12月1日、富士スピードウェイのジムカーナコースで、織戸学とレーシングカーコンストラクターの童夢による共同プロジェクト、『チーター』のプロトタイプ1号機がシェイクダウンされた。
■大人が楽しめるマイクロフォーミュラ
チーターは、これまでレースはもちろんドリフト、チューニングカー等あらゆるマシンを乗りこなしてきた織戸が、日本の誇るレーシングカーコンストラクターの童夢とともに手がける新たなプロジェクト。
ハイエースに積めるコンパクトなサイズで、ワンメイクのドリフト競技に使えるようなクルマをイメージ。サーキットでなくとも、カートコースやショッピングモールの屋上等、コンパクトなスペースでも大人が楽しめるような“マイクロフォーミュラ”として、織戸が発案し、童夢が製作、デザインを担当している。
シャシーはパイプフレームで、カーボンパーツも使用され高い安全性も確保。リヤにはオートバイ用のエンジンを搭載し、シーケンシャルミッションを搭載。3ペダルでサイドブレーキも備え、ドリフトが可能となっている。サスペンションもあるので、カートとはまったく別物だ。また、ゆくゆくは市販車をイメージしたさまざまな形状のカウルを被せ、いろいろな場所でクルマ好きに楽しんでもらうことが目標だ。
■第一印象は『楽しい!』
そんなチーターが、ついにシェイクダウンのときを迎えた。すでに童夢の敷地内で織戸が走らせたことはあるというが、この日が「待ちに待った」サーキットでの初走行。午前中、前日の雨で濡れたジムカーナコースで動作確認を行った。
さらに、今度は富士スピードウェイの近くにあるカートコース、オートパラダイス御殿場(APG)に場所を移して走行。これは前述のとおり、カートコースでの走行をイメージしたもの。APGの関係者からも高評価だったという。
午後はふたたび富士スピードウェイに戻り、ジムカーナコースで走行。トラブル等もなく、この日織戸ともに富士を訪れた小河諒など、さまざまな人たちが代わる代わるドライブ。なんと筆者までドライブさせてもらった(この印象は別記事にて)。
まだまだ調整段階で、うまくキレイなドリフトまで持ち込める状態まではいかないが、降りてきた人たちの第一印象は全員「これは楽しい!」というもの。シーケンシャルミッションは小気味よく入り、エンジンはかなり高めのエキゾーストノートを発する。ずっと乗っていたいと思わせるようなクルマだ。
■「ここからほぼ全部変わる」プロトタイプで見えた課題
走行終了後に織戸に話を聞くと、実は今回走行したチーターはプロトタイプで、「ベースは代わらないけど、あそこから全部変わる。まず1台作ってもらって、ここからコストも含めて全部変えなければならない」という。
「今日は、思い描いていた方向性が間違いないということが確認できた。あとは童夢の開発してくれる人たちが、このクルマの“遊び”の性格を理解してくれたことが大きいと思う。レースをやってきた人たちのクルマとは全然違うから」
今後、このシェイクダウンで見えた課題をもとに、市販も見据えた大きな改良が施されていきそうなチーター。具体的にはメンテナンス性や、身長差がある人が乗ったときのポジション、シフトの位置等多岐に渡る。また、エンジンも今回は650ccのオートバイ用エンジンだったが、今後850ccのヤマハ製3気筒エンジンに換装されることになるという。
「この850ccのエンジンがすごくトルクもあって、軽いのでこのクルマにピッタリだと思う」と織戸。
また、今回の走行では織戸たちも驚いたというのが燃費。「今日さんざん走って、10リッターのタンクの中がまだ全然残ってる」という。いわゆる「エコエンジン」だということも大きいようだ。
チーターが実際に量産され、クルマを愛する人たちが手軽に楽しめるようになるまでにはまだまだ課題は多そうだが、まずはこの日のシェイクダウンで、大いなる一歩を踏み出したと言えるだろう。
「今日見てても、やっぱりみんなこういうクルマに乗るとクルクル回りたいと思うのよ(笑)。大人を笑顔にするクルマになったよね。まずは大人が楽しんで、若い人たちにも波及してくれれば」と織戸は笑顔で語ってくれた。