2016年12月02日 10:32 弁護士ドットコム
嵐やKAT-TUN、関ジャニ∞など、ジャニーズ事務所に所属するグループやアーティストの公式ファンクラブの会員規約が見直されようとしている。
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この会員規約をめぐっては、国から認定された適格消費者団体「消費者被害防止ネットワーク東海」(名古屋)が10月18日、「消費者の利益を害し不当ないし不適切」として、ファンクラブを運営する「ジャニーズファミリークラブ」に是正を申し入れていた。
問題とされたのは、規約の中にある「規約を予告なく改訂できる」「支払い済みの入会金と年会費を返還しない」「退会処分とされた会員は損害賠償などの一切の権利が行使できない」といった条項だ。
消費者被害防止ネットワーク東海によると、規約に不満をもった消費者から相談が寄せられていたという。ジャニーズ事務所は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して、代理人を通じて、「申し入れにかかわらず、全面的に会員規約の見直しをすすめている」と説明した。
ジャニーズの公式ファンクラブに入会するには、グループごとに入会金1000円、年会費4000円を支払う必要があるが、会員証や会報の発行のほか、コンサートチケットの優先申し込みなどの特典がつく。では、会員規約のどのようなところが問題なのだろうか。
消費者問題にくわしい上田孝治弁護士は「まず、規約が一方的に変更できるとされている点です」と指摘する。
「原則として、規約変更後の内容については、新たな合意がなければ、利用者を拘束することができません。
ただし、変更があることをあらかじめ告知し、その内容を適切に開示していれば、利用者がその後も異議なく利用を継続していたことをもって、『黙示の同意』があったと認められる場合があります。
また、形式的な変更や、利用者に特に不利益にならないような変更については、比較的ゆるやかに変更が認められることもあります。
あらゆる規約の変更について、変更した瞬間に当然に利用者を拘束するような規約は、消費者契約法に照らして、問題が大きいといわざるをえません」(上田弁護士)
ほかには、どこが問題だったのだろうか。
「事情を問わず、およそ消費者からの損害賠償請求を一切認めないところです。専門的には、『全部免責条項』と呼ばれます。
本来であれば、民法などにもとづいて、損害賠償請求が認められるようなケースであるにもかかわらず、この免責条項があるだけで、事業者が免責されるのはあまりにも不当なので、消費者契約法で『無効』とされています。今回の規約も違反していると思います。
また、支払済みの年会費の不返還については、キャンセル料が高すぎる場合に高すぎる部分を無効とする消費者契約法の規定に違反している可能性があります。
具体的には、ファンが退会した場合に、ジャニーズ事務所側に発生する損害はどの程度のものかが精査されなければなりません。損害が認められないということであれば、その部分は返還されるべきとなります」(上田弁護士)
消費契約法には罰則はないのだろうか。
「消費者契約法では、契約に不当な内容の契約条項があれば、契約書や規約ではっきりと定められていたとしても、民事上『無効』とされる場合があるとされています。
一方で、消費者契約法に違反するような不当な条項を事業者が使っていたとしても、罰則があるわけではありませんので、不当な契約条項を堂々と使っている事業者がいます。
今回、消費者団体が指摘した規約は、いずれも消費者契約法に違反し、または違反している可能性があります。ジャニーズ側は、消費者契約法はもちろん、ファンの気持ちも考えた誠実な対応をしてほしいと思います」(上田弁護士)
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
上田 孝治(うえだ・こうじ)弁護士
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行うとともに、中小企業診断士として企業の経営コンサルタント業務も行っている。
事務所名:神戸さきがけ法律事務所
事務所URL:http://www.kobe-sakigake.net/