長時間労働が問題になる中、政府が「働き方改革」の一環として残業時間に上限の設置を検討している。読売新聞が10~11月にかけて「上限規制で『業務に支障が出る可能性があるか』」のアンケート調査を実施。12月6日付けの紙面で結果を発表した。
180社中143社から回答を得た。回答企業はトヨタ自動車、ANA、旭化成、NTT東日本など、就職人気企業でも上位に入る大企業が中心だ。
残業上限規制で、「支障あり」と回答した企業は47%(そう思う11%、どちらかと言うとそう思う36%)、「支障なし」と回答した企業は45%(そう思わない17%、どちらかと言うとそう思わない28%)だった。この結果を読売新聞は「意見が拮抗している」と報じた。
「規制されて業務が回らないんだったら元々無理だったと言うこと」
「長時間労働を見直す上での課題」についても企業に聞いた。「業務量を減らすこと」と回答した企業は、支障を懸念する企業で81%だが、懸念しない企業では63%。18ポイントの差がある。
さらに、「業務を落とさないための取り組み」と回答した企業は、懸念する企業では63%だったが、懸念しない企業では52%と11ポイント差が開く。業務量を減らし、それでも業務を落とさない取り組みを行っている企業ほど、残業時間の上限規制を気にしていない、ということだろう。
ただ、やはり残業上限の設定に対し「支障がある」と回答した企業が約半数というのは問題がある。ネットでは批判の声が相次いだ。
「残業が前提の体質をなんとかせんといかんと思うなぁ。仕事も賃金も。本質的にはただ規制だけしても解決にならないだろうなぁ」
「規制されて業務が回らないんだったら元々無理だったと言うことだし、改善する気が無いならそんな会社はさっさと潰れたほうがいいとは思う」
主な取り組みは「上司からの声かけ」「フレックス制の導入」など
やはり、従業員の残業ありきで会社を回していることが問題、という指摘が多い。「残業前提で基本給を下げていたりする場合もあり、根は深い」という声も出ていた。基本給を低めに設定することで、実質的に残業を促している企業もあり、人事制度の根本的な見直しが必要だろう。
また、疑心暗鬼になってしまっているのか「支障なし」という回答に対しても、「『残業させなくても業務に支障はない』の意味なのか『残業規制なんか突っ切って残業させるから支障ない』の意味なのかが気に掛かる」など、訝し気に見る人がいた。
6日付けの読売新聞では詳報を掲載。「長時間労働を見直すために行っている主な取り組み」を複数回答で聞くと、1位が「上司からの声掛け」(81%)、2位が「フレックスタイム制の導入」(77%)、3位が「定時退社など、計画的な残業禁止日の設定」(75%)などが挙がる。
すでに残業規制や労働環境の改善に取り組む企業の対応として、残業をする際には上司の許可を必要とする「残業制限」や、社内放送で定時退社を促すという「従業員の意識改革」などが紹介されている。働きすぎの日本人は変わることができるのだろうか。