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「家族のインフルエンザくらいでなんで休むの?」休ませてくれない上司、対応は違法?

2016年12月05日 10:42  弁護士ドットコム

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妻と娘がインフルエンザでダウンしたのに、休みが認められなかったーー。ある会社員の怒りのツイートが話題になっている。


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このツイートは、「看病のために休みを取ろうと上司に電話したら『は?なんで家族がインフルエンザになったくらいで休むの?仕事と関係なくない?』とか言われた」などというもの。11月19日の投稿以来、約6万回もリツイートされ、この上司に対する批判の声があがっている。


厚労省は、11月25日、全国的にインフルエンザの流行シーズンに入ったと発表している。看護休暇を認めなかったり、感染の可能性がある社員に出社を求めたりする対応は、法的に問題ないのだろうか。太田伸二弁護士に聞いた。



●未就学児なら「子の看護休暇」、小学生以上なら「有給休暇」に


ポイントは、ツイートした方の娘さんの年齢です。


娘さんが小学校就学前だとすると、育児・介護休業法による「子の看護休暇」として会社を休むことができます。「子の看護休暇」は、1年度に5日(2人以上なら10日)まで、未就学児の看病や予防接種のために取得できる休暇です。ただし、有給にしなければならないという規定はなく、会社によって有給・無給が異なります。


入社から6カ月以内である場合などを除けば、会社は申請を拒めないとされています。投稿者がそれらの場合に当たらなければ、上司が休暇取得を認めないことは許されません。


一方、娘さんが小学生以上であるとすると、有給休暇の取得を検討することになります。有給休暇については、理由を問わず取得できるので、家族の看病のためにも取得することができます(なお、学校保健安全法上、インフルエンザは出席停止を命じることのできる病気とされています)。


会社は、その労働者が休むと事業場の事業全体に支障が生じ、代替要員も確保できないような場合に限り、有給休暇の取得時期の変更を命じることはできます。ただ、1人が休んだだけでは、そこまでの支障が生じないことの方が多いでしょう。また、本人も感染している可能性が高いですから、会社内でインフルエンザを蔓延させないという観点からも、出勤を求めるべきでは無いと考えます。


就業規則でインフルエンザに罹患した場合の出勤停止を定めている会社もあるようです。ツイート投稿者の会社も、労働者及びその家族の健康を重視する観点と、企業のリスク管理の観点から、休みの申請に理解ある対応をすべきだったと考えます。


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
太田 伸二(おおた・しんじ)弁護士
2009年弁護士登録。新62期。ブラック企業対策仙台弁護団事務局長、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長、日本労働弁護団全国常任幹事。

事務所名:新里・鈴木法律事務所