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KANA-BOONが見せた、ロックバンドという“覚めない夢” リクエストライブ東京編レポート

2016年12月08日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

KANA-BOON(撮影=高田梓)

 KANA-BOONが、初のリクエストライブ『KANA-BOON冬のワンマンライブ ~セットリストはぼく・わたしにまかせな祭~』を東名阪で開催。本稿では、その初日11月24日のZepp Tokyo公演をレポートする。


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 今回のリクエストライブは、事前に特設サイトで行われたファン投票の上位曲を演奏するというもの。その中には通常のライブやフェス、イベントで何万人のオーディエンスを沸かせてきた曲もあったが、アルバムにのみ収録された曲やカップリング曲も数多く披露され、これまでのバンドのヒストリーを総括するような選曲だった。


 ステージが暗転し、SEが流れる中ステージに現れた谷口鮪(Vo.&Gt.)、古賀隼斗(Gt.)、飯田祐馬(Ba.)、小泉貴裕(Dr.)の4人。まずはライブでもお決まりのナンバー「1.2. step to you」「LOL」「盛者必衰の理、お断り」を立て続けに披露。特に「盛者必衰の理、お断り」はメジャーデビュー作の表題曲でもあり、彼らの名を一躍広めた曲だ。


 その後も気合いの入ったパフォーマンスで、オーディエンスの大合唱も招きながらライブは進んでいった。「白夜」(『DOPPEL』収録曲)では、古賀のギタープレイが炸裂。他の曲でもステージ前方に出てきてギターを弾き倒していた古賀は、ライブを盛り上げるエンターテイナーとしての姿も見せていた。時に切れ味の鋭いギターリフを激しく鳴らし、時に空間を突き抜けるように大胆なメロディを描き、聴く者のエモーションを駆り立てる古賀のプレイは、KANA-BOONのサウンドの重要なアクセントになっていることに気づかされた。


 また、谷口が“推し曲”と紹介した、7thシングル『ダイバー』のカップリング曲「街色」はこの日がライブ初披露。流麗なメロディと繊細かつ淡く広がるコーラスの重なり合いが心に染み渡るこの曲は、KANA-BOONの中でも屈指の美しさがあり、エバーグリーンな魅力がある。また、<スニーカー>や<空き缶><チャイム>といった、普遍的な風景をなぞる単語を取り入れながら、街並みを色に見立てていく歌詞の描写は、谷口鮪の作詞家としての豊かなリリシズムも感じさせる。


 ライブ後半では、「さくらのうた」「眠れぬ森の君のため」といった初期の曲(両曲とも、初の全国流通盤『僕がCDを出したら』収録)も演奏された。「さくらのうた」ではステージの真ん中に4人が集まり、向き合うポジショニングで曲がスタート。作詞を手がける谷口の原体験のようでありながら、同時に万人の中にある親しみ深い懐かしい風景を呼び起こしていくような曲だ。重心の低いずっしりとしたバンド・アンサンブルで、谷口の歌をしっかりと立たせていた。また、「俺にとっても、俺らにとっても大切な曲です」と言って披露されたのは、「眠れぬ森の君のため」。この曲は、2014年に地元・大阪の泉大津フェニックスで開催した初の野外ワンマンでのラストナンバーでもある。フェスに出る。CDをリリースする。ライブハウスのステージに立つ。TVに出演する。そんな夢を持ちながら、地元・大阪府堺市で、音楽やロックバンドに憧れていた頃の彼らの姿がありありと思い浮かぶようだった。そしてKANA-BOONは今も、その夢の中をひた走っている。


 谷口は、アンコールのMCで「いつものライブでは、昔の曲はそんなにやらない」と前置きした上で、「今日は昔のことを思い出しました。純粋な気持ちで、音楽を続けられてきた」と語っていた。KANA-BOONがシングル『盛者必衰の理、お断り』でメジャーデビューを果たしたのは2013年9月。そこからわずか3年の間で、10枚のシングルと、『DOPPEL』『TIME』『Origin』の3枚のフルアルバムを発表してきた。曲数で言えば、60曲~70曲ほどになるだろうか。コンスタントに作品をリリースし、時にはTVアニメ『NARUTO -ナルト- 疾風伝』をはじめとしたタイアップにも応えながら、その名を浸透させてきたKANA-BOON。3年の間でバンドをとりまく環境が急スピードで変化する中で、KANA-BOONは常に戦いながら、シーンの先頭に立ってきたように思う。そして、それは同時に、自分たちが憧れてきた”ロックバンド”になるために4人が一丸となって成長してきた歩みでもある。


 筆者は、今回のリクエストライブを見たことで、彼らが思い描いた夢は、リスナーとの間にもしっかりと共有されていると感じた。自分たちの夢の出発地点に立ち返りながらも、純粋に音楽とライブを楽しみながら未来を見渡す4人の表情は、とても逞しかった。(取材・文=若田悠希)