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ササノマリイ、スライムシンセサイザーとのセッション映像公開 “生楽器×電子音”コラボの理由は?

2016年12月03日 18:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ササノマリイ

 ササノマリイが、11月29日に新曲「透明なコメット」とスライムシンセサイザーとのコラボセッション映像をツイキャスで配信。その映像がYouTubeでも公開された。


動画はこちら。


 同曲は11月30日リリースのメジャーデビューシングル『タカラバコ』の収録曲。スライムシンセサイザーとは、第18回文化庁メディア芸術祭でエンターテインメント部門新人賞を獲得した作品で、スライムを触ったり変形させることで、音が変わる不定形のシンセサイザーだ。このライブには、その作者の一人であるドリタが参加した。


 暗闇の中いくつかのライトが点灯したスタジオには、キーボードとドラムセット、スライムシンセサイザーが準備されている。まずは、ササノマリイが一人で姿を現し、同シングルの収録曲「バイバイ」を鍵盤による弾き語りで披露。時にファルセットでの歌唱を織り交ぜながら、楽曲本来が持つ儚さと優しさをなぞるように、そっと静かに歌う姿が印象的だった。


 「こんばんはササノマリイです。今夜は楽しんでいってください」という挨拶を挟み、続けては表題曲「タカラバコ」へ。ここからは、D.A.N.、トクマルシューゴ+、坂本美雨などのライブやレコーディングにも参加するソロ・アーティスト小林うてながキーボードとコーラスで参加。ササノマリイの澄み切った歌声と、小林うてなのコーラスが重なりあい、瑞々しいハーモニーを作り出す。キーボードのみのシンプルな編成がゆえ、この曲の豊潤なメロディと歌心を十分に味わうことができた。


 曲が終わると、カメラのすぐ前に透明なアクリル板が置かれ、そこをスライムが上から下に向かって流れていく。ドリタはその前に立ち、指先でスライムを上下左右に操作し、自由自在に電子音を出していく。そして、そのまま始まったのが「透明なコメット」だ。ツイキャスのコメント欄には、「雨の中で歌っているみたい」「光と音を楽しめる」というコメントがいくつも見られたが、透明なスライムは黄色や青のライトに照らされながら、幻想的な演出を見せる。曲の途中からスライムが流れるアクリル板は取り除かれ、カメラは再びスタジオ全体を映した。ここからはドラムJimanicaも加わり、歌とキーボード、ドラム、スライムシンセサイザー、コーラスというバンドセットでの演奏に。生楽器と電子音が組み合わさることで、音源とはまた違った印象を受けた。特にスライムシンセサイザーの電子音は曲に奥行きと浮遊感を与え、よりイマジネーション豊かな楽曲へと変化を遂げていた。


 音源では、電子音を巧みに使い、緻密なサウンド・メイキングを施していた3曲。このライブでは、オーガニックでより体温を感じさせる曲として心地よく響いた。


 ササノマリイのMVは、国内外のアニメーション・フェスティバルなどでノミネートするなど高く評価されている。他ジャンルとのコラボレーションも積極的に行い、様々な角度から音楽を届けてきたのだ。今回のスライムシンセサイザーとの共演で、ササノマリイは新たなクリエイティビティを発揮し、音楽家としてのレンジを広げていた。そして、このライブ配信の翌日11月30日には、メジャーデビューを果たした。メジャーのシーンに足を踏み入れ、多くのクリエーターと出会うことで、ササノマリイはここからさらに多様な音楽的トライアルに挑んでいくのではないだろうか。そんな期待が高まるライブ中継だった。(文=若田悠希)