2016年12月03日 11:02 弁護士ドットコム
「運転しない人が、なんでゴールド免許なのよ」。元長野県知事で、作家の田中康夫さんがゲスト出演したテレビ番組で、現行の優良運転手制度を批判した。
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田中さんが出演したのは、11月19日放送のバラエティ番組「おぎやはぎの愛車遍歴 NO CAR, NO LIFE!」(BS日テレ)。田中さんはこれまでの自動車遍歴を熱く語ったうえで、運転免許の優良運転手の制度について「運転しない=ゴールド免許を改善せよ」と持論を述べた。
現行制度では、ゴールド免許は、運転免許証を更新した際、過去5年間に無事故・無違反の優良運転手に交付される。更新時には、講習時間が短かったり、費用が安いなどメリットがある。一方で、ほとんど車を運転しないペーパードライバーのなかにも、ゴールド免許を持っている人が少なくない。
こうした現状について、田中さんは「乗ってない人がゴールド免許だったりするじゃない」「乗っていない人こそ、半年、1年講習すべき」と注文を付けた。田中さんの意見に対して、ネット上では「確かにそうだ」「これは正論だ」と賛同する声が多数あがっている。
田中さんが言うように、運転しないペーパードライバーにゴールド免許を与える制度を改善すべきだろうか。齋藤裕弁護士に聞いた。
「たしかに、ゴールド免許制度の合理性には疑問があります」
齋藤弁護士はこのように指摘する。どういうことだろうか。
「警察庁が運転免許証の更新制度に関しておこなった調査によると、1998年1年間に運転免許を更新した人のうち、優良運転者(ゴールド免許保持者)は約47.6パーセントでした。
また、ゴールド免許保持者の更新後2年間の事故率は0.82パーセントで、そうでない運転者(初回更新者を除く)の2.07パーセントより明らかに低くなっています。
他方で、ペーパードライバーは必然的にゴールド免許になります。マイナビニュース(2012年)が実施したペーパードライバーの割合調査によると、ペーパードライバーは34.6パーセントになります。
そこから考えると、ゴールド免許を持っている人のうち、ペーパードライバーでない人(普通に運転する人)はかなり少なくなりそうです。
そこで、ペーパードライバーでない人に限定した場合、母数が大幅に減るので、ゴールド免許保持者の事故率が低いとは、かならずしもいえない可能性が出てくるからです」
では、運転しないペーパードライバーにゴールド免許を与える制度を改善すべきという意見についてはどうだろうか。
「実際には、運転する人と運転しない人を区別するのが難しく、現実の制度設計が極めて困難だと思います。
今後は、アンケートなどによって、ゴールド免許保持者からペーパードライバーの割合を算出し、ゴールド免許を持っている人と持っていない人との事故率の差を検証して、制度の改善をおこなっていくべきだと思います。
同時に高齢者ドライバーの増加や事故率も踏まえて、免許を返納しやすい環境整備(公共交通の整備など)にも力を入れるべきでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
齋藤 裕(さいとう・ゆたか)弁護士
刑事、民事、家事を幅広く取り扱う。サラ金・クレジット、個人情報保護・情報公開に強く、武富士役員損害賠償訴訟、トンネルじん肺根絶訴訟、ほくほく線訴訟などを担当。共著に『個人情報トラブル相談ハンドブック』(新日本法規)など。
事務所名:新潟合同法律事務所
事務所URL:http://www.niigatagoudou-lo.jp/