところに突き進む」(岩野)


ーー2曲目は先ほども話に出ていた「Higher Climber」。「Wake We Up」に続きTVアニメ『DAYS』のオープニング主題歌ですが、アニメの楽曲を手がけたことでこれまでとは違うリアクションもあったのでは?


竹縄:音楽のカルチャー以外の人たちも見ていますからね、アニメは。自分たちのお客さん以外の人たちに届いているのはすごく新鮮だし、嬉しいです。


黒木:楽曲に関してはもちろん『DAYS』との連動性もあるし、今回のオープニングの映像も本当に素晴らしくて。僕達も当然「最高の曲が出来た」と思っているし、そこでケミストリーが起こせているのは良かったですね。『DAYS』のイベントに出演させてもらったり、声優の方々とも話をさせてもらって、お互いにわかり合えたうえで今回のオープニング主題歌も任せてもらえて。そういう関係が築けたこともすごく嬉しいですね。


竹縄:『DAYS』の1期は(アニメに登場する“聖蹟高校サッカー部”が)負けたところで終わって、第2期は負けたところから始まって。逆境に立ち向かう気持ちも描けたし、前回よりも竹縄航太の歌、HOWL BE QUIETの音楽というものを詰め込めたと思います。


黒木:これはシングルに入っている3曲に共通していることなんですけど、竹縄の声のダビングがすごく多いんですよ。3曲合わせると300本くらい歌ってるんじゃない?


竹縄:そうかも(笑)。


岩野:めちゃくちゃ入ってるからね、ホントに。


黒木:声で空間を埋めていくというか。竹縄がいろんな声で歌っているレコーディング現場もすごくおもしろかったし、曲の雰囲気もすごく変わって。それは僕らにとっても発見でしたね。今回のシングルもたぶん「ジャンルの共通点がわからない」って言われると思いますけど(笑)、アレンジにおいては、ボーカルの多重録音感という共通点があるんですよね。


ーー声のダビングを増やしたのはどうしてですか?


竹縄:今回のシングルはJeff Miyaharaさんにプロデューサーとして入ってもらっていて。声をたくさん重ねたのもJeffさんとの話のなかから出て来たアイデアなんですよ。さっき黒木が言ったように「自分の声を重ねるとこういうふうに聴こえるんだ」という発見もあったし、いい化学反応が生まれたかなって。それがシングルの核になってますからね。


橋本:「Higher Climber」は全編シンセベースなんです。フレーズや入れ方に関してもJeffさんと打ち合わせしながら打ち込んでいって。テンポがハーフになるところだったり、4つ打ちのパートによってもフレーズが違うし、「シンセベースって、こんなに奥行きがあるんだ?」ということにもビックリしましたね。僕はずっと生のベースを弾いてきたし、シンセベースの音を追求してきたわけではなくて。今回のレコーディングは勉強になりました。


岩野:HOWL BE QUIETの特徴であり、僕自身も好きなところは“やり切る”ということなんですよね。セルフプロデュースであってもプロデューサーと一緒に作っても、実際にライブで出来るかどうかではなく、楽曲として「これがいい」と感じたところに突き進むっていう。デジタルサウンドがいいと思えば徹底してやるし、「サネカズラ」みたいに生楽器中心のアプローチもあって。「Higher Climer」もまさにそうで、最初のスタジオの段階から方向性がハッキリしてたんです。アレンジが出来るまでの時間も最短だったんじゃないかな。


ーー3曲目の「Dousite」はアコギ、ホーンセクションを軸にした軽快なポップチューン。1曲目、2曲目とはまったく違うカラーの楽曲ですね。


竹縄:そうですね。「Dousite」はいちばん最近出来た曲なんですけど、この曲を書いたきっかけは『Wake We Up』のミュージックビデオの撮影なんですよ。「Wake We Up」のミュージックビデオと“その後”みたいな5分くらいの映像が収録されているんですけど、そこで何か新しい曲をやろうって話になって、10分か15分くらいでワンコーラスだけ書いたのが「Dousite」なんです。シングルに入れるつもりはなかったんですけど、メンバーもスタッフ、それから自分のなかの評判もすごく良かったから、1曲分作って収録することになって。


黒木:すごくハードな撮影の最中に「このメロディが……」って。初めて見ましたね、曲を書いてるところを。しかも僕は2ndシングルの映像でそういう企画があることも知らず(笑)。


橋本:「いいね、誰の曲?」とか言ってましたから。「いま作ってるんだよ」って言われて「え、そうなの?」って(笑)。


竹縄:(笑)。アコギを弾きながら作ってたんですけど、そのときの雰囲気は仕上がりのアレンジにも残ってますね。歌っていても気持ちいいし、気に入ってます。


ーー<ずっと一つも進歩していない/ダメダメな僕がここにいるんだ>という歌詞があったり、この曲もかなり等身大ですよね。


竹縄:皮肉というか、後悔というか。この曲も自分のことを吐き出してますよね。そんな大げさな話ではないんですけど、素直に曲が書けているし、今のテンションはいい感じですよ。


■「リリースが増えていることが、僕らにとってはすごい変化」(橋本)


ーー2016年3月のメジャーデビューから約9カ月。今年はHOWL BE QUIETのキャリアにとっても大きな1年だったと思いますが、この変化をどう感じていますか?


竹縄:変化であり、進歩であり、挑戦だった1年でしたね。去年の11月8日にメジャーデビューすることを発表したんですけど、そこから怒涛のスピードで駆け抜けて、シングル3作があって、ワンマンライブをやって、夏フェスにも出て。次の1年もいろいろ挑戦していきたいと思っています。


岩野:続けてシングルを出してきましたが、衝動的に楽曲を作って、その反応を感じながら次の制作に取り掛かるというサイクルが出来てきたんですよね。リリースした作品をしっかり分析できるようになったのも大きいと思います。過去の楽曲を俯瞰で見て、理解して、「次はこうやろう」と話し合って、また衝動的に作って。そうやってパワーアップできた感覚もあります。


橋本:リリースが増えていること自体、僕らにとってはすごい変化なんですよ。以前は1年に1枚くらいしかリリースできなかったバンドなので。竹縄はたくさん曲を持っているので、これからもいいペースで出していきたいです。短期間に集中して音楽に向き合うことで、さらに成長できると思うんですよね。月に1回、1年で12回やるよりも、12日連続でやったほうがいいというか。そういう状況がずっと続いているし、バンドとしても進化できていると思います。今回の「サネカズラ」に入っている3曲もそうですけど、楽曲も進化しているし。


黒木:メジャーデビューして、より多くの方に知ってもらったり、ライブに来てくれるお客さんが増えたことも“得られたこと”だと思います。ただ、まだ満足してないんですよね。さらにシングル、アルバムを出していきながら「次はどうしよう?」って考えて。とにかく続けるしかないと思ってます。“次、どんなバンドが来るか?”というのは不明確だと思うんですよ。その中で僕らの武器は“歌”だってことに改めて気付けたことも大きいですね。だからこそ、今年の最後に『サネカズラ』をリリースできることは、すごく意味があることだと思います。