トップへ

塩ノ谷 早耶香が目指す、自分らしい表現「みんなとより近い存在として、メッセージを届けたい」

2016年12月02日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

塩ノ谷 早耶香

 塩ノ谷 早耶香が、ニューシングル『魔法』を12月7日にリリースする。同曲は、塩ノ谷が作詞を手掛け、叶わない恋愛に悩み苦悩する女性心理を描いたバラード楽曲。リスナーと同じ目線で綴られた歌詞と感情的なボーカルが印象的な一曲となっている。今回リアルサウンドでは、その作詞方法や表現を深めていくことで積極的に取り組んだMVについて、またカップリング曲「YOU」を通した作品としての世界観を訊いた。また、塩ノ谷自身「挑戦の年だった」と語る2016年の音楽への向き合い方についても訊くことができた。(編集部)


・「切ない気持ちに同調できる曲にしたかった」


ーー7枚目のシングル曲「魔法」、作詞は塩ノ谷さんですが、どんな思いで作られましたか?


塩ノ谷:今年の1月頃、この曲をいただいたんですけど、すごく世界観がハッキリと作られた素敵な曲だなというのを感じて、ぜひ歌詞を書きたいと思いました。何度も何度も繰り返し聴きながらイメージを広げていたんですけど、その時に歌詞のサビの部分にある<この想い叶える魔法教えてよ>と言うところが、パッと浮かんできたんです。そこから全体を広げていくという形で作っていきました。


ーー歌詞全体としては、叶わぬ思い、切なさが描かれていますよね。


塩ノ谷:冬ってどこか切なくなったり、涙を流したくなったりする季節だと思うんですけど、どうしても人って大人になっていけばいくほど、強がっちゃったり、涙を流せなくなることがあると思うんです。だからこの曲は、その切なさがいっぱいになった時に、気持ちに同調して同じ目線で涙を流せるようなものにしたいなと思ったんです。それで全体が思いっきり“せつな系”になりました。


ーーこういう“せつな系”を書いてる時にもそういう気持ちに入り込んだりするものですか?


塩ノ谷:めちゃくちゃ入り込みました。書いてる時って、女優さんでいう役作りのように、その人物になってしまうというか。けっこう“どよーん”としてました(笑)。


ーー作詞のために、普段から気になったワードを書き留めたり、あるいはスマホにメモしたりというようなことは?


塩ノ谷:よくありますね。ワードだけじゃなくて、例えばすごく寂しい気分になっている夜、「今何で自分はこういう気持ちになっているんだろう」という、その思いの中身みたいなもの書き留めたりしています。それが歌詞になることもあれば、そのままになってしまうこともあるんですけど、大事な作業だと思っています。


ーー実は、2年ほど前に取材させていただいたことがあったのですが、その時は、ご自身で作詞・作曲して初めてリリースされた楽曲「to you」の頃で、自分の中の思いを歌詞にする作業の難しさについて語っていただきました。その頃と歌詞作りに関して変わってきている部分はありますか?


塩ノ谷:あの時はコンセプトがあったので、そこに沿って作品作りをしていくという感じだったんですけど、とにかく、誰にどう思いを伝えたいのか、ということを必死に考えながらの制作でした。今もその思い自体は変わらないんですが、曲から受ける印象や広がるイメージが増えていって、作詞の楽しさのようなものはより強く感じるようになったと思います。


ーーファンの方、聴いている方から具体的に「このフレーズにグッときました」というようなリアクションをもらうこともあるのでは?


塩ノ谷:ありますね。リリースイベントでも握手会をさせていただくことがあるんですが、そういう場で具体的に「このフレーズ好きです」って言ってくださる方もいらっしゃるので、すごくうれしいです。今回も<携帯の中、君を消した>というフレーズに、「私も今そこです」みたいな声をもらったりしました。歌詞はそのまま私のことを綴っているので、恥ずかしくもありうれしくもあり、という感じですね。


ーーレコーディングはいかがでしたか?


塩ノ谷:比較的スムーズだったと思います。メロディーラインも自分にとって歌いやすいものだったので、気持ちよく歌えました。ただ、メロディーラインがすごく動くので、アタックの付け方はこだわりました。でも基本は自分の心の赴くままに歌うのが一番だなと思っているので、変に意識しすぎないように、感じたままに歌いました。


ーーサウンド、トラック的な面で聴きどころだなと思っているポイントは?


塩ノ谷:トラックに関してはすごくドラマチックなものになっているので、全体の起伏を感じてもらえればと思います。MVで描かれている妄想と現実の差をトラックでも表現しているので、ぜひチェックしていただきたいです。


ーーそのMVですが、ものすごく雨に濡れてましたね。


塩ノ谷:そうなんです、みなさんそうおっしゃるんです(笑)。確かにすごい量の雨でした。MVやジャケット写真は事前に監督と直接お会いして打ち合わせに参加させていただくんですけど、ドラマチックなMVにしたくて「雨に濡れましょう」と自分から言っちゃったんです……。


ーーご自分から。


塩ノ谷:そうなんです。だから引き下がれない感じで(笑)。しかも監督から、「かなり大変だからイメージシーンみたいなものだけにしよう」と言っていただいたにも関わらず、「雨の中で歌ってるシーンがあった方が、より伝わると思います」と言ってしまって(笑)。「自分で自分の首絞めてるけど、大丈夫?」とも言われました(笑)。でも、「大丈夫です、やります!」って言い切って本番に入りました。ただ、いざやってみたら、キツかったです(笑)。一瞬やめとけばよかったかな? とも思ったんですけど、仕上がった映像を見たら、ホントにこれはやってよかったなって思えましたし、印象的なシーンになったと思います。


ーーMVに関しては、ご自分から案を出されることも多いんですか?


塩ノ谷:そうですね。歌詞を書いていく中で、映像が思い浮かんでいるので、自分の中にあるイメージを伝えるようにしています。


ーーだんだんこだわりが高まってきたりしませんか?


塩ノ谷:それはあります。他の方のMVに刺激を受けることもありますし、こういうカラーを使ってみたいとか、こういう質感の画像がいいな、とか。どんどん欲は出てきますね。


・「新たな塩ノ谷 早耶香を表現することができた」


ーーカップリング楽曲についても伺いたいと思います。「YOU」 という曲に込めた思いは?


塩ノ谷:この曲は、3年ぐらい前……19歳の頃にプリプロした曲だったんです。何よりも歌詞の世界感がすごく素敵だなと思って、いつかみなさんに届けたいと思っていました。「自分自身じゃなくて、あなたの幸せが私の幸せ」というメッセージが、大きな愛でその人を包みたいという気持ちで溢れていて、歌っていてもグッとくる1曲です。


ーー『魔法』という作品1枚を通して、聴く人にはどんなふうに楽しんで欲しいですか?


塩ノ谷:生きていると、苦しかったりすることもあるし、強がってしまうこともあると思うんです。涙を流して一度その思いを空っぽにしてもらって、でも空っぽのままじゃちょっと心が寒いから「YOU」みたいなちょっと温かい曲を心の中に入れてもらえたらいいなと思います。心のリフレッシュみたいな感じでこの1枚を楽しんでもらえたらうれしいです。


ーーでは、ここからは2016年を振り返っていただこうと思いますが、塩ノ谷さんにとって今年はどんな1年でしたか?


塩ノ谷:挑戦の年だったなと思います。2月にはフィンランドにも行かせていただいて、言葉が通じないという状況で3日間、1日1曲を作っていくという日々だったんですけど、かなりハードでした。でもその中で自分と向き合って、自分のアイデアが曲に組み込まれてすごく素敵な曲が作られていったので、本当に幸せな時間でした。そういうチャレンジの中で実を結んだ「SMILEY DAYS」のような曲ができて、新たなビジュアルにも挑戦ができて、新たな塩ノ谷 早耶香を見せることができました。

ーー確かに、『SMILEY DAYS』のジャケット写真はこれまでとは違う雰囲気を打ち出していましたよね。


塩ノ谷:はい。今までを否定するわけではなく、より塩ノ谷 早耶香らしさって何なんだろう、自分に一番合ってるスタイルを求めていきたい、と思って作ったものでした。今までは少し背伸びをしていた感じがあったんですけど、そうじゃないところに自分を持っていけたらいいなということで挑戦したんです。それがみなさんからも、すごくナチュラルで良かったと言っていただけて、ホッとしました。その『SMILEY DAYS』があって、今度はまた違うアプローチで「魔法」という楽曲で新たな塩ノ谷 早耶香を表現することができて、自分としてもよかったなと思います。


ーー表現の幅が広がったという感じですね。


塩ノ谷:そうですね。今までの塩ノ谷 早耶香が着ないようなものを着て、今までの塩ノ谷早耶香がしないようなメイクをして……と挑戦していく一方で、逆に今までのものが出来なくなったわけではないので、そのぶん幅は広がったと思います。


ーープライベートで着る服も少し変わった、というお話も聞きましたが。


塩ノ谷:そうなんです。プライベートでも今までは黒のものが多くて、クローゼットの中が黒で埋まるみたいな感じだったのですが、パステルカラーを着るようになったりしてかなり色が変わってきました。新たな発見がありましたね。


・「音楽がどんどん好きになっている」


ーーそして、8月には地元・福岡でのワンマンライブもありました。


塩ノ谷:ずっとみなさんにも「ワンマンライブはやらないの?」って声をいただいていて、「必ずやるので、待っててください」としか言えなかったものが、ようやく、しかも地元で叶えることができたのでとても幸せでした。ただ、今までバラード曲を多く歌ってきたので、「SMILEY DAYS」のような盛り上がる曲で、みなさんがどういう反応をするのかな、とちょっと不安な部分もあったんです。でも、実際本番になったら、みなさんすごく盛り上がってくれて、それを見た瞬間に本当にみなさんに支えられてると心から思って安心しましたし、こうやって一歩一歩みなさんと歩んでいけるってことが音楽をやってる意味だな、と感じました。


ーーこれまでもライブはありましたが、やはりワンマンは感じるものも違った?


塩ノ谷:違いましたね。1時間半ぐらいの中、自分の見せたい世界観を作り上げて、それを届ける。ワンマンライブに向けていく熱意は大きなものがあって、その集大成でもあったので、ライブが終わった時には一つの達成感がありました。


ーーちなみに、ご家族や昔からの友達は?


塩ノ谷:みんな来てました。「ずっと泣いてた」って言ってました。


ーーやっぱりそうですよね。ずっと見てきたでしょうから。


塩ノ谷:自分以上にワンマンライブへの思いが大きかったんじゃないかと思います。私自身、ワンマンという場は同時に次に向かっていくという気持ちが大きくあるんですけど、身近な人にとっては「よくここまで来たね、よかったね」という思いが強かったと思うので、感動してもらえたんだと思います。


ーーこのワンマンをやったことで、ライブに対する欲も膨らんだんじゃないですか?


塩ノ谷:はい。アコースティックライブもやってみたいし、バンドを入れたライブをやりたいと強く思うようになりました。グルーヴ感も違ってくると思うし、お客さんとの一体感もまた変わってくるのかなと思うので、生バンドとともにやってみたいですね。


ーー 一方で、2016年、プライベートでの印象的な出来事は?


塩ノ谷:プライベートが思い出せない(笑)。何してたかな……? 一つ挙げるとしたら、すごく料理を覚えた年ではありました。去年、占いの方に「料理をやったほうがいいわよ」って言われて、ちょっとやったら、めっちゃハマったんですよね。友達が遊びに来たり、母が来た時に作ってます。


ーーちなみに、どんなものを?


塩ノ谷:最近はスープカレーを作ってます。イチから作るのが楽しんですよ。私、お菓子は全く作れないんです。正確に測ったりするのがたぶんダメなんです(笑)。だいたいこれぐらい、みたいな感じで作っていくほうが楽しいですね。


ーー2年前の取材の時の「プライベートでハマってることは?」という質問には「携帯ゲームやってます」って答えてました(笑)。


塩ノ谷:ちょっと進歩してますね(笑)。でも、未だに漫画喫茶に行ったりはしますけどね(笑)。


ーーでは、2017年に向けての思いを聞かせてください。


塩ノ谷:一番はツアーですね。実現させたいです。具体的な部分では、最近80年代や90年代の洋楽を聴くことが増えて、あのちょっとダサくてかわいいみたいなニュアンスの楽曲を今の人たちに楽しんでもらえるんじゃないかと思っているので、そういうテイストを取り入れつつ音楽制作をしていけたら、と思っています。それだけじゃなく、今どんどんこういう要素を取り入れたいな、こういう曲を歌ってみたいなというのが増えていっているので、音楽がどんどん好きになっている実感があります。


ーー最後に、塩ノ谷さんの楽曲に多くの女の子たちが共感するということをご自分で分析すると、どういうところにポイントがあると思っていますか?


塩ノ谷:塩ノ谷 早耶香がすごく身近な存在だからかな、と思います。ライブでもイベントでも、「憧れてます」とか「尊敬してます」と言ってくださる方がたくさんいるんですけど、そういう方たちでも、友達感覚みたいなものを感じてくれているようで、それは大事にしていきたいなと思ってます。言葉って、近い人から言われた方が刺さるってことあるじゃないですか。だから、これからもみんなとより近い存在として、メッセージを届けられたら嬉しいなと思っています。
(取材・文=田部井徹)