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アイドルネッサンスは新たな“名曲ルネッサンス”へ 初バンドセットに見たグループの未来

2016年12月05日 16:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(写真=MITCH IKEDA)

 「私たち、アイドルネッサンスのこの夏のゴールはあそこにあります!」ーー8月7日、『TOKYO IDOL FESTIVAL 2016』で新井乃亜はそう宣言していた。フェスの最終日、ガンダム立像近くに位置するFESTIVAL STAGEの大トリを務めたアイドルネッサンスは、11月6日に行なう4thワンマンライブ『お台場で迸るネッサンス!!』の会場であるZepp DiverCityを全員で指差した。


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 そして迎えた当日は、これまでアイドルネッサンスが駆け抜けてきた日々の全てはこのZepp DiverCityに結実するためにあったのではないかと思わせるほどの、輝かしいワンマンライブだった。


 「名曲ルネッサンス」をコンセプトに古今の名曲をカバーするアイドルネッサンス。新井が『TIF』で宣言していた通り、今年のグループにとってゴール地点とも言えるZepp DiverCityでのライブは、歌とダンスを中心とした8人によるセットでの第1部と、オワリカラ、炭竃智弘(Key.)、園木理人(Ba.)のスペシャルバンドにヒサシ the KID(THE BEACHES、ex-JERRY LEE PHANTOM)、堂島孝平のゲストを迎えた、グループにとって初のバンドセットでの2部構成にて行なわれた。


 ハイライトは1曲目「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」から訪れる。会場に漂う若干の緊張ムードをほぐしたのは、原田珠々華、野本ゆめかの新メンバー2名だった。この曲は間奏からブラスバンドによる演奏のオケが入ってくるが、ここで原田が下手からトランペット、野本が上手から鍵盤ハーモニカを弾きながら登場した。会場の沸き立つ様な歓声と共にメンバーの顔も自然と笑顔に変わっていく。2人がグループに加入したのは、約5カ月前の6月頃。成長目まぐるしい原田と野本は今ではグループに欠かすことのできない、常に刺激を与え続ける存在になっている。


 また、この日は冬の新衣装が、登場と同時に初お披露目となった。“真っ白な制服”というグループコンセプトはそのまま、修道服を彷彿とさせる今回の衣装はメンバーの全身がより白に包まれる。華麗に舞うダンスが特徴的な「ベステンダンク」「YOU」では、Zeppの大きなステージにメンバーが纏う白が綺麗に映えていた。


 「太陽と心臓」では比嘉奈菜子がウクレレを披露。沖縄出身である彼女は、自身の生誕企画で過去に三線を弾いていたのを記憶している。“迸るスペシャルバージョン”として比嘉のウクレレに乗せ、アコースティック編成でサビを歌唱。丸く弧を描きながら歌う8人のアコースティック編成は、より歌唱力が際立って聴こえる。その後、披露したKANの「REGIKOSTAR ~レジ子スターの刺激~」、ウルフルズの「それが答えだ!」はワンマンライブの直前に行なわれた『対するネッサンス!!』にて新たなレパートリーに加わった楽曲。エレクトロサウンドの前者は、ノリの良い曲調とユニークな歌詞が特徴であり、「それが答えだ!」は新井のユーモラス溢れるセリフと覚えやすい振りがグループのキラーチューンになっていくのではないか、と感じさせた。


 事前にアナウンスされていたバンド編成による第2部は、新たなグループの顔を垣間見せたライブとなった。オワリカラメンバーに加え、炭竃、園木の2名によるスペシャルバンドのジャムセッションから入り、タカハシヒョウリ本人のボーカルによる「踊るロールシャッハ」へと流れる。タカハシがワンハーフ歌い終わると、アイドルネッサンスメンバーが登場。石野理子、宮本茉凜による歌い出しでタカハシから歌のバトンを受け継いだ。サイケデリックなダンスナンバーに艶っぽいメンバーの歌唱が乗る。“猫好きキャラ”でお馴染みの南端まいなが<犬じゃない猫 猫じゃない犬 犬犬猫猫ワンワンニャーニャー>というパートを歌唱するのは何とも心憎い演出だ。


 スペシャルゲスト・ヒサシthe KIDを迎えての「Music Lovers」も秀逸であった。言わずもがな、JERRY LEE PHANTOMの本人を迎えてのコラボレーションでは、ステージ中央にギターを携えたヒサシを据え、淡々としたキーボードの音色とうねる様なギターのコード進行に会場のミラーボールが回り出す。間奏からヒサシが右手で客席を煽ると、ソロパートを務める石野の伸びやかな歌声が会場に響き渡る。そこから石野はヒサシとのツインボーカル披露した後、地声と綺麗に抜けたファルセットを使い分け、これまでのライブにない長時間のフェイクを披露した。


 続く、堂島孝平との「6AM」コラボレーションではメンバーのダンスと歌唱パートを最大限に活かしながら、間奏ではライブ参加にあたりメンバーが堂島に渡した手紙をサプライズで読むという一幕も。「今日は出演してくださるみなさん全員が“アイドルネッサンス”としてやっていけたらいいなと思います」というメッセージを受け、<会いたいだけ>というコールアンドレスポンスを<アイルネだけ>に変え、会場を一つにした。


 スペシャルコラボレーション前後では、「夜明けのBEAT」「恋する感覚」など緩急ある楽曲群を披露。ここで名前を挙げたいのが宮本茉凜と百岡古宵の2名だ。宮本はこの日オープニングアクトを務めた「AIS(アイス)-All Idol Songs-」との兼任、さらにグループリーダーを6月より務め、どのメンバーよりも多忙を極めたのは明白だ。その結果、表情の余裕とより幅広い音域、ダンスの深い表現力を手にした。百岡はグループにおいてライブの盛り上げ役である。通常は髪を一つ結びにしているが、この日彼女が髪を下ろしていたのは長時間の激しいパフォーマンスを最初から覚悟していたからではないだろうか。「そんなもんか!」という百岡の掛け声に会場も呼応していく。盛り上がりが絶頂を迎えたまま、本編ラストは今夏走り続けてきた8人の思いが詰まった「シルエット」。石野がフェイクで会場を圧倒した様に、ここでは新井が卓越したフェイクを披露。バンドセッションで長めのアウトロが設けられたことにより、原田も新井に続けてフェイクを入れていたのにはグループのまだ見ぬ可能性を感じさせ、重厚なバンドサウンドにも負けることのない確かなアイドルネッサンスの歌がそこにはあった。


 アンコールで歌われた「君の知らない物語」「Funny Bunny」の2曲は、アイドルネッサンスの“これまでとこれから”を示した楽曲だ。「君の知らない物語」は、今夏アイドルネッサンスの物語を彩ってきた1曲。<君の夢が叶うのは 誰かのおかげじゃないぜ>と歌われる「Funny Bunny」はグループの新たな一歩と決意、ファンへの感謝を表した楽曲だ。8人による披露は、ツアーファイナルの大阪にてアカペラで歌唱したことはあったが、オケに乗せ歌われるのはこの日が初であった。


 「Funny Bunny」歌唱前、グループを代表して石野から2017年春にオリジナルソングをリリースすることが発表された。これは、新しいアイドルネッサンスを見せ、グループ自身が成長していくための試みなのだという。作詞・作曲はアイドルネッサンスのデビュー曲「17才」を手がけたBase Ball Bearの小出祐介。小出による、グループメンバー、そしてアイドルネッサンスのファンに向けたメッセージを新井が代読。小出はオリジナルソングの作詞・作曲者に指名されたことを「なんというか妥当ですよね(笑)。いつかアイドルネッサンスにそういう日が来たら自分が指名されるだろうと身構えていたのは正直あります(笑)」と綴りながらグループが節目に到来したことを示唆した。「持ち曲が名曲のカバーのみということはほかのアイドルさんが通るであろう“そもそも良い曲を持っているかどうか”という課題をパスしてきたとも言えます」と話し、続けて「こんなに大きな会場でワンマンライブができるグループがまた0から積み立てを始めなきゃいけないのです。でも安心してください。僕がついてますよ。みなさんの代表曲である『17才』を作った僕がね。名曲をまた作ればいいんです。それだけです」という暖かいメッセージに会場には自然と拍手が起こった。


 「名曲ルネッサンス」を掲げ、古今の名曲をカバーしてきたアイドルネッサンスは、デビューから約2年半で大きなターニングポイントを迎えた。「ルネッサンス」には「再生・復活」という意味の中に、「全ヨーロッパに広がった革新運動」という背景もある。「名曲をまた作ればいい」、その言葉の通りに「17才」は当時アイドルシーンに新たな風を巻き起こした。アイドルネッサンスはこれからダブルミーニングでの「名曲ルネッサンス」を掲げる。名曲でアイドルシーンを革新し続けるのはアイドルネッサンスだ。


(渡辺彰浩)