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RADWIMPS、“頼もしい覚悟”が伝わる新作『人間開花』で2作連続首位獲得

2016年12月03日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

RADWIMPS『人間開花』(通常盤)

■石井恵梨子のチャート一刀両断!


【参考:2016年11月21日~2016年11月27日週間CDアルバムランキング(http://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2016-12-05/)】(2016年12月5日付・ORICON STYLE)


 11月最終週の記録とはいえ、「12月05日付」という数字を見ると、否応なく年末になったことを痛感します。そして、「いま」の話題が「今年全体」の話題としっかりリンクしている。それが今週のチャートです。


 おそらく誰もが「2016年最大の音楽ニュース」として語るであろう、宇多田ヒカルの復活。アルバム『Fantôme』は、先週こそ初めて10位圏内からダウン(13位)しましたが、今週はしっかり7位に返り咲きました。発売から7週連続でチャートインしたことも立派ですが、9週間目となる今も、一週間に10,200枚程度売れているのが凄い。ロングセールス、万歳!


 ちなみに今年、宇多田以上のロングセールスを誇ったのはRADWIMPSによるサントラ『君の名は。』でした。この作品は、9月05日付けのチャートで初登場1位を記録して以来、1位→2位→2位→3位→4位→6位→4位→6位→8位→9位→10位と、じつに11週連続で10位圏内にとどまっていたのです。サントラは累計で35万枚を超える大ヒットを記録し、「前前前世」はバンドの手を離れた国民的ヒット曲に。映画との相乗効果……といえば聞こえはいいですが、映画のイメージに音楽が引っぱられすぎてしまうと、ミュージシャンは手放しで喜べなくなります。ヒット曲のイメージとは違う自分の世界を見せようと躍起になることもあるでしょう。そういう葛藤や軋轢がほとんど感じられない。それが、今週1位のRADWIMPS『人間開花』でした。


 オリジナル・アルバムとしては3年ぶり、通算8枚目となる『人間開花』。10周年を超えたバンドだから貫禄や円熟味が出てきても不思議はないのに、この新作に宿っているのは、みずみずしい青春感、パカーンと開かれた歌の強さ、まるでデビュー作のような勢い、などなど。斜に構えたところは微塵もありません。オリジナル・バージョンの「前前前世」や「スパークル」が入るなど、『君の名は。』と無理に切り離した様子もないし、むしろ、あの映画に影響されたから恋愛を扱う歌が増えた、それが青春感につながった、というメンバーの発言もあるくらい(発売中の音楽雑誌「MUSICA」12月号より)。


 言葉は悪いですが、新海監督の映画をうまく利用することで、RADWIMPSはさらにド真ん中に突っ込んでいく勇気を得たのかもしれません。ナイーブで内省的な野田洋次郎のインナーワールドはもうおしまい。これからは堂々とメインストリームを歩いていく。そういう頼もしい覚悟が伝わってきます。『君の名は。』が初登場1位を記録したときに「これはバンドにとって初の記録」と書きましたが(参考:RADWIMPS『君の名は。』が2週連続首位 国民的バンドの風格手にした転機の作品に?)、『人間開花』が1位になることのほうが意味は大きく、彼ら自身の誇りになるのだろうと思います。


 話は変わりますが、今週は大物~中堅のベスト盤が多いことも特徴のひとつ。年末商戦の始まりって感じがしますね。久保田利伸のコラボベスト『THE BADDEST~Collaboration~』が初登場5位、大黒摩季の『Greatest Hits 1991-2016 ~All Singles + ~』が4位など奮闘が目立ちますが、特に強いのは2週連続で2位を記録した中島みゆきの21世紀ベストセレクション『前途』。


 安易なベスト盤が増えた時代においても、彼女はほとんどベストを出さなかったので(そのぶんライブ盤は多い。現役&現場主義のシンガーなのですね)、これはなんと20年ぶりのベスト・アルバムとなります。「地上の星」「宙船(そらふね)」「麦の唄」などなど、メロディを脳内再生するだけで腹が熱くなり拳がわなないてしまう名曲たち。それらをまとめたタイトルが『前途』というのも凄いパンチ力です。70年代のフォークシーンから飛び出した中島みゆきが、ニューミュージックやJポップの時代をひた走り、60代になった今も現役で全国民の背中をぐいぐい押し続けていること。本当に国宝級の存在だなと改めて感じ入りました。(石井恵梨子)