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Hi-STANDARD、Shout it Out、岡崎体育……彼らは新作でターニングポイントをどう越えた?

2016年12月06日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Hi-STANDARD『Vintage & New, Gift Shits』

 久々の復活、○周年のアニバーサリー、音楽的なモードチェンジ、メンバーの脱退。音楽活動を続けていけば、ターニングポイントというものが必ず訪れます。望む・望まないに関わらず、絶対に直面せざるを得ない変化の時期をどう乗り越え、どんなストーリーを紡げるかが、長く支持されるアーティストになれるかどうかの分岐点と言ってもいいでしょう。今週はそんな節目を迎えているバンド/グループの新譜を紹介します。


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 今年メジャーデビュー10周年を迎えたGreeeeNのニューシングル曲「暁の君に」は、<それぞれに抱えた未来に向かい 信じて進んで 違えた誓い>というフレーズが心に残る、彼ららしい前向きなナンバー。“夜が明ける瞬間に不安や葛藤が消え、希望の光が見えるはず”というメッセージを込めたリリックは、まさにGReeeeNの真骨頂と言えるだろう。ギター、ピアノ、オルガンなどの生楽器を活かしたオーガニックな雰囲気のアレンジ、サビの入った瞬間に高揚感を増す4つ打ちのビートを軸にしたサウンドメイクからは、現在の彼らの音楽的な成熟ぶりも感じ取れる。2017年1月7日には初のさいたまスーパーアリーナ公演が決定。さらに1月下旬からはGReeeeN結成のエピソードをもとにした映画『キセキーあの日のソビトー』(松坂桃李、菅田将暉のW主演)が公開されるなど、来年は彼らの魅力に触れる機会がさらに増えそうだ。


 10月にリリースされた、Hi-STANDARDの約16年半ぶりのシングル『ANOTHER STARTING LINE』が星野源、SEKAI NO OWARIを抑えチャート1位を獲得したのは、“ノンプロモーションで、いきなり店頭にCDが並ぶ”というリリース方法だけではなく、楽曲そのものに「ハイスタがついに帰ってきた!」と思わせるに十分な説得力が備わっていたからこそ。そして、現在の彼らのモチベーションの高さは約2カ月というバンド史上最短のペースでリリースされるカバーシングル『Vintage & New,Gift Shits』からも強く感じることができる。収録されているのは、美しいコーラスワークとオーセンティックなロックンロールが共存する「I Get Around」(原曲:The Beach Boys)、多彩なリズム・アレンジが印象的な「You Can’t Hurry Love」(原曲:The Supremes)そして1997年にリリースされた「Money Changes Everything」(原曲:The Brains)、「Happy Xmas (War Is Over)」(原曲:John Lennon)の4曲。スタンダードとなっている名曲をピックアップするセンス、卓越したアレンジ・ワークは、パンクバンドとしてどう成熟するべきか? というテーマに対するひとつの回答と言えるかもしれない。


 CD BOX SET『MUCH TOO ROMANTIC!~The Collectors 30th Anniversary CD/DVD Collection』、ファン投票によるベスト盤『愛ある世界』(THE COLLECTORS -30th Anniversary Session-)など、30周年を記念したアイテムのリリースが続いていたTHE COLLECTORSから通算22作目のオリジナルアルバム『Roll Up The Collectors』が届けられた。1986年の結成以来、1ミリもブレるなくモッズのスタイルを貫き、変わらないために変わり続けてきた彼ら。粋で孤独でロマンティックなTHE COLLECTORSの音楽は、本作でも完璧に機能している。The Who直系とも言える「恋はテトリアシトリス」など、ファンが想起する“らしさ”を踏襲しつつ、まったく新しい感触を持ったロックンロールへと結びつけるセンスはここにきてさらに向上しているようだ。そして2017年3月1日には初の日本武道館ワンマン公演を開催!


 今年7月にシングル『青春のすべて』でメジャーデビュー、その2カ月後にベーシストとギタリストが脱退するという事態に見舞われたShout it Out。山内彰馬(Vo&G)、細川千弘(Dr)はふたり体制でバンドを継続することを即断、細川の実兄(Ba)など身近な仲間をサポートミュージシャンに迎え入れ、新作『これからと夢』のリリースに辿り着いた。リードトラック「DAYS」は、バンドを続けるんだという強い決意を込めた<終わらない夢をいつまでも見よう>というリリックが心に響くロックチューン。シンプルで真っ直ぐなサウンド、力強さと濃密なエモーションを同時に感じさせてくれる山内のボーカルを含め、再出発にふさわしい楽曲に仕上がっている。どんな状況にブチ当たっても、自らの意志を貫き、それを楽曲そのものに反映させる。そのアティチュード自体に感動してしまう。


 “ミュージックビデオあるある”をテーマにした「MUSIC VIDEO」のミュージックビデオのYouTube再生回数が1400万回を突破、メジャーデビューアルバム『BASIN TECHNO』がオリコンチャート9位、iTunesのJ-POPチャートで1位を記録するなど、今年、一気にブレイクした岡崎体育。口パクをカミングアウトする「Explain」などおもしろネタが優先した印象もあるが、彼の本質は優れたポップス・クリエイターだ。それを証明する最初の一歩が1stシングル曲「潮騒」であり、これも一つのターニングポイント作と言えるだろう。TVアニメ『舟を編む』(フジテレビ系)のオープニング・テーマとして制作されたこの曲は、キラキラとした光を感じさせるトラックと切ないメロディが融合したアッパーチューン。『舟を編む』の主人公と相棒の性格を対比させながら“言葉を紡ぐこと=(歌詞を書くこと)”をテーマにした、メタ視線的なリリックにもぜひ注目してほしい(“おもしろ”は一切ありません!)。(森朋之)