2016年12月02日 10:32 弁護士ドットコム
5年前に離婚した姉のために両親が援助した500万円を取り戻せないか。Yomiuri Onlineの人気コーナー「発言小町」に、そんな相談が寄せられました。
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投稿したトピ主によれば、姉は10年間連れ添った相手と、5年前に離婚。その際、「細々とした彼女の持ち物以外、何も要らない、後々請求もしないとの誓約書にサインをしてきた」といいます。離婚した理由は「結婚して間もなく合わないと思ったものの、しかし結婚とはこのようなものだと耐え、結果鬱になって限界を感じての離婚だったようです」。
すでに離婚から5年が経っています。しかしトピ主は、姉が結婚していた頃、両親がマンション購入時に頭金として貸した500万円を半分でも返してもらえないか? と考えているようです。姉の元夫から借用書はもらっています(借主名義人は、姉と元夫の連名)。
元夫は「住み続けたい」と言っているそうです。ただ、離婚から5年。そして、借用書を書いたのは「10年前後」前だったと言います。まだ請求はできるのでしょうか? 山本明生弁護士に話を聞きました。
(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「離婚した姉夫婦に両親が貸したマンション頭金。母に返してほしい」はこちら
(http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0913/777500.htm)
●原則、返還請求は可能だが・・・
両親と姉の元夫との間で「金銭消費貸借契約」が成立しているかが問題となります。「金銭消費貸借契約」とは、将来の返済を約束した上での借り入れを意味します。
住宅取得に際して、頭金をもらっていた場合には、贈与に該当します。トピ主の両親が渡した500万円が贈与だった場合には、既に渡したお金を返してはもらえないため、返還請求は出来ません。
しかし、トピ主の両親は、実際に500万円を渡し、借用書もあったことから、返還する約束があったと思われますので,両親と元夫との間で「金銭消費貸借契約」が成立しており、返還請求は可能であると思われます。
なお、返還請求ができるのは、契約成立から、10年経っていない場合です。トピ主によれば、借用書を作成したのは「10年前後」前だったとのことです。もし契約成立から10年以上経っている場合には、元夫が「消滅時効を援用」(時効が成立していると主張)すれば、返還請求はできません。
●「分割債務」「連帯債務」のどちら?
契約成立から10年が経過しておらず、贈与ではなく、返還の約束があった場合には、元夫はどのような割合で返済するかが問題になってきます。
「借用書」は、借主として姉と元夫の連名となっているということです。この場合、どちらがどのような割合で返済義務を負っているかを検討する必要があります。「分割債務」なのか、「連帯債務」なのか、という問題です。
原則として、債務を「連帯する」との文言が無ければ、「分割債務」であると考えられます。「分割債務」とは、複数の債務者がいる場合に、債務をそれぞれ等しい割合で返済する義務があるということです。トピ主の例でいえば、両親は元夫に対し、少なくとも250万円は請求できるということになります。
他方で、姉と元夫の「連帯債務」であった場合には、両親は元夫に対して500万円全額を請求出来ます。
【取材協力弁護士】
山本 明生(やまもと・あきお)弁護士
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。
事務所名:山本・竹川法律事務所
事務所URL:http://www.ytlo-jiko.jp/