トップへ

高橋優の音楽は、常に「人」と共にあるーーベストアルバム以降の快進撃と新作の関係を分析

2016年12月02日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

高橋優

 高橋優の快進撃が止まらない。11月16日にリリースされた2年3カ月ぶりの作品となる5thアルバム『来し方行く末』が、初日オリコンデイリーチャートで3位を、ウィークリーチャートでは4位を獲得。テレビなどのメディアで彼の姿を見たり、歌を聴いたりする機会もぐっと増えた。元々デビュー前の2010年4月に「福笑い」が東京メトロのCMソングに抜擢され、2013年11月には自身初の日本武道館公演を成功させるなど、アーティストとして順風満帆に進んできた彼だが、その快進撃が際立ち始めたのはここ数カ月だ。メジャーデビュー5周年を記念してベストアルバム『高橋優 BEST 2009-2015『笑う約束』』をリリースしたのが昨年7月。リリース直後、彼は地元秋田でフリーイベントを開催し、秋田県知事からもエールを送られる中、「あきた音楽大使」に任命された。そんな地元愛、音楽愛を踏まえてここ数カ月の彼の歩みを振り返ってみると、常に彼の周りには「人」がいたという事実が浮かび上がってきた。


 まず彼は、幅広いアーティストと共演したり、様々な場所で自らの歌を響かせたりしてきた。今年7月には、『MTV Unplugged』に出演。フラワーカンパニーズの名曲「深夜高速」のカバーも披露し、後日、MTVではフラカンとの対談特番も組まれた。9月には、野外音楽フェス『秋田CARAVAN MUSIC FES 2016』を地元・秋田県横手市にて初主催。チームしゃちほこやウルフルズなど、多彩な出演アーティストとのコラボレーションも披露した。10月には、『テレビ朝日ドリームフェスティバル2016』でGLAYとコラボレーションを果たし、TERU(Vo)と「SOUL LOVE」を熱唱。さらに、日本最大級のハロウィンイベント『ジャック・オー・ランド』に出演し、俳優である佐藤健とこの日限りの異色ユニット「YUTAKE」でパフォーマンスした。


 11月には、バラエティー番組にも数多く出演し、歌だけではなくキャラクターも全開にして、お茶の間の目を惹きつけた。まずは『スッキリ!!』(日本テレビ系)に生出演し、「明日はきっといい日になる」をパフォーマンス。MCの加藤浩次からはカラオケでよく歌うと言われ、大竹しのぶ、佐藤健、近藤春菜(ハリセンボン)といった著名人からのメッセージや、貴乃花親方の25周年祝賀会に呼ばれてパフォーマンスしたことなどが紹介された。そして、『A-Studio』(TBS系)に出演。笑福亭鶴瓶とのトークと共に、服部隆之が編曲・指揮、金原千恵子ストリングスが演奏という豪華編成で「BEAUTIFUL」も披露された。さらに『行列の出来る法律相談所』(日本テレビ系)のスタジオゲストに出演。「明日はきっといい日になる」を弾き語りでパフォーマンスし、この日の出演者だった関ジャニ∞の大倉忠義や、事務所の先輩である福山雅治とのエピソードも紹介された。


 どうだろう? こうして今年の高橋の活動を振り返ると、たくさんの「人」の名前が出てくることに驚かされるのではないだろうか? その印象は、ニューアルバム『来し方行く末』へと繋がっていく。収録されている「アイアンハート」には、こんな歌詞があるーー〈僕に今必要なもの 寝る場所と食べられる物/あとは大好きな人たち それ以外はどうでもいい〉。そう、彼自身が人を愛しているからこそ、彼は愛されるのだ。収録曲も、明快なポップスから、ルーツを感じる無骨なフォーク、さらにバラードまで、音楽性は幅広いが、その中にしっかり高橋優という「人」が見える。あえてまとめるなら、ジャンル=高橋優と言える一枚なのだ。彼の音楽を好きになる人は、彼を好きになる。彼を好きになる人は、彼の音楽が好きになる。そう考えると、彼が音楽活動を重ねてきた末に周りの人に恵まれ、たくさんの人に楽曲を聴かれるようになった現状は、必然ではないだろうか。


 高橋は、本日12月2日放送の『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で「明日はきっといい日になる」をパフォーマンスする。12月26日には自伝の本の発売も決定している。そのタイトルは『高橋優自伝 Mr.Complex Man』ーーニューアルバムの幕開けを飾る『Mr.Complex Man』と同じタイトルだ。この楽曲の歌詞はこう始まる。〈自分のことが嫌い 笑い方も喋り方も嫌い 鏡に写っている男をブン殴りたい/生きている価値なんかない そんな人は一人もいない ってのが本当なら/誰か僕に才能と親切とアラカルトを買ってきてください〉ーーしょっぱなから心を裸にしているのだ。こんなアーティストには、聴き手も心を裸にして向き合わざるを得ない。


 幾ら周りが華やかになっても、揺るがない核が露わになったニューアルバム。そのまま、これからも歌を高らかに響かせて「裸の心」が溢れかえる世の中を作っていって欲しい。(文=高橋美穂)